連続変死事件が町を騒がせていた。
被害者は皆、驚愕の表情を浮かべたまま死んでいた。
死因は不明。
「黒フードの犯人が、風の夜に現れるらしい」
そんな噂を聞きつけた大学生の男女グループ
隼人、悠真、麻奈、美咲は、
軽いノリで“犯人探し”を始めた。
ある日の夜、街で黒フードの男を見かけた悠真が、
こっそり写真を撮り、SNSに投稿した。
《こいつ犯人じゃね?》
投稿は一気に拡散され、たちまちネットは大炎上。
《勝手に晒すな!》
《冤罪だったらどうすんだよ》
悠真は批判の的になった。
***
数日後、悠真が変死体で見つかった。
ネットはまたもや騒然とし、様々な憶測が行き交う。
その時、"とある名無しのアカウント"が現れた。
いわゆる捨て垢というやつだ。
《最初は偶然だった。でも、噂が僕を"そういう存在"にした》
《今度は、お前たちの番だ》
不気味なほど具体的な語り。
他にも事件の時系列や犯行動機などを投稿している。
《こいつ、本物……?》
《いたずらする暇あったら働けよニート》
半信半疑のネットの意見は収拾がつかぬまま
数日が経過した。
***
「ねぇ、次、私たちだったりしないよね?」
「そんなわけないじゃん、考えすぎだよ。」
震える麻奈を、美咲は励ますことしか出来なかった。
隼人は黙って窓の外を見ていた。
途端に隼人はどこから出たか分からない悲鳴をあげた。
そこには、風にたなびく黒いフードの男が立っていた。
…!!!
慌ててスマホを開き、"あのアカウント"を確認する。
隼人の指が震えた。次の瞬間、強い風が吹き付けた。
隼人の手に握られていたスマートフォンには、
あのアカウントが表示されていた。
以前は名無しだったが、とある名前が付けられていた。
2025.3.6「風が運ぶもの」
秋の終わり、
枯葉が舞う。
ひらり_
幼馴染の沙希がいなくなってから、
初めての秋だった。
彼女はずっと病気を抱えていた。
それを知っていたのは俺だけだった。
「みんなには言わないでね。普通に過ごしたいから。」
沙希はいつも笑っていた。
風が吹けば、
彼女の髪が揺れる。
ひらり_
あの日も俺たちは、
落ち葉が積もる公園で、
並んで座っていた。
「ねえ、優真。
落ち葉ってさ、ちょっと羨ましいよね。」
「は?」
「ほら、最後の瞬間が綺麗じゃん。
ひらひら舞いながら落ちていって、
それでも風が吹いたら、また空に戻れる。」
そう言って、
沙希は足元の葉をつまみ上げた。
指先からこぼれた葉が、
風に乗る。
ひらり_
「……何それ。」
「そういうの、いいなって思うの。」
そのときは、
ただの何気ない会話のひとつだと、
思っていた。
——でも、今なら分かる。
あれは、
彼女なりの覚悟の言葉だったんだ。
──────────
今日も公園のベンチに座り、
俺は静かに空を見上げる。
風が吹いた。
一枚の葉が枝を離れ、
ゆっくりと落ちていく。
地面に触れたその瞬間、
また風で舞い上がった。
ひらり_
ふわりと宙へ戻っていく葉を、
俺は目で追う。
まるで、
彼女の魂が空へ還っていくみたいだ。
その様子を喩えるなら__
2025.3.3「ひらり。」
ピンポーン。
「誰だろう、なんか荷物頼んだのー?」
キッチンにいた妻が料理の手を止め、
インターホンの画面を覗く。
「なんか頼んだっけな、心当たりないなー」
ソファに座る俺は何気なく答える。
「……違うみたい」
妻はしばらく画面を見つめた後、不思議そうに首を傾げた。
「誰も映ってないわ」
そんなばかな。俺も立ち上がり、玄関へ向かう。
ドアスコープを覗くが、確かに誰の姿もない。
悪戯かとも思ったが、心臓が妙に早鐘を打っていた。
「まあ、いいか」と言いかけた瞬間、妻がふと呟いた。
「最近、よくあるのよね……この時間に鳴るの」
「……そうなのか?」
「ええ。あなたが帰ってくる少し前にね」
ゾクリと背筋が冷えた。妻の視線を感じる。
俺は気づかれないようにスマホを握りしめ、
通知を確認した。
メッセージがひとつ。
――「今日も会えなくて寂しい」
喉が鳴る。妻の目が、まっすぐ俺を見ていた。
「……ねぇ、本当に_」
2025.3.2 「誰かしら?」
さっきまでの賑やかな黒板アートは消され、教室には静けさが広がっていた。
机の上を撫でる。
3年間の落書きの跡、削れた角、微かに残るチョークの粉。
ここで笑い、悩み、時には涙を流した。
窓の外を見ると、校庭の桜の蕾が膨らんでいた。まだ固く閉じたままだけど、もうすぐ咲く。
まるで今の自分みたいだ。
卒業は終わりじゃない。ただ、新たな世界へ歩み出すための、静かな合図なのだ。
僕は今、強く、美しく、しなやかに、
大きな花を咲かせようとしている。
今日という日が僕にとっての__
2025.3.1 「芽吹きのとき」
P.S. 高校生の皆!卒業おめでとう!!!
幼い頃、悪いことをして父親に叱られたときの
制裁に喰らったビンタの余韻を今でも思い出す。
_頬にじんわり残る熱い感覚_
そして、泣き喚く自分はいつも母親の腕の中で
ひたすらに慰められていたことを思い出す。
_両腕で抱きしめられる包まれるような感覚_
思い出す時は、いつも痛みと優しさが一緒だ。
自分は両親の愛の中で生きてきたのだと思う。
父を思い出せば同時に母を
母を思い出せば同時に父を
そんな風に育ててくれた両親の
2025.2.28「あの日の温もり」