YOU

Open App

誰もいない教室で、1人、掃除をする。
「昨日、掃除当番なのに、時間になっても来なかった。と報告が来ています。昨日掃除をしなかった代わりに、今日、1人で掃除してください」
昼休みに担任にそう言われ
「わかりました」
今に至るわけなんだけど。
「みんながいるときはわからないけど、教室って、結構広いんだな」
机と椅子を後ろに運び、前のスペースをほうきで掃く。サッサッサッという音が響き、1人でいる。という現実を、嫌と言うほど理解させられる。
「ま、急ぐ用事もないし、ゆっくりやるか」
と、のんびり掃除をしていると
「私も手伝うよ」
背後から声が聞こえた。
「あれ、どうしたの?」
振り向くと、そこにいたのは同じクラスの女子で。
「帰ったんじゃなかったの?」
掃除の手を止め、そう聞くと
「友だちと一緒に帰ってたよ。けど、その子から、今日の掃除はあなたが1人でやることになった。って聞いて…」
走って来てくれたのか、息を整えながらキミは答える。
「昨日、あなたが掃除しなかったのは、私のせいなのに…」
申し訳なさそうにされ
「キミのせいじゃないよ、気にしないで」
笑ってみせるけど
「ありがとう。そう言われても、私は気になっちゃう。だからね、手伝わせて」
キミは譲らない。
「わかった。じゃあ、悪いけどお願いするよ」
「うん」
昨日、掃除をしなかった理由。それは、廊下で倒れたキミを、保健室に運び、しばらく様子をみていたから。掃除をしなかったことは悪いことだけれど、倒れたキミを放っておく自分にならなくて良かった。と思ったのだった。

9/7/2025, 8:58:14 AM