私の名前はセシア
ある日海辺で散歩している時、人魚に出会った
人魚は空を見つめていて、その横顔はどこか悲しげな表情をしているように見えた
よく見ると、顔が二つある…?
片方と目が合った
人魚は私に気がつくと海の中へ戻ってしまった
怪物と呼ばれている僕たちは、元々2人の兄妹だったけど、他の人達にいろんなことをされて2人で一緒に死ぬために海に飛び込んだんだ
ビルの屋上から飛び降りたり、縄で首を括ったり…
そんな死に方もあったけど、僕たちは海が好きだったから溺死を選んだんだ
ちょっとだけ苦しかったけど、彼等にされたことと比べたら全然大したことはなかった
私たちはこのまま海の底に沈むと思っていたの
でも、死ねなかった
私たちは溶け合って、一つになった
顔や意識は2人分
でも、体は一つだけ
それに、海で生きれるようになってた
ヒレやエラが生えてたんだ
それだけなら良かったんだけど、一番の変化は何をしても死ななくなってたこと
傷の治りは遅いけど、体を岩にぶつけても、心臓を貫いても、頭を潰しても…
死ねなかった
頭を潰すのにはかなり勇気が必要だったけど、次に目が覚めたら元通り
おなかも空くし、眠くもなるし、寂しくもなった
身体には二人いるはずなのにね
それに、自分を傷つけた分の痛みはずっと続いてた
ある日、少し地上に出て空を見ていたら一人の人間と目が合った
多分怖がらせちゃうと思うから、すぐに海に戻ったんだけど、あの子はずっと僕たちがいた所を見ていた
ちょっとだけ変わった子なのかな…?
でも、雰囲気は悪い子ではなさそうなのが分かるよ
また見かけたら、声をかけてみる?
しばらくちゃんとした言葉を話せてないから、あの子に会うまでちょっとだけ練習しておく?
そうだね
あの人魚のことが忘れられない
あの魅力的な姿、忘れるほうが難しい
私はあの人魚に一目惚れしてしまったのかもしれない
あの子の声を聞いてみたい
また、海に行ったら会えるかな…?
会えたなら、話をしてみたい
『聞いたか?』
「何を?」
『この海辺に人魚みたいな怪物が出るらしい』
「それって、何かヤバいの?」
『噂じゃ、遭遇したら海に引きずり込まれるとか』
「最近、怪物が出るっていう噂、増えてるね」
『A地区炎上事件って知ってるか?』
「どんなのだっけ?」
『ある日突然、A地区全体が炎に包まれて、今でも炎が消えてないらしい
しかも、そこから少女の歌声が聞こえるとか…』
「あぁ、そう。
それはそうと、噂とか他にもなんかあるんでしょ?」
『トウゲツ兄弟って知ってるか?』
「あぁ、親なし兄弟ね」
『二人とも森の近くで目撃情報があって以来行方不明らしい
あいつら森に入っていったんじゃねーの?って話』
「他にそういう奴いないの?」
『今のところ、例の兄弟以外なら数十年前に森に入っていったって奴が一人居るとか…』
「そいつはどうなったの?」
『行方不明らしい』
「ふーん。でも、アタシらに関係ない話でしょ」
『それもそうだな。なにより、どいつも他人だしな』
「そのうちアンタも噂の怪物に殺られるじゃないの?」
『冗談はよせw そんなんあってたまるかよ』
10/9/2025, 11:27:52 AM