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秋晴れの、空から舞い落ちる木の葉のように、太陽が差し込む光を受けながら、ひらひらとひらひらと落ちていきたい。
多分情熱の匂いがよく似合う。
それは、ダンディな男性によく似ていて、オールバックに流した髪型が、哀愁を誘うのだ。
ダンスをしているみたいだ。
何をするにつけても、シックな感情は、郷愁を思わせる。
男は言う。
「このまま、何もしないまま退屈に生きていても、生きた屍の如くさ」
そして、次元大介のように続ける。
「ニヒリズムは徹頭徹尾、やった方がいいね。恩恵は人と距離を取りたくなることか」
いや、これは短所とも言える。
と、男は言う。
男は車のドアを開け、乗り込む。
キーを回し、エンジンをかけ、ギアを一速に入れる。
そうして走り出すMT車の影を、私は追えない。
泥棒は夜やって来るというが、昼間の強盗は、多分相当なやり手だろう。
そうでなくてはハードボイルドという格好がつかないというもの。
苦し紛れに私は笑う。
なぜなら、強盗は既に盗みに入ったあとで、ニヒリズムを語り、MT車に乗って、逃げ去った後だったからである。


10/18/2023, 10:58:49 AM