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君は私に冷たい。話しかけても三言程度で会話は終了するし、いつも笑顔な君の表情を曇らせるのは私だけだ。
そのせいで私も上手く話せない。また君の気分を悪くさせてしまうなと思ってしまい、最近は話しかける事も無くなって。
学生生活の中で君を見ると言う一つの楽しみを諦めようと思っていた頃、放課後の教室で君に話しかけられた。
「……ちょっと良い?」
やっぱり素っ気ない態度に胸がチリチリと痛む。何か言われるのかなぁ。怖いなぁ。
それでも君の願いは断れず、君の話を聞くことにする。

君の話は、告白だった。
お互いに上手く話せず、ぐだぐだだったけれど。君はいつもみたいに表情が曇っていた。私も驚いて声が出なくて、口を馬鹿みたいに開いたまま固まることしか出来ない。でも君の震えた声が、何度も期待した言葉を紡いでいく。
涙でぐちゃぐちゃになりながらお互い笑い合って。初めて正面から見た君の笑顔はすごく柔らかかった。

お互い緊張して上手く話せなかっただけで、勘違いをしていたらしい。握られた手は君の熱と、本当の事を伝えてくれた。私は君だけを想っているし、君も私だけを想っている、と。


(私だけ)

7/18/2022, 3:52:31 PM