どこかにいる おばけ

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1/2/2025, 12:33:16 PM

うだるような暑さの中
蝉の鳴き声がせき立ててくる
絶えず校庭の砂に汗が落ちた。
けど君の纏う空気は、
何故だかいつも涼しい風が抜けていた
そんな君がどうにも特別に見えて
涼しげで、冷ややかで、凛とした姿勢の貴方が、僕の夏の風鈴でした。
視界が歪むような陽射しに当てられて
体に重く張り付く制服
そんな中
爽やかで心地良く鼻腔をくすぐる君の匂いは、
ついすれ違う度に振り向いてしまいます
まっすぐなロングの黒髪が静かに揺れる後ろ姿を、
ついつい眺め続けてしまいます。
静かで鋭く通る君の声は鮮明に耳に飛び込んできて、
その度に、
ついつい声の方向へ顔を向けてしまう
そんな時だけは、
五月蝿い蝉の鳴き声も聞こえなくなって
僕の世界は君が中心で全てになる。
いつも静かで落ち着いた冷たい君の目
その視線を受けてしまったら、
きっと凍ってしまうように冷たいのでしょう
そんなのがちょっぴり、
いや、とっても恐い
けど君から目を離せずにいる
手の届くような場所にいるはずのない、君
声をかければ届く距離でも、
君はずっとずっと遠くにいるようだ
氷のような君は恐ろしいけど、
とても美しい。

別々の高校に行きますが、貴方のことはいつになっても、きっと忘れられません。
勇気が出ないながらにも、気持ちは伝えたくて
読んでもらえたらとても嬉しいです。

君が、好きです。


———って…キモ。



何これ? 誰だよ






静かで鋭く通る声に残されたゴミ箱には、雑に破かれた子綺麗な白いレター。
彼の気持ちは届いたことになるのか否か。


今年の抱負は、
“マイペースに”と、“良いと思うことをする。”
あとダイエットや夢を目指すための努力を、ですかねぇ
今年はマイペースで不安を感じても押しつぶされず気楽にいけたらなぁと思います。

11/6/2024, 1:28:24 PM

柔らかい雨が瞼に落ちた
頬を伝って首をなぞる
触れる感覚は柔らかいのに、温度は酷く冷たくて、皮膚をツンと刺す。
やがてその雨粒は垂れていき、学ランに滲んだ
ハラハラと静かに音を立ててそれはやってきた。
数粒が重なりやがて一つの大きな音となり、俺の日常の背景となる。

そんなことを思っていると隣から、静かで柔らかい声が聞こえてきた。まるでこの雨みたいだな。

「ねぇねぇみっくん、あの蜘蛛の巣、雨粒がついて綺麗だよ。」
こう言って俺の目を見て、花がほころんだように微笑む彼女の名前は、内田 華(うちだ はな)だ。そして、俺の好きな人だ。現在付き合っている。
素敵な笑顔をする人だ。
「ホントだ。今日は米粒にも満たないような小さな雨粒だから、蜘蛛の巣についている雨粒も繊細な感じがするね。」
「…ふふっ」
「なに。」
「どこでそんな色んな言葉覚えてきたの?いつも単純明快な単語しか使わないみっくんが笑」
「…俺は元々こうだよ」
「うっそだぁ!」
「嘘じゃない。」
「まぁそういうことにしておいてあげるよ〜笑いつのまにか自分のこと{俺}って言うようになっちゃって!そうだよねーずっと{僕}じゃ恥ずかしいもんね〜!」

突然だが俺の名前は東野 海斗(とうの かいと)だ。
お分かりいただけるだろうか?彼女が呼んでいる「みっくん」という呼び名にはかすりもしない名前だ。
だが俺はみっくんということになっている。

みっくんというのはそもそも誰なのか、という話になるよな。
それは、内田さんの彼氏だ。
ん?俺が彼氏なんじゃないのかって?そうだよ。俺も内田さんの彼氏だ。だけどみっくんも内田さんの彼氏だ。
厳密にいうと、俺が内田さんの彼氏なわけではない。
みっくんとしての俺が、彼氏なのだ。


それは今日みたいな雨の日。
下校中の道路の片隅で、うずくまって雨に濡れている内田さんがいた。
傘をそっと差し出して、
「こんなところで何してるの?」
と声をかけた。
顔をゆらりと上げた内田さんは、鼻を赤くして目からはしきりに大粒の雨…涙が溢れ出ていた。
そんな彼女を前に、俺も自然と気持ちが沈む。
ついその涙を指で拭ってしまった。
内田さんの顔に触れてしまった…!
なんて思っていると、
内田さんは、
「そばにいて…」
と細々しく呟いた。
不本意ながらも隣に一緒に座り込み、彼女へ傘を貸し出しながら、そばにいた。
冷たい雨水がズボンに触れ、滲み広がった。
学校はこの話題でもちきりだったから、情報に疎い俺も知っている。
内田さんの彼氏の早見 道翔(はやみ みちと)が、内田さんとの下校中に突っ込んできた自動車から内田さんを庇って亡くなった。


この次の日。内田さんは事があった翌日から、相変わらず普通に登校している。
俺は内田さんを何かと気にかけ、できる限りの事をして寄り添った。
「東野くんは優しいね。」
内田さんからそんなことを言われ、少し照れくさくなる。でも、彼氏の死を悲しんでいる内田さんを前に、迂闊に喜べる気にはならない。
喜んではいけないだろう。
内田さんはやがて、悲しみ、悔しさ、罪悪感、喪失感、俺には到底分かりきれない色んな感情から、俺のことをみっくんだと思い込むようになった。
何度も何度も「俺はみっくんじゃない」と伝えた。
「俺はみっくんじゃない」同じようにまたそう伝えたある時、彼女が、心が張り裂けそうで穏やかな笑顔を浮かび上げた。
それは今にも消えてしまいそうで、彼女の腕を咄嗟に掴んだ。呼び止めようと思った。何から止めるんだ?そんなの分からない。分からないけど、今この手を放してしまえば、確実に消える。そう直感的に思ったんだ。
でも声が出なかった。少しでも音を出したら崩れ散ってしまうような脆さを感じた。
恐怖と緊迫感であふれ、自分が冷や汗でずぶ濡れになっているのに気付いたのは、
「もう、行こっか。」
と彼女がいつもの花がほころんだような、優しくて親しみのある、愛らしい笑顔で俺に話しかけた時だった。
俺はみっくんじゃないと伝えたのはこれが最後だ。
俺はみっくんだと肯定もしないが、否定することをやめた。

「みっくん」でいることにした。


「くん…みっくん!」
「えっ?」
「何ぼーっとしてんのー!バス来たよ。」
「ああ…」
「?」

内田さんが不思議そうな表情をして俺の顔をじっと見つめる。
その目はどこかあどけなさを感じる。
俺はあくまで内田さんの好きな人の代わりで、その目は俺自身を見ているわけじゃない。
俺を通して「みっくん」を見つめている。
俺は今内田さんの彼氏だけど、俺自身と内田さんでは、いつまでも恋人とは近いようで一番遠い場所にいる。
あぁ、なんでこんなことに。
なんて悲しき、運命なのだろうか。

10/15/2024, 2:28:22 PM

鋭い眼差しだった

屈強で明らかに俺よりも強い。

それでも、

どうせ高校は終わる

そして人生も終わる

いずれ俺は死ぬし世界も死ぬ時が来る

誰も俺を、俺の生きた世界を、知らない日が来る

だから俺は気にせず好きなようにやりたいことをやる

グーパンで殴ってやった

倍にされた

痛い。

それでもまた明日も、

糞共に頭を下げるような価値はない明日だから

繰り返し俺はそうやって生きていく。



それなのに、

それでも、

小さな事で

俺のしたことは無駄じゃなかったって思える、

明日だから

世界だから。

終わりがくることを、知りながらも

俺は今日を歩む。

10/2/2024, 2:16:09 PM

【奇跡をもう一度】

常識では思いがけない不思議なできごと。

別にそんなものを求めているわけじゃ無いけど。

まぁそんな奇跡は何かしらの行動をしなければ作り得ない

だから俺は今日、手始めに外に出た。

久しぶりに浴びる日差しに目が眩んだ。

壮大な広い視野と、家の中とは全くどこか違う空気に足がすくみながらも、一歩ずつぽそりと歩いた。

目の前から来る人に不意にビクついた。

空を見上げて深呼吸した

まっすぐ堂々と歩いた

通りかかった人が見えなくなった時、腰が抜けた。

「まあ、車通りは少ないから…大丈夫だな」

あたりが暗くなった

「な、んだ…!?」

月明かりがほんのりと俺の顔を染めた

まるで突如として太陽と月がひっくり返ったみたいだ。

ん、なんだ?

俺は、真っ赤な紅色に染まった金縁の、やけに肌触りがいい羽織りを羽織っていた。

「こんなんいつ…」

「にゃぉおーん」

「猫!?」

鳴き声が聞こえて振り向くと、
終わりが見えないほどの数の猫の行列がこちらへ向かってきていた。

それぞれ繊細でたおやかでありつつ謙虚な着物を身に纏っていて、節々に敬意が伝わってくるような作動や挙動をする。

「まるで家臣や仕人のようだな…」

「さあ若様、今夜は冷えますので早く屋敷にお戻りください。」
先頭に居た、大半の猫らが着ている着物とはまた別物の格好をし、提灯を持っている黒猫が俺の目をまっすぐ見てそう言った。

その眼は繊細で大きいビー玉みたいな、正真正銘の猫の眼だ。

なんだか…この、心臓がひっくり返りそうな気分はなんだろう

気分が悪い。

こんな変な光景を目の当たりにしてるからか?

「若様?」

「嫌だ。屋敷には帰りたくなど無い。」

!?

なんだ、勝手に言葉が…





「はし…おい!倉橋!!」

「はいぃい!?」

「授業中に居眠りをするな!」

「え…?」

嘘だろ?どういうことだ?だって俺は不登校で、引きこもりで、ついさっき外に久しぶりに出て…

「ちょっと倉橋くん、居眠りなんて珍しいじゃん。疲れてるの?」

「え、っと」

誰だ?なんだ?



あ、この子は…俺の好きな人だ
ここは教室で…
この人、先生は社会科の先生で、俺は今授業中だ。

「倉橋くん?」

「あはは…そうかも。疲れてるのかな」

「そっか…あんまり無理しすぎないようにね。」

「うん。ありがとう。」


なんだ、すごい怖いな

夢の錯覚で現実との感覚が曖昧になってる。






あれ…本当に夢なのか?

この感覚はなんなんだ?

忘れていたような

消えていたような







やがて放課後になり家に帰ってからもそんな不思議な気持ちで過ごした。


「散歩でもするかな」

夢で見た、外に出てみて歩いた道は、俺の家の目の前のこの道だ。

普通に歩いてみた。

なんともなかった。





「なんだ、つまんないの」

「若様?」

力強く振り向いた。

すぐ横で話しかけられたようだ

耳をおさえた。

その耳は熱くなっていた。




「なんなんだよぉ…」

10/2/2024, 4:01:15 AM

【たそがれ】

何度でも書いた
一心になって書いた
時間を削って書いた

そんな文字は一つのタップ一瞬で全て消えるもの

何だか勝手に、お前が熱意を込めてあくせく書いたものは所詮はこれほどの価値なんだと笑われてるような気持ちになる

きっと多分嫌な空気のせいだ

換気をしよう

ああだめだ…今日は本降りだな。

もうここまできたら沈むだけ沈むしか無い。

今日は何もしないようにしよう。

部屋に行こう
ベットに横になって寝よう

私の部屋が、遠い

無駄に広くて長い廊下には、隅々にシンプルながらも全てにしっとりとした高級感が漂っていて、重い。

気づけばすぐに子供の頃の自分と光景が出てきて、
私の目の前でうろちょろするんだ

見るな 話しかけるな だめだ

そいつの首根っこを引っ張り上げてただただ目の前の光景から目を離して

強く目を瞑る

戻れた

「まただ…薬を変えてもらおう」

ああここまで来てしまった

この廊下は通りたく無い

ピアノに何度も見た肖像画

煩い音が聞こえてくる

思い出のピアノなんて言うには相応しくない。ただの廃れたピアノが視界に映るたび、どうやったってどうにもできない心のわだかまりが呼び覚まされる気がして早足になる。

忘れ去られた豪邸には私ひとり。
こんなにも大きいのに誰にも知られず気に留められず
惨めなもんだよな。
こんな豪邸から出られず終いなところ、逃げられない無力さを強く感じる

私は何がしたいか
何が好きなのか

わからず有耶無耶にして生きてきた

私はだいぶな白黒人間だが、自分に対してはいつも目を逸らしてグレーにもせず見殺しにする。
そうだな、卑怯だよ。

もういい、このままベットへ辿り着けても眠れそうに無い。寝れたとしても悪夢にうなされるだけだろう。そんなのごめんだ。テラスで雨を傍観しながらカプチーノでも飲もうか…

〔ザーーーーー…〕

何だかこんな雨は俺の記憶と一緒に全部何もかも流してくれそうだな

でも、なんだか、確かに目の前にあるはずのこの雨が遠いものに感じる。一線が引かれていて、俺はその線から更に何歩も下がって傍観している気分だ。
やがて俺だけ此処に置いてけぼりにされそうだ。
俺だけ動くことはなく、時は当然のように過ぎ去るから。そして、時が過ぎ去っても、記憶は残り続けるものだから。



そういえば庭にくるのも久々だな。
反対の西庭の方にはデカい噴水があったっけかな…
あの噴水ではあいつとよく遊んだな

俺が周りから色々言われているのをいいことに下心満載で媚び売りしに同情してくる奴等がうじゃうじゃいた中、あいつだけはまるで自分がされたかのようにガチギレしてたっけな。


〔ボンボンだからって調子乗ってんだろそんなの性格悪いに決まってる。〕
〔どうせあの冷たい態度に目つき、私たちのこと絶対見下してるんでしょ。〕

「君のこと知らないから奴等は好き勝手あんなこと言えるんだ!知らないくせにつべこべ言う権利無いでしょ!君も言い返さないの!?」

「俺は…いや私はいいんだ。」

「どうしてよ!いいわけないでしょうに」

「知らないくせにつべこべ言う権利は無いんだろう?それはこちらにも言えることだし、何か言い返したところで大事になれば、逆に私が損害を大きく被ることになるだろう。だから、好きに言わせておけばいいんだ。」

「でも…」

「やり返すなんてもの損以外何も生まないんだ。もうこの話はこれで終わりにさせてくれ」

「……」


ああ、思えばあいつとはあれが最後だったな。

唯一の楽しかった気がする思い出さえ、綺麗なものとして残ることができないなんて。

「ハハっ、我ながら全てが最悪だな…」



父さんと母さんの期待に応えるべく、血筋を重んじて、なんて思ってるうちにいつのまにかそこに俺はいなかったんだな。


惨めだ。


どうしても、惨めだ。







〔ポロッ ツー…


〔ザーーーーーーー————……

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