雪 兎

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「愛してる、そんなたった五文字の言葉すら貴方は言えないのね」

 そう言って呆れたのは君のはずだったのに、一番呆れたのは自分だなんてどういうことだ。
 今更、君ことを思い出したのは現実逃避だろうか。
 好きとは言えた。けれど、愛してるはどうしても言えなかった。
 それは、愛していなかったから、だなんて単純なものではなくて。
 一度口にしてしまえば、君が満足してしまうのでないか。
 いつか君が私のことを捨てるとき、その言葉が呪いになるのでは。
 そんなことばかりが頭を過ぎっては、唇が微かに震えて声は喉に引っ掛かって君に上手く伝えられなかった。
 その理由は、明白だったのだ。
 結局のところ、君に向けていた気持ちすべてに、ただ一つの同じ感情が絡んでいただけの話。
 それは決して綺麗なものではなく、どちらかといえばきっと汚かった。
 それをなんていうか、今更君に伝える手段はもうないけれど、一つだけ答えるとするならば今こそちゃんと言おう。
 君に素直にたった五文字の言葉を紡げなかった理由は、

" 欲望 "

3/1/2026, 6:17:21 PM