ピンポーン。
「誰だろう、なんか荷物頼んだのー?」
キッチンにいた妻が料理の手を止め、
インターホンの画面を覗く。
「なんか頼んだっけな、心当たりないなー」
ソファに座る俺は何気なく答える。
「……違うみたい」
妻はしばらく画面を見つめた後、不思議そうに首を傾げた。
「誰も映ってないわ」
そんなばかな。俺も立ち上がり、玄関へ向かう。
ドアスコープを覗くが、確かに誰の姿もない。
悪戯かとも思ったが、心臓が妙に早鐘を打っていた。
「まあ、いいか」と言いかけた瞬間、妻がふと呟いた。
「最近、よくあるのよね……この時間に鳴るの」
「……そうなのか?」
「ええ。あなたが帰ってくる少し前にね」
ゾクリと背筋が冷えた。妻の視線を感じる。
俺は気づかれないようにスマホを握りしめ、
通知を確認した。
メッセージがひとつ。
――「今日も会えなくて寂しい」
喉が鳴る。妻の目が、まっすぐ俺を見ていた。
「……ねぇ、本当に_」
2025.3.2 「誰かしら?」
3/2/2025, 2:24:35 PM