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10/30/2023, 10:17:39 AM

コッペパンを売っている人がいる店。
店は漆喰とレンガ造りで、紅白の屋根だ。
そうして、中には人がいてコッペパンを楽しそうに売っている。
女の子の名前はアンナといって、はすっぱなそばかすのちょっとブサイクな女の子だ。
彼女の名前は、お母さんがつけたもので、彼女はそれが好きではなかった。
だってアンナなんて名前、ありふれているじゃない。
アンナは思う。
(コッペパンを売るのは楽しいわ。私、今じゃすっかり、コッペパン屋のアンナさん。そう呼ばれるのが、日常になってしまって、コッペパン屋以外のお仕事は考えられないくらい!)
アンナはコッペパンが、好きではなかったのだけれど、コッペパンに何かを挟むのは好きだった。
月桂樹。
月桂樹が、店の名前だ。
店長はたまに、月桂樹を玄関ドアに飾る。
一番売れるメニューは、生ハムとマスカルポーネ。
今日も客が一人買っていく。
夕方、
「またね、アンナ!」
と、顔をほころばせながら。

10/28/2023, 10:34:13 AM

暗がりの中で、怖がっているのは誰?
桃の花? くたびれた空想? 子供心?
サーカスのブランコに乗る茶色の曲芸師。赤白の道化は、スポットライトの灯りに照らされて、浮かび上がる、男女の影二つ。赤い鼻、白く塗られた顔。涙を垂らした頬。青白いリボンに命綱も付けず煌めく女の肢体は、するするとリボンを巻き付けながら、器用に昇降する。火の輪くぐりのたてがみのライオンは、もう一匹の雌ライオンと共に、盛大な拍手をうけるように調教されている。そうして、最後に現れた団長は恭しく礼をする。帽子を取った姿は禿頭。赤ら顔の鷲鼻は、盛大な喝采を浴びて。
夜。
暗いお祭り会場にテントを張ったサーカスは、絢爛にお祭りを祝う。
ハロウィンの夜は何か人でないものがやって来る。ジャック・オ・ランタンの顔をした観客が、紛れ込んでいないかい? あっちの男は、幽霊みたいに首が取れてやしないかい? それに、あの子供は奇妙なお面を被っていないかい?
皆、一斉にサーカスが終わると、テントの外へと飛び出した。
ケタケタ笑う、にやけ顔の男。
月に吠える人狼は、おそらく何人か食った後だ。



10/18/2023, 10:58:49 AM

秋晴れの、空から舞い落ちる木の葉のように、太陽が差し込む光を受けながら、ひらひらとひらひらと落ちていきたい。
多分情熱の匂いがよく似合う。
それは、ダンディな男性によく似ていて、オールバックに流した髪型が、哀愁を誘うのだ。
ダンスをしているみたいだ。
何をするにつけても、シックな感情は、郷愁を思わせる。
男は言う。
「このまま、何もしないまま退屈に生きていても、生きた屍の如くさ」
そして、次元大介のように続ける。
「ニヒリズムは徹頭徹尾、やった方がいいね。恩恵は人と距離を取りたくなることか」
いや、これは短所とも言える。
と、男は言う。
男は車のドアを開け、乗り込む。
キーを回し、エンジンをかけ、ギアを一速に入れる。
そうして走り出すMT車の影を、私は追えない。
泥棒は夜やって来るというが、昼間の強盗は、多分相当なやり手だろう。
そうでなくてはハードボイルドという格好がつかないというもの。
苦し紛れに私は笑う。
なぜなら、強盗は既に盗みに入ったあとで、ニヒリズムを語り、MT車に乗って、逃げ去った後だったからである。


10/13/2023, 10:17:31 AM

子供のように育ち、子供のように笑い、子供のようにあどけなく、そんな人間になりたかった。
正直なことを言えば、反抗期なんてなかった。
親に反抗できるほど世間は生優しくはなかった。
生まれによって抵抗のアンペア数が決まるのだと気づいたのは、中学生のときだった。
ただ、惨めな暗い日々が続いた。
心折られるような罵声を聞いた。
何度も何度も罵られ、泥水に浸かった。
そんな中でどうやって私に立ち上がれと?
疑問である。
手を差し伸べてくれる人はいたが、深いところまで踏み込む人はいなかった。
ただ、私一人の身だけが、頼りだった。
苦しみは、二十代後半まで続いたが、それからは干からびたような日々が続いた。
こうして文字を打ち続けているのは、私がそれを乗り越えて生きているから。
それは、生の証である。
勲章などいらない。
戦った証は、血の味となって、口の中に拡がっている。
手のひらに巻いた包帯は、傷を負った腕を隠すためにあるのではない。
ただ、死にたかったあの日に、私は帰れるならば、永遠に続く苦しみなどない。と、言うだろう。

10/12/2023, 11:00:54 AM

放課後、見上げた空。
天は高く、馬肥ゆる秋。
スタバのフラペチーノは、カボチャ色に染まっている。
ついでに、サンドイッチにも手が出そうになるが、やめておくことにした。
何しろ、カロリーの過剰摂取は、健康によろしくない。
それならば、フラペチーノをソイラテにするべきだと、私の中の悪魔がささやく。
悪魔は、あくまでも清貧を貫くべきだと言う。
天使は天使で、じゃあ、モカシロップ足しでとか言うものだから、結局のところ折り合いがつかず、身内へのお土産に、ドーナツを二つ買っていった。
今日の夕ご飯は、土鍋で炊いた。
そこに、卵などかけて、醤油を回して食す。
野菜類は切ったトマトやレタス等に、1:1:1の割合で作った和風ドレッシングをかけて。
副菜はレンコンの金平。
大変おいしくいただきました。
今日も一日お疲れ様でした。
明日も頑張りましょう。

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