フォンリー

Open App
7/22/2024, 3:44:04 PM

【ゆーとぴあ】

もしも、もしも……タイムマシンがあったら……
僕は、、、僕は君を。


ジリジリジリジリ、みーんみんみんみん

8月12日、君は死んだ


「はっ、はっ、はっ。」

両足がちぎれるほど僕は走った。

「はっ、はっ、はっ、はっ。」

息は切れかけ、足は悲鳴をあげ、体は限界だった。
でも、一時もきにならなかった。

病院にいた君は、まるで蛹のような、そんな気がした。
これから何か、別のもっと美しいものへと至るような
そんな気がしたんだ。

1992年8月9日午後4時


きみは車に跳ねられた
そのまま救急搬送され、入院することになった。
意識は以前戻らぬまま、日々は無情にも過ぎていった

1992年8月10日
今日は学校のクラスメイト達が群れるように来た
可哀想、運がないな、軽々しい言葉を口々にあげて
気が済んだら帰って行った。

8月11日
今日はクラスメイト達は来ず、家族と僕だけが来た。
君の好きな、サイダーを買ってきた。
そうしたらがめつい君はいつものように、
ラッキーなんて言いながら目を覚ますと思ったんだ。

8月12日
この日は医者から死亡と判断された。
僕は信じられなかった。
まさか、、いや。信じたくなかった
君のことだ、きっと今も僕を見て笑ってるんだろう

8月13日
今日僕は決意した
君を救うと。
タイムマシンだ。
それで過去へも戻り君の事故を無かったことにすればいい。

8月14日

8月15日

8月16日

9月

10月

11月

12月











2024年8月8日、

明日で君の32回目の命日だ。大丈夫。明日にはついに、君を救うことが出来る。待っててね。
絶対に救ってみせるから。

8月9日




ダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだ君を救えない

7/10/2024, 5:04:09 PM

【蜃気楼】


重い瞼を押し上げる

ピントが合わない部屋を見回す

そこには微かにぼやけてはいるが、人影があった
寝ている間にエアコンが止まってしまったのか、
部屋は蒸し風呂状態になっていた。

彼女の作ってくれた朝食でも食べながらふと気がつく

「あれ?同棲相手なんていたっけ?」

はっと、辺りを見回すと、そこには、何もいなかった

自身が作りだした幻かはたまた
たぬきにでも化かされたか

寝ぼけていたのか
暑さで頭がやられたか

今となってはよく分からない。だが、
悪いような気はしないので、よしとするか。

6/26/2024, 6:31:20 PM


【風来人】



風が、、止んでいた



蝉が煩わしく耳を刺激する。
6畳半程の部屋に突き刺してきた音は幾度も飛び跳ね
耳を往復する。
がしがしと頭を掻きながらよれた服を正し、起き上がる。

今日はやけに風が強い。
そのおかげか、暑さを特に感じない。
これは嘘だ。
そうでも思わないとやってられない程に暑い。
空調は部屋にあるが、とてもじゃないが使えない。
これも今では高級品だ。
動きもしない空調を眺めながら涼しさを求めて冷蔵庫へと動く。
ゾンビのようなこの姿を人様になぞ見せられる訳がない。
さあ、どうしようか。頭が回らない。
仕事の続きでもと、パソコンに身体をむけるが、
どうやらパソコンも熱中症らしい。
動作がやけにトロイ。
文字がかけたらそれでいいのだが、それすらも今のこの子には難しいらしい。
時には作家らしく、紙に筆で書くか。

、、、進まない。
それはそうだ。パソコンよりも遥かに高スペックな私がこんな劣悪な環境で動作出来るわけがない。
良いものは良い所で動くものだ。
なんて脳内で一人語りをしながら家を出る。

まるで街全体が溶けているような、そんな感覚を
蜃気楼が魅せてくる。

こんな時、君が傍にいたら、、

、、、

何処に行こうかと彷徨っていたが、足は既に場所を決めていたらしい。

ふぅ。
文字通り一息ついた。

ここは私のお気に入りの場所だ。
今の若い子は一息つく時には、喫茶店や、それこそ
スタバなんて所にいくんだろう?。
私も学生時代は行っていたなぁ。

今私は河川敷にいる。
暑い時は水の傍にいるに限る!!

これは最早格言に近いな
貴女と会ったのもここだった。
風でよろけた私を受け止めてくれた。

よくある物語ならそれは逆なはずなのだがね。
今年でようやっと28になる男が異性に受け止められて
恥ずかしい限りだ。


左右を見回す。
誰もいない。
皆物陰で涼んでいるのか

なら私は。

どぼん。

ふぅー、これがいいんだな。これが。

ぷかぷかと漂う

後ろから声がした。

あれ?この前のー?今度はよろけて落ちちゃったんですかぁー?


逃げ場は無いようだ。
だが、確かに人がいないのを見たはずなのに。

彼女は寄ってきて私をすくい上げる

大丈夫ですか?

「ありがとうございます」

次は落っこちないように気をつけて下さいねー。

「えぇ、もちろん。あの、」

はい?なんですか?

「2度も助けて貰ってありがとうございます。」

いえいえ!困ってる人がいたら助けるのは
基本ですよ!!
なにせ私のせいみたいな所もありますしね!

「私のせい??」

あーー!いや、こっちの話です!でも!次は本当に気をつけて下さいね!

「本当にありがとうございました。
そういえば、あっ。」

視線を空に向けた。
風が、、止んでいた
宙へ待った視線を戻すと、そこに彼女は居なかった。

あれ?どこへ行ったのか。
まるで風とともに消えてしまったようであった。

5/27/2024, 12:29:13 PM

【ゲシュタルト】

木が軋む音が聞こえる
あぁ、朝だ。

母が私を起こしに来る
ぽつりと呟いた。
「いやだな」

部屋に入るなり怒号が飛んできた。
いつまで部屋にいるの
早く出てきなさい
もう朝よ。

、、、五月蝿い

私に父は居ない
前は居た
彼は小さい頃から私を奴隷として扱っていた。
もう3年も前になるのか
下の処理をずっとさせられていた。
当時中学生だった私にはとても受け入れられなかった。

あの時私は母に助けを求めた
母は私に侮蔑と嫉妬の入り交じった視線を向けて殴ってきた。
そう。
母はあいつに夢中だった

あいつは他に女を作って出ていった。
私と母は捨てられたのだ

母は私のせいだと常々言ってくる。
煩わしい

朝と昼は母からの暴言と暴力に襲われ、
ここには居ないあいつの亡霊に毎晩襲われる。

!!

今日はそんな夢は見なかった
今日は暴言のアラームも無かった
とても不思議だ。
1階の居間へ行くと母と見知らぬ男が居た
「あぁ、○○ちゃんだね。話は聞いてるよ」
母の新しい男だった
綺麗なスーツにキチッと整えられた髪
聞けば警察官らしい

そこから生活は変わった。
私には父ができた。
今まで出来なかった事を全部一緒にしてくれた。
遊園地へ行ったり
旅行をしたり、
一緒に買い物をしたりもしてくれた。

あー、たのし





「、、、夢か」


、、、、、、、、、、、涙がおちた

5/25/2024, 1:25:38 PM

【リヴァイアサン】

止まない雨は無い、そう貴方は言った
でもね、止まない雨もこのろくでもない世界にはあるんだよ。

一身で大粒の雨を受け止める

雲から放り出されて、勢いよく地面へと衝突し、
弾けて消える。
でもなんだか、喜んでいるように感じるのは気のせいだろうか?

雨粒たちは地面へと弾け、そして川のように
路肩を流れる。

一つの意志に従うように

雨なんかに情緒深さを問えるほどに、今の私は潰れてしまいそうなのだ。

やさぐれた心に
弱った体に
冷えきった思考に

雨が深く、深く突き刺さった

Next