小説
千ゲン
子供たちの楽しそうな声が耳に届く。
「せんくーすごーい!」
「きゃはは!」
覗きに行くと千空ちゃんが子供たちに簡単な科学を披露している所だった。こちらに背中を向け表情は見えないが、きっと少年らしい顔をしているはずだ。
年相応な発達途中の君の背中に、どんな大きなものを背負っているのだろう。
全人類を救うと心に決め、ここまで突き進んできた。その姿に心打たれ沢山の仲間が出来た。君は偶然の副産物だと言うかもしれないけど、偶然なんかじゃなくて必然だったと俺は思う。
「なーに楽しいことしてるの」
「あー!げんだー!」
「げんー!」
声をかけるといち早く気づいた子供たちが次々声を上げる。千空ちゃんは存外驚きもせずこちらを振り返った。
「なんだゲンテメー、呑気にサボりか」
「楽しそうな声が聞こえてきたからね、つい来ちゃった」
千空ちゃんの背にもたれ掛かりながら、小さな科学教室を見学する。何も言わず俺をもたれ掛けさせながら器用に実験を再開し、子供たちの興味を一気に掻っ攫う。
子供たちの楽しそうな声が再び耳に届いた。
2/10/2025, 6:12:07 AM