星に願って
難しくてやっぱり書けないなぁ。
だから星には大好きな先輩が国試合格出来るようにお祈りしようかな
小説
千ゲン
子供たちの楽しそうな声が耳に届く。
「せんくーすごーい!」
「きゃはは!」
覗きに行くと千空ちゃんが子供たちに簡単な科学を披露している所だった。こちらに背中を向け表情は見えないが、きっと少年らしい顔をしているはずだ。
年相応な発達途中の君の背中に、どんな大きなものを背負っているのだろう。
全人類を救うと心に決め、ここまで突き進んできた。その姿に心打たれ沢山の仲間が出来た。君は偶然の副産物だと言うかもしれないけど、偶然なんかじゃなくて必然だったと俺は思う。
「なーに楽しいことしてるの」
「あー!げんだー!」
「げんー!」
声をかけるといち早く気づいた子供たちが次々声を上げる。千空ちゃんは存外驚きもせずこちらを振り返った。
「なんだゲンテメー、呑気にサボりか」
「楽しそうな声が聞こえてきたからね、つい来ちゃった」
千空ちゃんの背にもたれ掛かりながら、小さな科学教室を見学する。何も言わず俺をもたれ掛けさせながら器用に実験を再開し、子供たちの興味を一気に掻っ攫う。
子供たちの楽しそうな声が再び耳に届いた。
小説
オリジナル
「遠く…そう……海がいいわ… 私が死んだら……海へ捨ててちょうだい…」
病室の窓から潮風の乗った風が入り込んでくる。栗色の瞳を外に向けながら、リナリアは静かに呟いた。
「急にどうしたのさ」
「急じゃないわ。私、多分明日までには死ぬと思うの」
「それが急だって話じゃないか。君が死ぬなんて、お医者さんから聞いてないよ」
僕は中断していた読書を再開する。だって医者からも、あと数日安静にしていれば良くなるとお墨付きを貰っているのだ。リナリアの勘は鋭いけど、自分の死期までは分かるはずがない。
「そうね……でも約束よ?アレン、私が死んだら海に捨ててね」
「…縁起でもない…。まあ、覚えておくよ」
この会話の数時間後、リナリアは茎を切ってしまった花のように段々と、静かに息を引き取った。
「リナリア…どうして……」
僕は今、海の上の崖に立ってる。下を見ると岩に波が打ち付けられ、大きく水飛沫を上げていた。
手の中には小さくなってしまったリナリア。骨とは、こんなに軽いものなのか。
『約束よ?アレン、私が死んだら海に捨ててね』
耳の奥でガラス細工の様な美しい声が聞こえた。
君を捨てるなんてとんでもない。けれども約束を破ることも出来ない。
それなら答えはただ一つ。
「待っててねリナリア。すぐ行くよ」
嗚呼、僕のリナリア。愛するリナリア。
僕はゆっくりと足を前に出し、鋭い飛沫の中へと飛び込んだ。
小説
迅嵐
これは、誰も知らない秘密。
「嵐山、今日玉狛泊まっていけよ」
夜九時半。そろそろ帰ろうと立ち上がった時だった。服の裾を控えめに引っ張られ、俺はゆっくりと座り直す。
迅は月に一度の頻度で俺を玉狛へ引き留める。
「あぁ、いいぞ」
にこりと笑ってみせると、迅は安心した様に服の裾を離す。
俺は迅の手を握り、肩に頭を乗せた。迅の匂いが俺に移るくらいぎゅうぎゅうに体を寄せると、迅も負けじと寄せてくる。
「ふふ」
猫のように体を擦り付けながら、幸せを噛み締めていると、迅から柔らかく声が漏れた。
「嵐山、あったかいね」
その声が迷子の子供のようで、俺は強く手を握り直してしまった。
しばらく無言の時間が流れ夜も更けた頃。
「…もう寝よ?おれ眠くなっちゃった」
歯磨きを済ませ部屋に戻ると、先にベットに潜り込んでいた迅が、布団を持ち上げ手招きをしていた。
素直に近づくと、がばりと引き寄せられる。
「わっ」
すっぽりと頭ごと抱えられ、迅の胸に顔を埋める。
抗議をしようとするが『おやすみ』と頭を撫でられ、俺は抵抗を辞めざるを得なかった。すぐに小さな寝息が聞こえてきて、抱えられている腕の力が緩む。その隙に顔を上げ迅の顔を見ると、薄らだが隈が出来ていた。
やはり何かあったのだろう。最悪に近い未来でも視たのかもしれない。
迅は月に一度の頻度で俺を玉狛へ引き留める。自惚れかもしれないが、きっとそれは俺への小さなSOSなのだ。だからこうして俺を取りこぼさぬ様、抱えて眠るのだ。
大丈夫、大丈夫だから。
絶対に独りにはしないから。
だから、
____そんな哀しい顔をしないで。
俺は迅の胸に顔をもう一度埋めると、意識を手放したのだった。
小説
おばみつ 千ゲン 迅嵐
夜明けには様々なものがあるだろう。
蛇を連れる青年は恋しい乙女への文を書いている。
桜色の髪を持つ恋多き乙女は人喰い鬼を一切り。
心に希望を携えた科学屋の少年は、人々を救う発明をして。
人の心を知り尽くしたマジシャンは、そんな科学屋の横ですやすや夢の中。
空色の瞳を持つ青年が少し先の未来を告げ、
赤き衣を纏い、ヒーローである青年が空からの刺客に銃を向けた。
彼らの迎えた夜明けは、皆等しく静かだった。
蛇を連れる青年は、恋した乙女の無事を願いながら。
桜色の髪を持つうら若き乙女は、恋した青年の安息を願った。
遊び心を携えた科学屋の少年は、横で眠る安らかな顔に少しのイタズラ。
人の心を知り尽くすはずのマジシャンは、知らずに少年との楽しい日々の夢の旅。
空色の瞳を持つ少しだけ特別な青年と、赤き衣というヒーローの象徴を脱いだ普通の青年は仲睦まじく寄り添いながら、短い短い幸せな休息を。
静かな夜明けは、彼らを優しく照らしていた。