目が覚めると、あなたの形跡はどこにもなくて、あぁ夢なんだって気づいて、ぽろぽろ涙がこぼれた。あまりにリアルで、幸せな夢で、一瞬現実と区別がつかなくて混乱しちゃったじゃない。
都合の良いようにハッピーエンドを作り上げて、私に夢を見させた自分の脳さえ恨めしい。頭が、身体が、あの人を、あの人と居る現実を無意識に望んでいることを突き付けられたみたい。
これから先ずっと、記憶だけで生きてかなきゃいけない、
もう会うことも声を聞くことも叶わないのに。
私の中のあなたのスペースが、少しずつ小さくなっていっていつか、なくなる日がくるんだろうか。そうしたら今よりずっと、楽に息が吸えるようになるんだろうか。
本来なら真っ暗闇の夜に、煌々と灯る明かりの海。
頭上の星の光は遠く霞んで、存在も忘れるほどに。
私達は眼下に広がる眩さに目を細めるけれど、こんな光が存在しない頃はもっと、見上げていたんだろうか、空を。
きらきら輝き続ける星の、息を飲む美しさにもっと、惹き付けられていたんだろうか。
だから人は、星に名前を付けてみたり、似ているかたちを見つけたり、意味を見い出したり、神話を紡いだりしたんだろうか。
なんて素敵なことだろう。
今、私達が見ている明かりは、そこに誰かがいるという証拠だ。
あの明かりひとつひとつに、それぞれの生活がある。人生がある。
そして光が絶えないようにしてくれている人達がいる。
遥か彼方に思いを馳せることよりも、ここに、そこに、「ある」とわかる温かさに救われる、そんな夜もあるから。
それもまた、素敵なことでしょ?
ひとつの星で、時に奪い合って、時に愛し合って、限られた時間を必死に生きている様は、あなたの瞳にはどう映っているのでしょう。
高い高い場所から見下ろす、小さく脆い人間は、さながらバッタのようでしょうか。もがいて、ぴょんぴょん跳ねて、風に飛ばされ、踏みつけられるだけの。
どんなに願っても、安寧は訪れる気配は無く、どんなに望んでも、愛する人の命も、自分の命もいつか尽きてしまいます。
それなのになぜあなたは、人間に永遠を思う心を与えたのでしょう。死さえ、生物のサイクルの一環だという認識ならば、こんなにもたくさんの悲しみが生まれることは無かったでしょうに。
あなたから見た人間は、滑稽ですか。
これからも流れていく涙を、あなたは眺めているだけですか。
この道の先に何があるというのでしょう。
生きてそれを見るだけの価値がありますか。
明日も、明後日も、その次も、今までと同じ暮らしの繰り返しなんでしょう。夢も、希望も、持つことはとっくに諦めました。期待しても願いをかけても何も変わりませんでした。
誤解の無いように言っておきますが、自分の力は尽くしたつもりです。現実は想像以上に残酷なもので、予想を遥かに超えてくるものです。もちろん、時折感じるささやかな幸せもあります。けれど、それだけで生きていけるほど容易くはないんです。
弱い?それが人生?仕方ない?皆そういうものだと受け入れている?…だとしたら私がこの先を望めないのも当然ですね。私からすればどうしてあなた達が絶望せずに生きていけるのか不思議で仕方ありません。あなた達の「死んではダメ」「生きていたら良いことがある」ほど頼りにならない言葉はないですから。
…私が道を逸れるのを見届けなくても大丈夫ですよ。あなたはどうぞ先に、ただ前を見て、続く道を歩いていってください。
じゃあ。さようなら、
窓越しにただ眺めているように思える。
近い所から、遠い、遠い場所のことまで、ワンタップするだけで目の前に広がる情報の海。多くは、心を消耗させるような悲しいことや、つらいこと。まいにちどこかでだれかが苦しんでいる。それを知らないままでいてはいけないと、浅はかな正義感で目をやれば、あまりに強く押し寄せる波に精神がすり減らされる。
そして私には何も出来ないのだと果てしない無力感に襲われる。
何も出来ないと最初からわかっている。わかっているのに、身勝手に受け取り、身勝手に苛まれている。
結局、傍観者に過ぎないのだ私は。
だって、窓から目を背ければ見ないこともできるのだから。忘れてしまえるのだから。この透明な隔たりの向こうで起きていることは現実だけれど、こちら側にいる私には何の影響も無いのだから。
ただ針の先ほどの痛みを感じただけ。それだけ。それすらもすぐ、