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8/7/2023, 10:15:44 AM

予定調和とは、加護する対象にむけての、行き過ぎた愛である。
私は、優柔不断を許さない。
そして潔癖な人間を憎む。
カモフラージュされた、虚構という名の、貧困は、この都市に根付いて名高い。
脚色された、知識上の都市観は、東京という街を覆っている。
最近では、名前という名のラベルを貼った人間が、セルフレジを通る。
サラリーマンも女性社員も、皆誰かになりたがっている。
テレビやネットで配信される、魔法少女モノは、不幸を振りまく敵を倒すが、私たちが倒したい敵はなに?
怒涛のごとくやってくる、台風一過や、渋滞情報や、貧困の話は、魔法少女は解決してくれないの?
貧困層は思っている。
明日の職探しに嘆き、昼は値上がりしたおにぎりをパクつく俺の未来は、明るいものではなかろうと。
このままいけば、この国は沈むだろうと。
だが、それは、本当だろうか?
なんにせよ、皆が迷っているのは、この国の未来への憂慮であるが、そんなもんくそくらえだと、富裕層は思うだろう。

8/6/2023, 10:10:30 AM

「お腹に太陽ついてるよ」
と、彼は言った。
私のお腹には、太陽がついている。
さながら、岡本太郎の太陽の塔の如く。
この証は、師匠から受け継いだものだ。
輝く太陽は、さんさんさながら、ひまわりのように、太陽の方を向いている。
フライトジャケットの男が、こちらにあるいてくる。
流暢な英語でこう言った。
「ヘイ、レディ。ユーアーアスーパーウーマン?」
この声を、私の隣で聞いていた男は、私の後ろに隠れて言った。
「ヘイ、ニック。シーイズベリーストロングウーマン」
私は、なんだよ。と思った。
思ったが、口には出さなかった。
じっと我慢していた。
そこで、サイレンが鳴った。
「ホワッツ!?」
私はその音を聞き逃さなかった。
走っていって埠頭の前に立った。
「変身!」

8/5/2023, 10:53:26 AM

ほくほくと、こたつの上で、鍋焼きうどんが煮たっている。
かまぼこ、たふたふのお揚げに、熱々の焼き豆腐。
土鍋いっぱいの、鍋焼きに手をつける二人の女子。
加奈子は、夏海の鼻の赤い顔を見ながら、今年も終わりだなと感じる。
除夜の鐘が聞こえる。
ゴーンゴーンゴーン。
ああ、今年はいい事はなかった。
彼氏にも振られたし、友達も出来たけど、すぐ別れた。
大学もうまくいってない。
単位が取れなきゃ、来年は留年だ。
なお、私の所属は、谷教授のゼミであり、専攻は英語である。
英語だって、周りが上手い人ばっかりで、気後れしてしまう始末。
もう、入らなきゃ良かったかなっていう大学も、親の手前退学もできないし。
バイトに身をやつすも、三週間でクビになる。
陽キャのような、陰キャ。それが、加奈子。
一本の白いおうどんを見ていると、人生とはと悩む。
熱々のおうどんぐらい、食べやすいものであってくれよ。
夏海ははんなりと笑う。
「ほんま、姉さん。おうどんさっさと食べや」

8/4/2023, 10:09:49 AM

「つまらないことでもさ、やり続けてれば、意味はあるよ」
生徒会長は言った。
僕は、半信半疑に、つまらないことだと思ったけど、
「先輩、スポブラ透けてますよ」
と、答えた。
「バカっ!! もう本当に、慎之介ったら! もう、知らないっ! 私は真剣に考えてるのに、ホントにスケベなことばっかりよこすんだから。もう、お嫁に行けないじゃん!」
と言うので、僕はおどおどと付け加えた。
「あの、好きです」
「……」
しばらく、間があって。
「よくない」
むすっとして答える先輩は、多分わからないんだろうな。僕のこと、好きじゃなさそうだから。
本当は、丸美のことの方が好きなんだけど……。
って、言ってもいいだろうか。
どんな顔するだろうか。
その顔を見て、僕はどんな顔をすればいいんだろう。
「ほ、ほ、ほ、ほ……」
「なに?」
怪訝そうな顔をされる。
「なんでもないです」
僕はいつもそうだ。

8/3/2023, 10:19:59 AM

目が覚めるまでに、あなたのキスを必要とした。
硝子の棺で、眠っていたお姫様は、百年の呪いのくびきから放たれた。
私は私。私の名前は黒曜。
王子様の名前は翡翠。
黒い伏し目がちなまつ毛と、翠色の虹彩、そして天然のプラチナブロンドの艶やかな髪。
緑の衣装を纏ったあなたはこう言った。
「やっと逢えた。もう、二年も前から、君のことを夢に見ている。現実とは思えない」
翡翠の目には、熱い情熱の涙が浮かんでいた。
私は彼の手を取って言った。
「ようこそいらっしゃいました、王子様。もう眠り疲れてしまいましたわ。ふぁあ〜あ」
それを見て、翡翠は驚いたように目をまん丸にしていた。
「どうしたのかしら、私なにか失礼なことでも?」
「私は間違っていなかった!」
彼の顔は歓喜に震えていた。
「侍従たちと、相談をしていたのです。私はなんてあなたのことを、ズボラな姫だろうと思っていた。けれど、それは違った。あなたのそれは、多大な魔力放出のせいなのですねっ!?」
「ああ、えーっと。それがなにか?」
「なにかではありません。私はずっとお会いしたかった! 黒曜、あなたは、始まりの魔女だったのだ!」

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