NoName

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目が覚めるまでに、あなたのキスを必要とした。
硝子の棺で、眠っていたお姫様は、百年の呪いのくびきから放たれた。
私は私。私の名前は黒曜。
王子様の名前は翡翠。
黒い伏し目がちなまつ毛と、翠色の虹彩、そして天然のプラチナブロンドの艶やかな髪。
緑の衣装を纏ったあなたはこう言った。
「やっと逢えた。もう、二年も前から、君のことを夢に見ている。現実とは思えない」
翡翠の目には、熱い情熱の涙が浮かんでいた。
私は彼の手を取って言った。
「ようこそいらっしゃいました、王子様。もう眠り疲れてしまいましたわ。ふぁあ〜あ」
それを見て、翡翠は驚いたように目をまん丸にしていた。
「どうしたのかしら、私なにか失礼なことでも?」
「私は間違っていなかった!」
彼の顔は歓喜に震えていた。
「侍従たちと、相談をしていたのです。私はなんてあなたのことを、ズボラな姫だろうと思っていた。けれど、それは違った。あなたのそれは、多大な魔力放出のせいなのですねっ!?」
「ああ、えーっと。それがなにか?」
「なにかではありません。私はずっとお会いしたかった! 黒曜、あなたは、始まりの魔女だったのだ!」

8/3/2023, 10:19:59 AM