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ほくほくと、こたつの上で、鍋焼きうどんが煮たっている。
かまぼこ、たふたふのお揚げに、熱々の焼き豆腐。
土鍋いっぱいの、鍋焼きに手をつける二人の女子。
加奈子は、夏海の鼻の赤い顔を見ながら、今年も終わりだなと感じる。
除夜の鐘が聞こえる。
ゴーンゴーンゴーン。
ああ、今年はいい事はなかった。
彼氏にも振られたし、友達も出来たけど、すぐ別れた。
大学もうまくいってない。
単位が取れなきゃ、来年は留年だ。
なお、私の所属は、谷教授のゼミであり、専攻は英語である。
英語だって、周りが上手い人ばっかりで、気後れしてしまう始末。
もう、入らなきゃ良かったかなっていう大学も、親の手前退学もできないし。
バイトに身をやつすも、三週間でクビになる。
陽キャのような、陰キャ。それが、加奈子。
一本の白いおうどんを見ていると、人生とはと悩む。
熱々のおうどんぐらい、食べやすいものであってくれよ。
夏海ははんなりと笑う。
「ほんま、姉さん。おうどんさっさと食べや」

8/5/2023, 10:53:26 AM