NoName

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9/21/2022, 8:39:03 AM

好きだから、大事にしたい。
そう微笑んでくれた君は、私を捨てた。
君を愛していたのに。一緒に住んでいた家から君の物が消え去った時の辛さは知らないのだろう。
夢にも出て来たのだ。ぼんやりとしか写らない君は私に『きらいだ』と吐いた。
何度朝に泣いたことだろう。一人じゃ広すぎるベッドも未だに捨てられない。君が帰ってくる事を期待しているのだから。
なんで何も言ってくれなかったの?どこに行ったの?

幻のように消えてった君は私をだめにしてしまった。もうずっと外に出ていない。カーテンも開けることができない。
太陽みたいな明るい声を思い出してしまうのだから。

『大事にしたい』

7/23/2022, 9:40:24 AM

取り返しのつかない事をしてしまった。
些細な事で喧嘩してしまって、君から貰ったマグカップを壊してしまった。
大きく割れる音が響いた後、私も君も僅かに息が止まって。私はどうすれば良いのか分からなくなって、涙を零す事しかできない。
ごめんなさい、と言った所で壊した物も君も何も言わず。ため息をついてこちらから離れて行く君。顔を見る勇気は出なくて、情けなく足元に散らばった破片を見ていた。
「……ちょっと、一人にさせて」
そんな声が聞こえる。私は返事をしなかった。頭の中がぐちゃぐちゃで、言いたい事も言えなかったから。
君がドアを閉めた直後に、割れた破片を手に取る。君との思い出が沢山詰まっていたのに。なんて事をしてしまったんだろう。
「ごめんなさい……」
自身から出た弱々しい声。それに答えてくれる君は居らず。ぽたぽたと涙が床を濡らす。
タイムマシンが、あったら。そんな馬鹿馬鹿しい願いをする事しか出来なかった。

7/22/2022, 8:06:37 AM

喉から手が出る程、堂々と君の隣に立てるくらいの魅力が欲しい。
君の隣を歩いて、君と話しながら同じ家に向かえる。それを君が幸せだと感じてくれるくらいの。
君は何よりも綺麗だと思う。笑顔も、性格も。だから、それに釣り合うくらいの魅力。それが一番手に入れたいもの。
君の魅力は、そんな願いも作ってしまうくらい、強い。それを自覚していないのも魅力になってしまうのだから。
あぁでも、今はきっと無理なのだろう。ずっと高い位置にある君の顔。視線に気付いた君はしゃがんで僕の頭を撫でる。
ナァ、と鳴けば愛おしそうに見つめられる。

「おまえ、野良猫のくせによく懐くなぁ」

もう一度鳴いても君には何も伝わらない。
来世は、君に釣り合うくらいの人間になってやるんだ。待っててね。


(今一番欲しいもの)

7/20/2022, 2:56:03 PM

君は僕の名前を呼んでくれない。昔は呼んでくれていた様な気もするけれど。今はアンタとか、ねぇとか。気が付いたら君の口から僕の名前が発せられる事は無くなってしまって。
寂しいけど、僕に愛想を尽かしたわけでは無いだろう。多分。
でも、今日、君が名前を呼んでくれた。
仕事が大変で息抜きに君とお酒を飲んだ時。お互いに愚痴を言い合って、気分がふわふわしてきて。君も結構飲んでいて、頬が赤くなっていた。
「ねー、明日デートしようよぉ」
ぎゅうっと君は抱きついて来て。珍しく甘えられてデートにまで誘ってくる。かわいくて頭を撫でればはにかむ君。
それからもゆっくり飲んでいれば、君が名前を呼んでくれた。久しぶりに聞いた響きに思わず心臓が跳ねる。
「い、ま……名前」
「んー……?」
ぽやぽやとすり寄ってくる君。そして、何度も僕の名前を口に出して。かわいい。すごくかわいい。堪らなく嬉しくて、僕も君の名前を何度も溢す。

明日の君に何て言ってやろうか。真っ赤になる顔が楽しみだなぁ。そんなことを思いつつ、もう一度腕の中の君の名前を呼んで額に口付けた。

(私の名前)

7/18/2022, 3:52:31 PM

君は私に冷たい。話しかけても三言程度で会話は終了するし、いつも笑顔な君の表情を曇らせるのは私だけだ。
そのせいで私も上手く話せない。また君の気分を悪くさせてしまうなと思ってしまい、最近は話しかける事も無くなって。
学生生活の中で君を見ると言う一つの楽しみを諦めようと思っていた頃、放課後の教室で君に話しかけられた。
「……ちょっと良い?」
やっぱり素っ気ない態度に胸がチリチリと痛む。何か言われるのかなぁ。怖いなぁ。
それでも君の願いは断れず、君の話を聞くことにする。

君の話は、告白だった。
お互いに上手く話せず、ぐだぐだだったけれど。君はいつもみたいに表情が曇っていた。私も驚いて声が出なくて、口を馬鹿みたいに開いたまま固まることしか出来ない。でも君の震えた声が、何度も期待した言葉を紡いでいく。
涙でぐちゃぐちゃになりながらお互い笑い合って。初めて正面から見た君の笑顔はすごく柔らかかった。

お互い緊張して上手く話せなかっただけで、勘違いをしていたらしい。握られた手は君の熱と、本当の事を伝えてくれた。私は君だけを想っているし、君も私だけを想っている、と。


(私だけ)

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