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本来なら真っ暗闇の夜に、煌々と灯る明かりの海。
頭上の星の光は遠く霞んで、存在も忘れるほどに。

私達は眼下に広がる眩さに目を細めるけれど、こんな光が存在しない頃はもっと、見上げていたんだろうか、空を。
きらきら輝き続ける星の、息を飲む美しさにもっと、惹き付けられていたんだろうか。
だから人は、星に名前を付けてみたり、似ているかたちを見つけたり、意味を見い出したり、神話を紡いだりしたんだろうか。
なんて素敵なことだろう。

今、私達が見ている明かりは、そこに誰かがいるという証拠だ。
あの明かりひとつひとつに、それぞれの生活がある。人生がある。
そして光が絶えないようにしてくれている人達がいる。
遥か彼方に思いを馳せることよりも、ここに、そこに、「ある」とわかる温かさに救われる、そんな夜もあるから。
それもまた、素敵なことでしょ?

7/8/2024, 5:49:46 PM