誰もいない教室で、1人、掃除をする。
「昨日、掃除当番なのに、時間になっても来なかった。と報告が来ています。昨日掃除をしなかった代わりに、今日、1人で掃除してください」
昼休みに担任にそう言われ
「わかりました」
今に至るわけなんだけど。
「みんながいるときはわからないけど、教室って、結構広いんだな」
机と椅子を後ろに運び、前のスペースをほうきで掃く。サッサッサッという音が響き、1人でいる。という現実を、嫌と言うほど理解させられる。
「ま、急ぐ用事もないし、ゆっくりやるか」
と、のんびり掃除をしていると
「私も手伝うよ」
背後から声が聞こえた。
「あれ、どうしたの?」
振り向くと、そこにいたのは同じクラスの女子で。
「帰ったんじゃなかったの?」
掃除の手を止め、そう聞くと
「友だちと一緒に帰ってたよ。けど、その子から、今日の掃除はあなたが1人でやることになった。って聞いて…」
走って来てくれたのか、息を整えながらキミは答える。
「昨日、あなたが掃除しなかったのは、私のせいなのに…」
申し訳なさそうにされ
「キミのせいじゃないよ、気にしないで」
笑ってみせるけど
「ありがとう。そう言われても、私は気になっちゃう。だからね、手伝わせて」
キミは譲らない。
「わかった。じゃあ、悪いけどお願いするよ」
「うん」
昨日、掃除をしなかった理由。それは、廊下で倒れたキミを、保健室に運び、しばらく様子をみていたから。掃除をしなかったことは悪いことだけれど、倒れたキミを放っておく自分にならなくて良かった。と思ったのだった。
8月31日、午後5時 夏の忘れ物を探しに ページをめくる secret love 言い出せなかった「」 信号 です。
やっと今までのお題が書き終わりました。
毎日提出されているみなさん。本当にすごいし、尊敬します。
8月31日、午後5時
8月31日、午後5時。今僕はピンチを迎えていた。
「あと、何時間だ。何時間ある?」
時計をちらりと見るが、疲れた頭では答えが出ない。
「だから、計画的に。って言ったでしょ」
そう言われて怒られても、僕には手を動かすことしかできない。
「とにかく、やらなきゃ」
夏休み最後だというのに、終わっていない大量の宿題を机に積み上げ、僕は奮闘するのだった。
夏の忘れ物を探しに
「あぁー、海だー」
駐車場にバイクを停め、砂浜へ降りる。そして、裸足になると、海に足をつけた。
「お、気持ち良い」
暑さが和らぐ時間帯。思っていたよりも水は冷たく、気持ち良かった。
「…来て良かったな」
夏に毎年来ている海。今年は行ける時間がなく来れていなかった。行けないなら行けないで、それでもいいかと思っていたのに、何となく、心が落ち着かない。もしかしたら、海に行けていないことが気になっているのかも。そう思った俺は、夏の忘れ物を探しに海まで来たのだ。
「心が、落ち着いた」
やっぱり、落ち着かない原因はこれだったのか。心残りを解消し、キレイな海も見られて、満足した俺だった。
ページをめくる
ページをめくると、その日の思い出がよみがえる日記帳。毎日書かなきゃ。って義務化してる気がしないでもないけど、こうして後で振り返ったとき、楽しい思い出、悲しい思い出、悔しかった気持ち。いろいろ思い出される。
自分が忘れてしまう出来事も代わりに覚えていてくれる優れもの。これからも日記を忘れずに書こうと思うのだった。
secret love
あなたに視線を送ると、それに気付いて笑顔をくれる彼。
禁止にはされていないけど、誰にも話していない、彼との社内恋愛。
悪い事なんてしていないけど、いつか誰かにバレてしまうんじゃないか。
公にしていないことで、誰かが彼を好きになってしまうんじゃないか。
そんな不安もあるけれど、毎日ドキドキしながら、彼とのsecret loveを楽しんでいる。
言い出せなかった「」
久しぶりに実家に帰ると、これまた久しぶりに幼なじみに会った。
「お、久しぶりじゃん。元気だった?」
出かけようと玄関を出ると、キミは家に入るところのようだった。
「久しぶり。元気だったよ」
久しぶりに会ったこともあり、近況報告をし合っていると
「そう言えば、今日はどうしたの?」
と、キミに聞かれる。
「今度、仕事で必要になるものがあるんだけど、買わなくても実家にあるよな。って思って取りにきたんだ」
そう答え
「そっちは?」
と返すと
「付き合っている彼と結婚することになって。電話で報告しても良かったんだけど、直接言いたくて来たんだ」
キミは幸せそうに笑う。
「そっか。おめでとう」
「ありがとう…っと、そろそろ家に入るね」
キミは時間を確認し、申し訳なさそうに告げる。
「ああ、またな」
キミが家に入る姿を見送り
「結婚、するのか」
僕はそっとつぶやく。
関係を壊したくなくて、言い出せなかった「好き」の気持ち。いろんな思いが胸に渦巻く中、この気持ちをどう昇華させようかと、空を見上げて立ち尽くすのだった。
信号
校内を歩いていると、キミと誰かが、人影の少ない場所で話しているところに遭遇した。
「聞かれたくない話でもしてるのかな?」
と思いながら近づいていくと、僕に気付いたキミが、目をパチパチと動かしているのが見える。
「あ、もしかして…」
キミが出す信号の意味がわかり、小走りで近づくと
「こんなところにいたの?スマホに連絡入れたけど返事がないから探してたんだ。教授が呼んでるから行くよ」
キミの腕を取り、歩き出す。
「ありがとう、気付いてくれて助かったよ。呼び出されて告白されたんだけど、断っても、友だちになって。とかしつこくて、放してくれなくてさ」
キミは疲れたようにため息を吐く。
「キミからの信号だからね。ちゃんと気付くよ」
「うん」
キミはうれしそうに笑うけど、僕が出す
「キミが好き」
の信号に気付いてくれたらなぁ。と思うのだった。
ここにある 夏草 心の中の風景は ふたり です
残りも時間がかかっても書きます。
よろしくお願いします。
ここにある
「あ~、楽しかった」
出口から園内を振り返ると
「うん、楽しかったね」
隣に立つキミも、僕と同じように振り返る。
2人で初めて来た、話題になっている遊園地。閉園時間までたっぷり遊んで、帰るところなのだ。
「楽しかったけど、話題なだけあって混んでたね」
はぁ。とため息を吐くキミに
「そうだね。でも、それは仕方ない」
僕は苦笑いする。
「そのせいで、写真いっぱい撮りたかったのに、全然撮れなった」
ぷぅと頬を膨らませ、不満を露わにするキミに
「大丈夫。写真は撮ってないけど、今日の楽しかった思い出は、ここにあるでしょ」
自分の胸を指差し僕がそう言うと
「うん、そうだね」
キミは自分の胸に手を当て微笑む。
「じゃ、そろそろ帰ろうか」
僕がキミに手を差し出すと
「うん」
キミは僕の手をギュッと掴む。
手をつないだまま遊園地を、後にしたのだった。
夏草
ソファに腰掛け、窓の外に目をやると、夏草が風に揺れているのが見える。
「あら、いい風が吹いているのね」
そんなことを呟きながら紅茶を飲んでみるけれど、それは現実逃避をしているだけだと、きちんと理解している。
「こんなに大きくなるまで、放置していたなんて」
ギラギラと照りつける太陽の下、草取りをしなくてはならない。その逃げられない現実に、頭を抱えるのだった。
心の中の風景は
目を閉じると浮かんでくる、俺の心の中の風景は、ひまわり畑を背にキミが微笑んでいるところ。
病気療養のため、遠くに行ってしまったキミ。元気になって戻って来る。と約束してから2年の月日が流れたけれど、音沙汰はない。
「何年経ってもいい。またキミに会えるなら…」
キミに会えたら連れて行きたい場所。ひまわりのように明るく笑うキミを、ひまわり畑に…。
いつ叶うかわからない想い。その想いが叶うまできっと、目を閉じると同じ風景が浮かぶんだろうな。
ふたり
気付けばいつも、キミとふたりだった。
幼なじみ。なだけなのに、出かけるときは一緒だったし、隣にいる。それが普通だと思っていた。
その普通が揺らいだのは中学生になってから。
キミが告白されているのを見てからだった。
そのときキミは、断っていたけれど、僕と一緒にいるのは、普通でもないし、当たり前でもないと気づかされた。
当たり前じゃないなら、キミと一緒にいるにはどうしたらいいのか。
答えは簡単だけれど、僕のキミへの想いが、言葉にするなら何なのか。がわからない。
妹のような存在。なのか、好きな子。なのか。
でもきっと、告白されているのを見たとき胸が痛んだから、妹とは思っていないだろう。
これからもキミとふたりでいるために、僕は素直な気持ちをキミに告げる決意をしたのだった。
見知らぬ街 もう一歩だけ、素足のままで です。
書けた分だけですが、よろしくお願いします。
見知らぬ街
どこをどうやって歩いて来たのか、気付けば、見知らぬ街にいた。
「ここ、どこだろう?」
辺りを見渡すも、場所がわかるようなものはない。
「どうやって帰るかなぁ」
なんて思ってみたところで、ポケットを探れば、スマホがあるわけで。
「スマホがない時代は、人に聞いたりしてたのかな」
スマホを取り出し、現在地を調べようとしたけど
「やーっめた」
スマホをポケットに戻す。
「忙しいわけじゃないし、せっかくだから、のんびり散策でもしてみるか」
帰れる手段はあるから。と、見知らぬ街を散策することにしたのでした。
もう一歩だけ、
もう一歩、もう一歩だけ、その一歩分だけでも、キミに近づけたら、伸ばしたこの手は、キミに届いたのかな。
友だちとして仲が良い、僕とキミ。そう、どんなに仲が良くても、キミが好きでも友だち止まり。なぜなら、キミには彼がいるから。
だから、キミが彼のことで泣いていても、僕は友だちとしての対応しかできない。
そばにいて、大丈夫?と声をかけることしか…。
こんなとき、あともう一歩だけ、キミに近づけたら、優しく背中や髪を撫でることもできるのに。
僕とキミを隔てる見えない壁。その壁を壊したとき、僕たちは何か変わるのかな。
今はまだ手が届かないキミ。だけど僕は、手が届くまで諦めないと、キミの涙に誓うのだった。
素足のままで
素足のままで、アスファルトに触れてみる。
「うわっ、あっつ」
やけどしそうなくらい、アスファルトは焼けている。
「普段、履物を履いているから気付かなかった」
思っていたよりも、ひどい現状に
「気づかなくてごめんね。今度からは、朝早くと夜になってから、散歩は行くようにするね」
キミを抱きしめ謝ると
「ワン」
キミはうれしそうに、尻尾を振ったのでした。
君と飛び立つ Midnight Blue 遠雷 です。
書けた分だけですが、よろしくお願いします。
君と飛び立つ
君と飛び立つとしたら、どこに行こう?
どこへ?か。…そうだなぁ。俺たちを知る人がいないところへ。
でもそれって、淋しくない?
うーん、淋しくない。と言ったら嘘になりそうだけど、俺には君がいるから大丈夫。愛する君だけがいれば、淋しくても辛くても、やっていける。
そっか。あなたは強いね。
いやいや、俺は強くないでしょ。
え?
だって、俺には君がいないとダメなんだよ。君がいなかったら俺は、何もできやしない。君がいるなら、俺は強くなれるかも。いや、君のために強くなってみせるよ。
ありがとう。何だかやれそうな気がしてきた。
でしょ?俺たちなら大丈夫。お互いがいればね。
俺たちならどこに飛び立とうが大丈夫。何とかなる。そう強く思えたのだった。
Midnight Blue
「見てみて。Midnight Blueがどこまでもひろがってるよ」
両手を広げ、砂浜ではしゃぐキミ。俺は、キミと2人で深夜の海を見に来ていた。
「ホントだな」
闇のように深い青。夜空の星や月の輝きで、より一層、深い青に見える。まるで、闇に落ちてしまいそうなくらいに。
「あと数時間後には、ここで撮影だね」
「ああ」
ウェディングフォトを撮るため、お願いしたフォトスタジオの方たちより早めに来た俺たち。この日が来るのを楽しみにしていたからか、よく眠れず、外に出て来たのだ。
「…こんなに遅い時間はムリだろうけど、夜も撮りたいな」
夜空を見上げ、つぶやくキミ。
「そうだな、お願いしてみるか」
太陽に照らされ、ギラギラ輝くSea Blueと、月と星たちに静かに照らされ闇に支配されそうなMidnight Blueを背景に、撮る写真。どう写るのか、俺も見てみたくなった。
「ま、いつ撮っても、キミが1番輝いていることは間違いないだろうけど」
「え?」
恥ずかしいのか、両頬を押さえるキミ。そんなキミを微笑ましく思いながら、昼と夜の顔の違いを楽しみにする俺なのでした。
遠雷
遠くの方で鳴っている雷。遠雷を聞きながら、俺は彼女の家へ向かっていた。
「…なんとなく、だんだんと音が大きくなっているような…」
雷は、正直苦手な俺。できるなら、雷が鳴りそうな日に出かけたくはないのだが、具合が悪いという彼女のため、そうも言っていられない。
「ちょっと風邪気味なだけだから、心配しないでね」
電話口で彼女はそう言っていたけれど、それを知ってしまったら、居ても立ってもいられず、気がつけば、車に乗り込んでいた。
「あ、雨が降ってきた…」
苦手な雷の方に向かっているかも。と気付きながらも、彼女の身を案じ、車を走らせるのだった。