星空の下で________
続きを想像しなさい、みたいなものが昔から嫌いだった。
私が昔、そこに死にたいと言葉を当てはめたら、みんながヒソヒソと内緒話をして、先生は困った顔で私に理由を聞いたから。
そう話していた君は、逆光で顔が見えなくて。
でもその佇まいは澄んで見えてとても綺麗だった。
きっと君が紡いだ言葉は、決して諦めの言葉ではなく、ただ純粋に、そうきっと純粋に、綺麗だと自分が思ったものを纏いながら最期を迎えたいと思っただけの言葉だったのだろう。
それが他人によって歪められてしまうことが、幼いなりにも君にとっては苦痛だった。
ただ、それだけといえばそれだけの話だ。
それでも君が零した言葉を失くしたくはなかったから、そっと頷いて勝手に受け取った。
答え合わせはしていないけれど、多分しないことが正解な気がして。
そのまま私たちはそっと夜空に向かって約束事をして笑い合った。
「明日、流星群がみえるらしいよ」
「へー、そうなんだ」
「だからきっと明日は、満天の星がみえるよ」
「もし明日晴れて、満天の星がみえたときは一緒に死のうね」
「うん、そうしよう」
" 星空の下で "
自分は人のことが嫌いだ。
人は嘘を吐くし、みんな自分勝手に生きている割にそれに気付いていない。それが酷く居心地が悪くて。
自分だって、自分勝手なんだと思う。だから人とぶつかることがあるし別にそれは間違っていることではないと思う。
でもそれじゃあ駄目なことが多い。
いつだって、人の気持ちを考えることは出来ても人の気持ちをしっかりと理解することなんてできない。
それでもそれを求められてしまう。言葉にしてくれないまま、わかってほしかったと言われてしまう。
それに少し疲れていた。もう人と関わることなんて別にしなくていいかとすら思っていた。
そんなとき、君と出会った。
これまでのことを、隠すことなくすべて話した。
それは何も君が特別だったからではなくて。
もう、どうでもよかったのだ。これに共感などされなくても、人として間違っていると思われようとも、引かれようとも、なんでもよかった。
なんならそうされるとすら思っていて。
だから、すべてを吐き出さなくても吐き出しても二度と関わることがないのならば同じだと腹を括る、否諦めただけだった。
そうしたら君はケラケラとそれはそれは愉快そうに笑って。
それからたった一言、確かにそうだよねと呟いた。
その言葉が胸にじんわりと広がって、泣きたくなった。
唯一、わかってくれた瞬間だと思ってしまった。そしてそんな自分が悔しくもあって。
あれからもう随分と時間が過ぎた。
君と出会ってから共に過ごしてきた期間は私にとってかけがえのない時間になってキラキラと輝いている。
まあ、本人に言ったことはないのだけれど。
薬指に光る貴方からもらった宝物をそっと撫でて。
君とこの世界で、一緒に過ごせてよかった。
来世も貴方と出逢えますように。
そっと口付けて、私も眠ろう。
" 二人ぼっち "
この世はなんと汚いことか。
そう嘆いたのは君だったか、僕だったか。
今となってはもうわからないことだらけになってしまった。
あの子はだめで、この子はよくて。そんなの子どもの頃から変わらないし、大人になってもそうだ。
愛想がいい子がなんだかんだ世渡り上手で、健気に頑張っているあの子は鈍くさいだのと言われたい放題。
ああ、だから君はこの世界に見切りをつけたのか。
そんなことを思うのは、自分が先の内側に居られずはみ出したからだろうか。
まあ、今となってはどうでもいいか。
さてと、皆々様、今日までどうもありがとうございました。
そう高らかに心の中で挨拶をして、綺麗にお辞儀まで想像して。
あとは一歩踏み出すだけ。
明日になったらこんなのはその辺にあるニュースとして消費され、暫くしたら記憶は薄れ、誰も彼も日常を止めない。
はは、そんなものさ。
といつだか綺麗に笑った君が頭を過ぎった。
それが僕の最期の記憶。
" 不条理 "
「愛してる、そんなたった五文字の言葉すら貴方は言えないのね」
そう言って呆れたのは君のはずだったのに、一番呆れたのは自分だなんてどういうことだ。
今更、君のことを思い出したのは現実逃避だろうか。
好きとは言えた。けれど、愛してるはどうしても言えなかった。
それは、愛していなかったから、だなんて単純なものではなくて。
一度口にしてしまえば、君が満足してしまうのではないか。
いつか君が私のことを捨てるとき、その言葉が呪いになるのでは。
そんなことばかりが頭を過ぎっては、唇が微かに震えて声は喉に引っ掛かって君に上手く伝えられなかった。
その理由は、明白だったのだ。
結局のところ、君に向けていた気持ちすべてに、ただ一つの同じ感情が絡んでいただけの話。
それは決して綺麗なものではなく、どちらかといえばきっと汚かった。
それをなんていうか、今更君に伝える手段はもうないけれど、一つだけ答えるとするならば今こそちゃんと言おう。
君に素直にたった五文字の言葉を紡げなかった理由は、
" 欲望 "
好きです、これからも変わらず。
貴方を想い、涙することもこの胸が高鳴ることももうないけれど、それでも私は貴方をこれから先もずっと愛しています。
そう隣で穏やかに眠る貴方に誓ってそっと口付けた。
きっと二人で幸せになれる。
貴方はまだ少し知らないだけだから。
その細く長い指に光る指輪はガラクタで、これがホンモノ。
貴方に嫌われるのならば、地獄まで。
いつだか読んだ小説にあった一文を今思い出すなんて。
ああ、そうか。
嫌われるなんて、と嫌気が差したあの小説に自分を重ねたのか。
だから、結末が気に食わなかった。
こんなにも同じなのに。
さて、ならば私の話ももうおしまいが近いのだろう。
温かいスープを飲んでくれる貴方でよかった。
こんなところまで足を運んでくれる貴方でよかった。
最後まで、貴方にとって都合のいい女で居られてよかった。
サヨナラ、また来世でお会い致しましょう。
" 愛する、それ故に "