君は僕の名前を呼んでくれない。昔は呼んでくれていた様な気もするけれど。今はアンタとか、ねぇとか。気が付いたら君の口から僕の名前が発せられる事は無くなってしまって。
寂しいけど、僕に愛想を尽かしたわけでは無いだろう。多分。
でも、今日、君が名前を呼んでくれた。
仕事が大変で息抜きに君とお酒を飲んだ時。お互いに愚痴を言い合って、気分がふわふわしてきて。君も結構飲んでいて、頬が赤くなっていた。
「ねー、明日デートしようよぉ」
ぎゅうっと君は抱きついて来て。珍しく甘えられてデートにまで誘ってくる。かわいくて頭を撫でればはにかむ君。
それからもゆっくり飲んでいれば、君が名前を呼んでくれた。久しぶりに聞いた響きに思わず心臓が跳ねる。
「い、ま……名前」
「んー……?」
ぽやぽやとすり寄ってくる君。そして、何度も僕の名前を口に出して。かわいい。すごくかわいい。堪らなく嬉しくて、僕も君の名前を何度も溢す。
明日の君に何て言ってやろうか。真っ赤になる顔が楽しみだなぁ。そんなことを思いつつ、もう一度腕の中の君の名前を呼んで額に口付けた。
(私の名前)
7/20/2022, 2:56:03 PM