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8/14/2025, 9:14:51 AM

風を感じて やさしさなんて こぼれたアイスクリーム 真夏の記憶 言葉にならないもの です。

風を感じて

仕事が忙しく、たまの休みは寝てるか家のことをしていたんだけど、久しぶりに時間が取れたので、のんびりと散歩をすることにした。
「こんなにゆっくりできるのは、いつぶりかなぁ」
歩きながら伸びをすれば、室内にばかりいて光を浴びていない体も、気持ちまでもスッキリした気分になる。
「うーん、気持ち良い」
やわらかい風を感じて空を見上げれば、どこまでも広がる、青い空。
「…家に閉じこもってばかりって、心にも体にも良くないのかもな」
今度からは短い時間でも、外に出て自然を感じようと思うのだった。


やさしさなんて

「ダメだよ、やさしくしないで」
涙を手で拭いながら、キミは強い言葉で僕をけん制する。
「やさしさなんていらない。やさしくされたら、自分がダメになってしまうから」
顔を両手で覆い、キミは泣き続ける。
「そんなことには、ならないと思うよ」
僕はキミの頭をそっと抱き寄せ
「むしろ、キミの場合は、もっと甘えていいと思う」
そう言うと
「え?」
キミは僕を見上げる。
「今までキミは、誰にも甘えることなく、仕事に打ち込んできたでしょ。今回は、1人で頑張りすぎて起こってしまったミス。これからは僕たちを頼ってよ。それとも僕たちは頼りにならない?」
困った顔でキミに問いかけると
「ありがとう。これからは頼りにさせてもらうね」
涙の跡はそのままに、キミは微笑むのだった。


こぼれたアイスクリーム

「うわーん」
ショッピングモールに響き渡る泣き声。何事かと、声のする方へ行ってみると、泣いている男の子と、床にこぼれたアイスクリーム。
「どうしたの?」
男の子の視線に合わせ、話しかけてみると
「アイスクリーム、こぼしちゃって。でも、拭くもの、持ってない」
一度泣き止んだ瞳が、うるうるしてくる。
「大丈夫だよ、僕が持ってるから」
バッグからティッシュを取り出し、床を拭こうとすると
「僕がやる」
男の子はしゃがみ込み、僕からティッシュを取ると床を拭きはじめる。
「お兄さん、ありがとう」
拭き終わった男の子は、汚れたティッシュを手に持ちニコッと笑う。
「いいえ」
僕も男の子に笑顔を返すと、男の子は僕に手を振り、その場を離れる。
「結婚して子どもができたら、男の子みたいな子に育つといいな」
その前に相手を探さなきゃ。と苦笑いしながら、遠ざかる男の子の背中を見送ったのでした。


真夏の記憶

真夏になると思い出す、真夏の記憶。
それは…
小学生のときに行ったプール。あまりの人込みで、一緒にいた親とはぐれた時のこと。
大人にぶつかられ、持っていた浮き輪を離してしまい、溺れてしまったのだ。
そこで助けてくれたのが、監視員のお兄さん。
溺れた恐怖と、助かった安堵で泣いてしまった僕を、優しく落ち着かせてくれた。
そのときのお兄さんのようになりたい。そう思い、今僕はプールの監視員をしている。
僕の真夏の記憶は、良い思い出とは言えないけれど、僕の夢を作ってくれたのでした。


言葉にならないもの

「ねえ、私のこと、どれくらい好き?」
僕の目を見つめ、にこにこと笑いながら、よく聞くセリフを言うキミ。
「どれくらい。って、どう表現したらいいの?」
表現の仕方がわからず、キミに聞いてみると
「そうだなぁ。両腕をいっぱい広げたくらい…とか」
キミが聞いたのに、どうやら、的確な言葉はないらしい。
「僕がキミをどれくらい好きかというと…」
「うんうん」
「それは、言葉にならないもの。だね」
「ん?どういうこと?」
「どれくらい。って、言葉で表現するのは難しいよ。でも僕は、キミだけを愛してる。キミのことで頭も心もいっぱいになるくらいに。…こんな答えじゃダメかな」
そう言った僕の言葉に、キミは顔を真っ赤に染めるのだった。

8/9/2025, 7:52:50 AM

ぬるい炭酸と無口な君 ただいま、夏 泡になりたい またね 心の羅針盤 夢じゃない です。
最近のお題が難しく、余計に時間がかかりました。
お題に沿っていなかったら、すみません。
毎日、書いている方々。尊敬です。

ぬるい炭酸と無口な君

カランコロンと音を鳴らしながら、君と手を繋いで歩く。
「楽しみだね」
にこにこ笑う君に
「そうだね」
僕は笑みを返すけど、初めて履く下駄で転ばないように。と、少し緊張しながら、神社へ向かっていた。
「今年も賑わってるね」
神社に着くと、すでにたくさんの人が、屋台の物を食べたりしながらそれぞれに楽しんでいた。
「今年は何から食べる?」
「そうだなぁ…」
毎年来ている神社のお祭り。近くで花火が上がることもあり、多くの人で賑わっている。
「うん、美味しい」
最初に食べているのは焼きとうもろこし。外で食べている。ということもあるのか、いつもより甘く美味しく感じられた。
「今年はこれだから、いっぱい食べられなかったりして」
「いやいや、そんなことはないでしょ」
焼きとうもろこしを食べ終え、屋台を見て回る。今年は初めて、2人とも浴衣を着て来たので、帯でお腹が苦しくならないかと心配していた。
「そろそろ花火の時間だね」
「そうだね。移動しようか」
屋台の物をいろいろ食べお腹も満たされた頃、花火を見るため、毎年見ている場所へ移動する。
「足元気をつけてね」
食べているときに買った飲み物、飲みかけの炭酸を2つ持ち、いつもの場所へ歩みを進めるが、いつもとは違う下駄での移動。ゆっくり慎重に歩いていった。
「良かった。今年も私たちだけだね」
毎年花火を見ている場所に着くと、その場にいるのは僕たちだけ。
「他の人たちが知らない、まさに穴場だね」
レジャーシートを敷き、そこに座る。
「早く始まらないかな」
他愛もない話をしていると、夜空に大きな花が咲き始める。
「わー、キレイ」
次々と上がる花火を見たり、スマホを向けたりしながら、君は花火を楽しんでいる。
「来年もまた来たいな」
花火に夢中になって、飲まずにいたぬるい炭酸と無口な君。
花火を横目に、夜空を見上げる君の横顔を眺めながら、楽しい時間を満喫したのだった。


ただいま、夏

「うわっ、暑っ」
電車を降りると、肌を刺すような暑さに襲われる。
「こっちはこんなに暑いんだな」
本格的に暑くなる前に、早めの夏休みと称して避暑地に行っていたので、最寄りの駅に着いた今、暑さに驚いていた。
「でも、この辺の夏は、毎年これくらいの暑さだよな」
ハハッと自嘲気味に笑いながら
「ただいま、夏。って感じだな」
青く広がる空を見上げたのだった。


泡になりたい

何て言ってあげたら良いんだろう。こんなとき、何て言ってあげたら…。
「大丈夫?」
ベンチに並んで座り、止まらない涙を流すキミに、僕は何をしてあげられるだろう。そう自問自答しながら、泣いているキミの背中を、僕はそっと撫でていた。
「…泡になりたい」
「え?」
「泡になって、消えてしまいたい」
キミには、周りから見て、付き合ってるんじゃないか。と思われるほど仲の良い男性がいた。その男性が好きだったこともあり告白したら、振られてしまったそうで、今、こんな状態になっている。
「お願いだから、そんなこと言わないで」
僕はキミの肩をそっと抱き寄せる。
「キミが消えてしまったら、悲しむ人はたくさんいる。…僕もその1人だよ」
「え?」
僕の言葉に顔を上げたキミ。涙の跡が痛々しく感じられ
「僕ならこんな風に、キミを泣かせたりしないのに」
キミの頬に手を添えると、涙の跡を消すように撫でてしまう。
「僕もそうだけど、キミを大切に想う人は必ずいるよ。だから、そんなこと言わないで」
「…ありがとう」
微かに笑みを見せてくれたキミ。こんなときに僕の想いをきちんと伝えることはしたくない。
けれど、これ以上悲しい思いはさせないように、キミに選んでもらえるように、アピールしていくことを決めたのだった。


またね

「またね」
そう言って別々の道を進んだ友だち。みんな元気にしているかな。
そのことを気にしている暇がないほど、仕事に追われていた僕のところに届いた、クラス会のお知らせ。みんなに会いたい気持ちが一気に膨らみ、参加することを決め、出席。で返信することにした。
「良いきっかけをくれたよな」
みんなと仲が悪かったわけではないが、今まで誰かに連絡したことはない。
「これを機に、みんなと連絡を取り合おうかな」
学生時代の楽しい日々を思い出し、クラス会に向けて、ワクワクが止まらないのだった。

心の羅針盤

「うーん、どうしようかな」
人生の長い道を歩いて行く中で、時折、迷うときがある。進むか止まって考えるか、右に行くか左に行くか。
「やりたいと思うならやったらいいよ」
「それをするにはリスクが大きいよ。止めた方がいいって」
いろんな人にアドバイスを求めるも、返ってくる答えはさまざま。どれを選べばいいのか、困ったなぁ。…と思ったときは、心の羅針盤に従って進むことにしている。
アドバイスはアドバイスで有り難く受け取り、迷っても、自分で決めた道を進む。その方が、失敗しても後悔しても、選んだのは自分だから自分の責任だ。と言えるから。
だから僕はこれからも、心の羅針盤に従って歩いて行こうと思う。


夢じゃない

「え…今、何て言ったの?」
キミがくれた返事に、僕は耳を疑った。
だって、そんなことあり得ないと思ったから。
「だからね…」
僕が聞き返したことを気にする様子もなく
「私も、あなたが好き。って言ったの」
と、微笑んで答えてくれる。
「…夢じゃないんだ」
軽く頬をつねってみても、感じるのは痛みだけ。
「夢なんかじゃないよ。それとも、私の言葉が信じられない?」
唇を尖らせ、キミは僕を軽く睨む。
「…想いが通じるとは思ってなかったから。ありがとう、信じるよ」
「うん」
キミの笑顔に、これは現実だと確信する。
「でも、これからあなたが疑ったりしないように、イヤでもわからせてあげる」
「え?」
そう言うと、キミは僕の手をギュッと掴む。
「ね、わかったでしょ」
にこにこ笑うキミの手のぬくもりに
「うん、わかった」
イヤでも理解させられる。
想いが通じたキセキのような現実を手放さないように、これからもっとキミを、大切にしようと思うのだった。

8/5/2025, 9:59:19 AM

眩しくて 8月、君に会いたい 波にさらわれた手紙
書けた分だけですが、よろしくお願いします。

眩しくて

「…ん」
目が覚め、サッーという音が聞こえたと思ったら、閉じた瞼が明るく照らされる。
「うん?」
眩しくて、腕で光を遮ると
「おはよう、起きて」
優しい声が聞こえる。
「え?あ、おはよう」
その声にそっと瞼を上げると、微笑む妻の顔が見えた。
「ごはん出来てるよ、早く来てね」
「ありがとう」
僕が起きたのを確認し、妻は寝室を出ていく。
「…行くか」
毎朝、愛しい妻の顔が見れて幸せだなぁ。と、一緒にいれることを嬉しく思いながら、僕も寝室を後にするのだった。


8月、君に会いたい

愛している君と、ずっと一緒にいられる。
そう信じていたのに、君は僕の前からいなくなってしまった。
泣いて泣いて、それでも信じられなくて、何も手につかなくなったりもしたけれど、いつまでもこのままじゃ…。と、気持ちを奮い立たせ、僕は涙は封印した。
「お盆は、あの世で過ごす人たちが、この世に戻って来る」
そう聞いて、僕は、その日が来るのを、今か今かと待っている。
「8月、君に会いたい」
会えることを願いながら。


波にさらわれた手紙

砂浜で、キミから届いた手紙を読んでいる。
なぜこんなところで読んでいるのかと言えば、単に、手紙の内容を確認していただけだったのだけれど…。
「頼まれたことだし、やるかな」
頼まれたこと、それは…。手紙に包まれていた貝殻を、手紙ごと海に流してほしい。というもの。
「彼と別れたから思い出の品を処分しようと思ったの。けど、一緒に拾った貝殻は、捨てるより、拾った海に返したくて。でも、拾った海は遠くて行けそうにない。だからお願い。代わりに返して来て」
仲の良い友だちからの頼み。貝殻を包んだ手紙をそっと海に流す。
「確かに返したよ」
一応、証拠に。と写真を撮ると、貝殻は海に沈んでしまったのか、手紙が水面に浮かんでくる。そして、波にさらわれた手紙は少しずつ溶けていき、はかなく消えていく様を
「…恋心って、こんな風に消えていくものなのかな」
僕は静かに見ていたのでした。

7/31/2025, 9:55:34 AM

涙の跡 オアシス 虹のはじまりを探して タイミング 熱い鼓動 です。

涙の跡

「結婚してください」
キミにそう告げると
「…はい」
キミは涙を流す。
「ありがとう」
流れるキミの涙を拭おうと、キミの頬に手を伸ばすと
「そのままにして」
伸ばした手をキミに掴まれてしまう。
「…どうして?」
想いを受け入れてくれたはず。なのに、拒絶されたようで呆然としていると
「悲しい涙は残したくないけど、嬉しい涙は、跡にして残しておきたいの。だから、このままにして」
涙の跡はそのままにして微笑むキミを、僕は強く抱きしめたのだった。


オアシス

「あーあ、もうこんな時間か」
自分の周り以外、電気の点いていないオフィスで伸びをする。
「もうちょっとで終わるけど、休憩しようかな」
一息入れようとオフィスを出て、自販機で飲み物を飲んでいると
「あれ?まだいたのか?」
部長に声を掛けられた。
「お疲れさまです。明日の朝提出の書類がまだ終わらなくて」
あはは。と笑うと
「そうなの?俺、手伝えることある?」
と、聞かれる。
「ありがとうございます。あと少しで終わるので大丈夫です」
「そう?なら、終わるまで待ってるよ」
「いえ、部長は出張帰りでお疲れですよね?お先にどうぞ」
待たせるのは申し訳なく、断ると
「邪魔じゃなければ、待たせてよ。こんな時間に女性が1人で歩くのは危ないし」
ニコッと微笑まれる。
「…ありがとう、ございます」
心配してもらえたことが嬉しくて思わず俯くと
「いつも頑張ってくれてありがとう」
優しく髪を撫でられる。
「え?」
撫でられたことに驚いて顔を上げると
「あっ、ごめん」
慌てたように部長は手を引っ込める。
「いえ、あの、また、髪、撫でてもらえませんか?」
「は?」
私の反応に部長は目をぱちくりさせるけれど
「部長に髪を撫でられたら、疲れがスッと飛んでいきました。部長は私の、心のオアシスみたいです」
それに気付かないふりをして、思ったことを口にすると
「べ、別にかまわないけど」
あたふたしながらも、部長は私の願いを受け入れてくれるようだ。
「ありがとうございます」
撫でてくれた部長には、深い意味はなかったと思う。けれど、部長に片思いしている私にとっては、部長への想いも、仕事へのやる気も一気に上がり、残業してて良かった。とさえ思えたのでした。


虹のはじまりを探して

虹のはじまりを探して、自転車を走らせる。
辿り着く前に消えてしまうかもしれない。いや、その可能性は高いとわかっていながらも、走ることはやめられない。
「あー今日もダメだったか」
虹が消え、道の端に自転車を停め、息を整える。呼吸が荒くなるくらいの全速力で自転車を漕いでも、虹のはじまりを見つけられなかった。
「でも、まだ諦めねえ」
何をやっても続かない俺。
「虹のはじまりってどこなんだろう?見てみたいよね」
こんな俺みたいな奴にも優しくしてくれたキミが言ったその言葉。キミに、虹のはじまりの写真を撮って見せたくて俺は走り続ける。
「もし見せてあげられたら、キミは笑ってくれるかな」
仕事が忙しくて。と嘆いていたキミを笑顔にしたくて、続けられない俺が、虹を見つけてははじまりを探す。ということを、今日も続けているのだった。


タイミング

彼女と付き合い始めて3ヶ月。友人は、まだ早い。と言うけれど、俺は彼女と結婚したかった。
「なあ、お前はどう思う?」
俺の、小さい頃からの親友。彼を呼び出し、話を聞いてもらっていた。
「ん?お前が結婚したいと思うなら、したら良いんじゃね?」
向かいでパスタを口に入れながら、彼は答える。
「でも、他の奴らは、まだ早いって…」
俺の言葉に、彼は持っていたフォークを置くと
「お前さ、何でそいつらの言葉に従ってんの?」
俺を軽く睨みつける。
「え?」
「他の奴らの言葉は、ただの意見だ。もちろん、参考にしても良い。けど、大切なのはお前の気持ちだろ?結婚したいと思うなら、今がそのタイミング。彼女が受け入れてくれるかはわからないが、お前の気持ちは伝えた方が良い。と、俺は思う」
「あ…」
彼の言葉にハッとした俺に
「ほら、早く行って来な」
彼は微笑む。
「ありがとう。行って来るわ」
「おう」
彼の言葉に背中を押され、俺は彼女の家へと向かうのだった。


熱い鼓動

「あ~どうしよう。緊張する」
今日はキミとの初デート。想いが通じただけで幸せなのに、今日はキミと2人きり。デートの誘いをキミが受け入れてくれたときから、今日までドキドキが止まらなかったけど、キミを待っている今が、1番ドキドキしている。
「ごめんね、待った?」
キミを待つこと数分。キミが笑顔で近づいてくるその姿を見つめながら、平静を装うため、熱い鼓動をぐっと抑えるのだった。

7/26/2025, 9:30:27 AM

星を追いかけて またいつか True Love もしも過去へと行けるなら 半袖 です。
読み返しはしていないので、変な文章になっていたらすみません。


星を追いかけて

「…やっぱり、ムリなのかな」
自分のやりたいこと。あこがれの職業。その夢に向かって夢中で追いかけているけど、遠ざかる気しかしないし、手が届かない。
「…諦めが肝心…か」
はぁ。とため息を吐いたとき
「あれ?久しぶりじゃん」
後ろから肩を叩かれる。
「え?…久しぶりだね」
振り向いた僕の目に映ったのは、仲良くしていた同級生で。
「で、何かあったのか?」
彼は、会うのが久しぶりにもかかわらず、あの頃のように話しかけてくる。
「…どうして?」
落ち込んでいることを悟られ、ドキッとしながらも落ち着いて返事を返すと
「どうして。って、俯いて、とぼとぼ歩いてただろ」
苦笑いされる。
「そう、だったんだ。気づかなかったな」
ハハッと笑ってみせるけど、気を抜くとため息が出てしまう。
「で?」
「ああ、うん。…今でも夢を追いかけてるんだけど、上手く、いかなくて…」
情けなさに、込み上げてきそうな涙を、唇を噛んで耐えると
「そっかあ。けど、諦めずに追いかけるなんて、お前、やっぱすげえわ」
ニッと笑いながら、彼は、僕の肩をバシバシ叩く。
「ちょっ、痛いって」
「お前の夢はさ、年齢関係なく掴める夢じゃん。だから、焦らず追いかけろよ。んで、勝利という名の星を掴むために、どこまでも、星を追いかけて行け」
彼に励まされ
「…ありがとう。元気、出たわ」
また頑張ろうと思えた。
「そっかそっか。なら、久しぶりだし、どっかで話でもすっか」
「いいね。そうしよ」
あの頃と同じように、僕たちは肩を並べて歩くのだった。



またいつか

「またいつか」
「ああ、またな」
お互いに片手を挙げ、別々の道を歩く。
数年前に出向で、今は出張で来ている場所。
「たまに見かけるが、あんた、この辺の人か?」
出向に来たとき、週一で通っていたバー。そこで彼に話しかけられた。
「ここには出向で来てる。あと少しでその期間も終わるがな」
「そうか。あんたが1人なら、隣いいかい?俺は1人だから話し相手がほしくてね」
「ああ、かまわないよ」
それから、ここが地元だということ以外、何も知らない彼と一緒に飲むようになった。けれど、時間を合わせてここに来る約束をするわけでもなく、偶然会えたら飲むか。くらいな関係。けれどそれが、気付けば楽しい時間になっていた。
「今日で出張は終わりなんだ。会えて良かったよ」
「そうか。また来たときは、一緒に飲もうな」
「ああ。約束だ」
乗り気ではなかった、出向で来た場所。それも、彼のおかげで、憂鬱な気持ちはなくなり、むしろ楽しみになった。お互いに詳しいことは知らない間柄だけれど、こんな付き合いも悪くない。と思うのだった。


True Love

「…別れようか」
ため息を漏らしつつ、彼女に告げると
「え、何で?イヤだよ」
と、縋りつかれる。
「そうだよね。俺と別れたら、金づるがいなくなるもんね」
ギロリと彼女を睨みつければ
「え…」
彼女は顔を青くする。
「俺の金があれば、人生はイージーモードなんだろ?そんな奴を逃がしたら、散財できなくなるもんな」
ハッと乾いた笑いを浮かべれば、彼女は何も言えなくなって俯く。
「わかったら、さっさと出て行ってくれ」
俺の冷たい声が恐かったのか、彼女は抵抗することなく出て行った。
「はぁ。恋愛って難しいな」
1人になった部屋で、ソファに座り、俺は天井を見上げる。
「両親たちみたいなTrue Loveは、俺には探せないのかね」
仲睦まじい両親。2人の間には、愛以外の想いは見当たらない。
「俺もいつか探せるといいな。真実の愛を」
思ったよりすんなり別れられて良かった。と安堵しながら目を閉じたのだった。


もしも過去へと行けるなら

もしも過去へと行けるなら、やり直したい場面はいくつかある。
あのときああしてれば、しなければ。ってことが。
でも、それがあったからこその今日だから、後悔はあったとしても、良かったんだと思う。
後悔のない人生を送ることは難しいけれど、それがあったからこその今を大切にしたいと思う。


半袖

「ねえ、これどうかな?」
キミと一緒に来た買い物。本格的に暑くなる前に、夏物を買いに来た。
「いいんじゃないかな。キミに良く似合うよ」
「ホント。じゃあ、これにする」
キミはうれしそうに笑い、手にした半袖のシャツを胸に抱きしめている。
「………」
けど僕は少し不安だった。その服を着たキミは、さらにかわいくなるのは目に見えている。
「次はあっち見ようよ」
キミに手を引かれ、別の場面に移動しながら、早く気持ちを伝えなきゃ。と焦る僕だった。

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