秋の終わり、
枯葉が舞う。
ひらり_
幼馴染の沙希がいなくなってから、
初めての秋だった。
彼女はずっと病気を抱えていた。
それを知っていたのは俺だけだった。
「みんなには言わないでね。普通に過ごしたいから。」
沙希はいつも笑っていた。
風が吹けば、
彼女の髪が揺れる。
ひらり_
あの日も俺たちは、
落ち葉が積もる公園で、
並んで座っていた。
「ねえ、優真。
落ち葉ってさ、ちょっと羨ましいよね。」
「は?」
「ほら、最後の瞬間が綺麗じゃん。
ひらひら舞いながら落ちていって、
それでも風が吹いたら、また空に戻れる。」
そう言って、
沙希は足元の葉をつまみ上げた。
指先からこぼれた葉が、
風に乗る。
ひらり_
「……何それ。」
「そういうの、いいなって思うの。」
そのときは、
ただの何気ない会話のひとつだと、
思っていた。
——でも、今なら分かる。
あれは、
彼女なりの覚悟の言葉だったんだ。
──────────
今日も公園のベンチに座り、
俺は静かに空を見上げる。
風が吹いた。
一枚の葉が枝を離れ、
ゆっくりと落ちていく。
地面に触れたその瞬間、
また風で舞い上がった。
ひらり_
ふわりと宙へ戻っていく葉を、
俺は目で追う。
まるで、
彼女の魂が空へ還っていくみたいだ。
その様子を喩えるなら__
2025.3.3「ひらり。」
3/3/2025, 2:17:16 PM