月影若葉

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10/9/2025, 11:27:52 AM

私の名前はセシア
ある日海辺で散歩している時、人魚に出会った
人魚は空を見つめていて、その横顔はどこか悲しげな表情をしているように見えた
よく見ると、顔が二つある…?
片方と目が合った
人魚は私に気がつくと海の中へ戻ってしまった


怪物と呼ばれている僕たちは、元々2人の兄妹だったけど、他の人達にいろんなことをされて2人で一緒に死ぬために海に飛び込んだんだ
ビルの屋上から飛び降りたり、縄で首を括ったり…
そんな死に方もあったけど、僕たちは海が好きだったから溺死を選んだんだ
ちょっとだけ苦しかったけど、彼等にされたことと比べたら全然大したことはなかった
私たちはこのまま海の底に沈むと思っていたの
でも、死ねなかった
私たちは溶け合って、一つになった
顔や意識は2人分
でも、体は一つだけ
それに、海で生きれるようになってた
ヒレやエラが生えてたんだ
それだけなら良かったんだけど、一番の変化は何をしても死ななくなってたこと
傷の治りは遅いけど、体を岩にぶつけても、心臓を貫いても、頭を潰しても…
死ねなかった
頭を潰すのにはかなり勇気が必要だったけど、次に目が覚めたら元通り
おなかも空くし、眠くもなるし、寂しくもなった
身体には二人いるはずなのにね
それに、自分を傷つけた分の痛みはずっと続いてた

ある日、少し地上に出て空を見ていたら一人の人間と目が合った
多分怖がらせちゃうと思うから、すぐに海に戻ったんだけど、あの子はずっと僕たちがいた所を見ていた
ちょっとだけ変わった子なのかな…?
でも、雰囲気は悪い子ではなさそうなのが分かるよ
また見かけたら、声をかけてみる?
しばらくちゃんとした言葉を話せてないから、あの子に会うまでちょっとだけ練習しておく?
そうだね




あの人魚のことが忘れられない
あの魅力的な姿、忘れるほうが難しい
私はあの人魚に一目惚れしてしまったのかもしれない
あの子の声を聞いてみたい
また、海に行ったら会えるかな…?
会えたなら、話をしてみたい



『聞いたか?』
「何を?」
『この海辺に人魚みたいな怪物が出るらしい』
「それって、何かヤバいの?」
『噂じゃ、遭遇したら海に引きずり込まれるとか』
「最近、怪物が出るっていう噂、増えてるね」
『A地区炎上事件って知ってるか?』
「どんなのだっけ?」
『ある日突然、A地区全体が炎に包まれて、今でも炎が消えてないらしい
しかも、そこから少女の歌声が聞こえるとか…』
「あぁ、そう。
それはそうと、噂とか他にもなんかあるんでしょ?」
『トウゲツ兄弟って知ってるか?』
「あぁ、親なし兄弟ね」
『二人とも森の近くで目撃情報があって以来行方不明らしい
あいつら森に入っていったんじゃねーの?って話』
「他にそういう奴いないの?」
『今のところ、例の兄弟以外なら数十年前に森に入っていったって奴が一人居るとか…』
「そいつはどうなったの?」
『行方不明らしい』
「ふーん。でも、アタシらに関係ない話でしょ」
『それもそうだな。なにより、どいつも他人だしな』
「そのうちアンタも噂の怪物に殺られるじゃないの?」
『冗談はよせw そんなんあってたまるかよ』

10/8/2025, 1:13:25 PM

何もない世界に、青年が一人
彼の名はアンソニー
彼は以前、暗い森に迷い込んだことがある
そこで出会った少年のことを思い出していた
「…彼は、兄弟に会おうとしてたのかな?
家族がいるって、どんな感じなんだろう
僕にも家族は居たのかな」
そう考えていたアンソニーは気がつくと再び森の中に居た
「もう一度、あの少年を探してみようかな
それから、家族について聞いてみよう」



暗い森の中
「それって…」
『貴方はもう外には出られないでしょうね。
なぜなら、私たちと同じように異形化が進んでいるので。』
「じゃあ、僕より先にここに来ていた兄さんは…」
『エェ、もう手遅れデス』
「…それでも、先に進むしかないんだよね」
『ヲヤ、怖がら無ぃノですね』
「もう君のことは見慣れたし、元に戻れないのなら怖がったところで意味はないんでしょ?
君の同類になるわけだから」
『ソレモそうでスネ』
「そういえば、名前を言ってなかったね
僕の名前はテトラ。君の名前は?」
『私ノことはジーニーと呼んでください』
「それじゃあ、ジーニー」
『はい、ナんでショウ』
「君はいつからこの森に住んでるの?
見た感じ、人間っぽいような気がするんだけど」
『…』
「話したくないんだね、分かった
もうこの話はしないようにするよ」
『あリがとうゴザイまス…
!!』
「どうしたの?」
『急二気味の悪い気配が現れマシた
ソの気配は例の探している気配ト近い所に居ます』
「危険そう?」
『ワカリマセン』
「とにかく急ごう」
2人は森の奥へ進んでいった

10/7/2025, 1:45:16 PM

暗い森は静寂に包まれていた
✕✕✕…もとい、テトラは森で出会った銀髪の青年(?)のジーニーと共に兄のネビルを探していた
「ねぇ、ジーニー」
『何でしょうか?』
「本当にこっちで合ってるの?」
『はい。此方の方からこの森に元から住んでいた者と違う気配を感じますので。』
「それが兄さんっていう保証は?」
『それは…五分五分といったところですね。』
「じゃあ、あんまり期待はしないでおくよ。…にしても、この森すごく広いね」
『あぁ、その辺りからは少し周りには気をつけて進みましょう。なぜなら、入り口付近にいるものよりも恐ろしいものが徘徊していますので。』
「…それ、先に言ってくれない?」
『すみませんねぇ、ついうっかり忘れていました。』


森の中の別の場所、ネビルは誰かの気配を遠くに感じた
「コの気ハイ、知っでイルギがㇲる。
デも、白無いゲハイモ一緒に・・・。
いづテ見ョう。」
ネビルはその気配に向かって歩き始めた

兄弟が出会う日はそう遠くない



『おや?』
「どうしたの?」
『例の気配が此方へ向かっているようです。しかし、他の複数の気配も周囲に感じます。』
「どのみち、警戒しておいたほうがいいみたいだね。」
『それと、貴方は少し変わられたように感じますねぇ。』
「え?」
『ご存知でないのですか?』
「どんな風に変わってるの?」
『どことなく、こちら側に近い気配をまとっているように感じます。』
「それって…」

10/6/2025, 2:39:28 PM

暗い森と別の何処かで、1人の少女が歌っていた
その歌声はどこか悲しげではあったが、落ち着いた声色であった
少女の周りには炎が燃え盛っていた
それでも彼女は歌い続けている
炎は少女に迫っている
しかし、歌は止むことなく続いている
やがて、炎は少女を飲み込んだ
炎に包まれた少女は姿を変え、一体の怪物となった
怪物は歌い続けている
怪物の身体は燃え続けているが、悲しげな歌い声も続いているらしい


また別の場所でも一体の怪物が生まれた
死ぬ為に海へと身を投げた兄妹は、海の中で互いに混ざり合い、怪物となった
死ぬことができないソレは海の中を彷徨い、今でも現世から解放されることを望んでいる
ソレがいる場所には、うめき声のようなものがこだましているそうだ


怪物が生まれるきっかけは様々で、今この瞬間も、どこかで怪物は生まれている
身近な人がある日突然、姿が変わっているかもしれない
自分が変わっているのかもしれない

10/5/2025, 3:21:24 PM

窓から月の光が入ってくる
ある日、兄弟は噂話をしていた
「ねぇ、どこかにあるっていう暗い森の話知ってる?」
『知らない。どんな話?』
「その森には怪物が住んでるらしいよ」
『怪物って、どんな見た目の?』
「どんな姿かは分からないけど、出会ったら大変な目に遭うらしいよ」
『ちょっと怖いね』
「今日みたいに月がよく見える日にその怪物は活動してるとか…」
『それって、他の時には活動してないの?』
「他の日は違う見た目で森の中を彷徨ってるらしいよ」
『怪物と出会う日が来ないといいね』
「そうだね。…あ、そろそろ寝ないと」
『おやすみ、兄さん』
「おやすみ、✕✕✕。」

???は森の中を彷徨っていた
「オ夜ㇲ已ゐ、✕✕✕。」
ソレが発した音は、突如よみがえった記憶の一部にあった言葉と、誰かの名前
かすれたような、何かの鳴き声のような…
そんな音を口にした
だが、誰かの名前は、はっきりと声として発せられていた
森には月の光が差し込んでいた
???は空を見上げ、前を見ると再び森を彷徨い始めた
森には静寂が広がっている

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