初めて見た時、いいなって思った。
頭が良くて、仕事ができて、
着ているスーツもセンスがあるし、
少し強引な性格も、男らしくていいなって、思った。
「彼、遊び人だよ」
同僚の忠告は本当だった。
何度目かのデートの帰り際。
告白しようとしたけど、あなたに遮られた。
『照れ臭いからさ、改まった言葉は無しにしよう。
ねえ、これからも傍にいてくれる?』
あのとき勝手に期待して頷いた、愚かな私。
今日も誘われるまま、彼の車に乗り込む。
車内を彩るのは流行りのラブ・ソング。
街明かりに照らされた横顔と、
ハンドルを握る大きな手に、
やっぱりいいなって、思う。
ああ、いっそ、
あなたの嫌がる「改まった言葉」を言ってしまおうか…。
いつになく真剣な表情の私に気がついて、
車を停めた彼がシーッと、唇に人指し指をあてた。
それから悪戯っぽい笑顔が近づいてきて、
私の頭は都合のいい方へ流されていく…。
また、この関係に名前をつけられなかった。
今はただ、この衝動に身を任せるだけ。
▼言葉はいらない、ただ・・・
8/29/2022, 1:31:42 PM