日々家

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2/12/2024, 11:55:29 AM

伝えたい

自分の中で思いついた詩や物語が少しでも誰かの心に届けば良いな。
そんな願いを込めて、今日も言葉を紡いでいく。
楽しみながらも悩みながら、ひとつの作品を作り上げていく。
名も知らぬ貴方もきっと、心の中にある世界を自分の言葉で紡いでいくのでしょう。

――輝く太陽のような言葉で夜空のような言葉で激しい雨のような言葉で木漏れ日のような言葉で。

今日もまた、どこかで誰かの世界が作られていく。


                        日々家

2/11/2024, 11:15:37 AM

この場所で

長い坂をただひたすらに登っていく。空は青々と澄み渡り、真っ白な雲が良く映えていた。アスファルトには焼き付いたみたいに黒い影がある。太陽が強く光り輝いて、私の体はじわりじわりと汗をにじませていく。

坂をようやく登り終え、買っておいたペットボトルの蓋を開けて一気に中身を飲み干す。視界に広がるのは空とその色を映し出す海と私の住む町。一目惚れして移住を決めたくらい大好きな景色。

――自分が生きていきたいと思える場所に出会えるとは、私はなんて幸運なんだろうか。

そんな事を考えながら、リュックに入れておいたスケッチブックと色鉛筆を取り出し、木陰の中でこの景色を残していく作業に入った。


                        日々家

2/10/2024, 11:15:47 AM

誰もがみんな

――誰もがみんな幸福だと言える世界があるならば、どんなに素晴らしいだろうか。
俺はパソコンのキーを打つのを止めて、淹れておいたコーヒーを口にする。

「誰もが幸せ、ねえ……」

ため息交じりに出た言葉に皮肉めいた響きが混じってしまった。それはきっと、一人の不幸の上に多くの人の幸せが成り立つあの話を思い出したからだろう。

「そりゃ、理想はみんなが何の犠牲も払わず幸せになるのが一番だ。けど実際問題“何も無し”は無理だろ。なあ?」

俺が仕事に集中している間、ずっと膝で寝ていた愛猫のわらびに声を掛ける。この名前の由来は、わらび餅に似ているからという単純なものだ。
わらびは耳を少しだけ動かし、先程の俺と同じようなため息を吐きながら一声鳴いた。

「うんうん、お前も俺と同じかあ」

言葉を勝手に解釈し、桜の形をした片耳を優しく撫でる。
「とりあえず、俺はお前の幸せを維持しねえとな」
膝の温もりを感じながら、俺は再び文章の海に思考を沈めていった。

                        日々家

2/9/2024, 1:53:48 PM

花束

「これやる!」

顔を真っ赤にして差し出されたのは、花びらを鮮やかな黄色に染め上げ綺麗に咲いたたんぽぽの花束。
家に入ってからずっと背中に何を隠しているんだろうと思っていたが、まさか花束だったなんてっと少し驚いてしまった。また虫だったら怒らなければと考えていたことを反省して陽希を見る。
いつもなら「なつ姉ちゃん! 聞いて!」と笑顔を向けて今日学校であった話をしてくる陽希は下を見たまま私の反応を待っている。
少し考えてから、私は手を伸ばして花束を受け取った。

「ありがとう。綺麗だね」

その言葉に陽希は顔を勢いよく上げて、キラキラと目を輝かせながら「うん!」といつもの笑顔を向けてくれた。それが手にある花に重なって、私もつられて頬を緩ませる。

「おれ、すぐになつ姉ちゃんと同じ中学生になるから待っててよ?」
「いいよ〜。待ってる……って言ってもお隣さんだからいつでも会えるよ?」
「そういうのじゃないの! 全然違う!」
「ごめん、ごめん。ちゃんと学校で待ってるよ」
陽希は満足したのか「分かってくれればいい」と言い、大人びた表情を見せた。

「たんぽぽ、花瓶に入れてあげないと。はるは居間に行って、今日の宿題出しときな」
「はぁい……」

宿題という言葉に肩を落とす姿は年相応で、それになぜか安心した。
洗面台に向かい、棚にしまってあった花瓶に水切りしたたんぽぽを挿す。白い陶器に黄色がよく映えている。
花瓶を持って居間に入ると、午後の太陽の光に照らされた陽希が目に入る。それがとても眩しくて、私は目を細めた。
私に気付いた陽希が「国語の問題意味わかんない!」と口をヘの字にして言う。
それに「はいはい」と笑って返すと「早く教えて」と急かされた。
窓際に花瓶を置いてから、私はいつものように向かい側に座って勉強を教え始める。

――きっと彼は、私の知らない内に成長していくし、沢山の人に出会い、私への感情も変わっていくだろう。
それでも良いと思う。
今この瞬間が、綺麗な思い出として残るのなら悪くはない。

「なあ、なつ姉ちゃん」
「ん? どうした?」
「おれは真剣だからね」

考えを見透かされたように鋭い一言が心を突く。
いつの間にか、私が知らない陽希がすぐ傍まで来ている気がした。

  日々家





▼余談/登場人物
沢田 陽希(さわだ はるき)
森岡 夏乃(もりおか なつの)

2/8/2024, 12:37:02 PM

スマイル

ボロボロにされた心を時間をかけて立て直した。
何重にも巻いた包帯や急いで貼った絆創膏、縫い目がお前らには見えないだろう。当たり前だこれは私の心なのだから。
春色に染まった唇を少し緩め、背筋を伸ばして歩いてやる。地面なんて見てやるものか。威嚇するようにヒールを鳴らしてやる。
この笑顔で私は私を守っていくと決めたのだから。

                        日々家

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