そよそよと吹く、風が運ぶもの。
揺らした木々の葉。
たんぽぽの綿毛。
舞い落ちる桜の花びら。
ふわりと舞う雪。
鼻腔をくすぐる、いい香り。
そして、
「遅れてごめんね」
僕を見つけたキミの、少し大きめの声。
風は、僕にいろいろなものを運び、届けてくれる。
約束 と question です
約束
どんなに遅くなってしまっても、どれだけお題が難しくても、きちんと考え提出する。
それが、自分で自分にした約束。
今のところ守られているこの約束。
これからも守れるように頑張ります。
question
「突然ですが、ここであなたにquestion」
キミとデートし、まだ明るい時間ではあるけれど、用事があるため帰ろうとしたら、キミが少し大きな声を出す。
「え、何?」
目をぱちくりさせながらキミを見ると
「わ、わ、私の、どこが好きですか?」
うつむき加減で耳を赤くし、キミはそう言う。
「え?…ええっと…」
戸惑いながらもちゃんと答えなきゃと考え込んでいると
「あの、もしかして、好きなところ、ない…とか…」
キミの悲しそうな声が聞こえる。
「え、違うよ違う。考えてただけだから」
慌てて言った僕の言葉に
「考えないと出てこないくらい、好きなところがないの?」
キミは泣きそうな顔をする。
「違うよ、そうじゃなくて」
僕はキミを抱き寄せ
「キミのこと、気づいたら好きになってたんだ。だから、具体的にどこ?って言われると全部としか言えなくて…」
ちゃんと言えなくてシュンとすると
「ありがとう。大好き」
キミはうれしそうに笑って、僕にキスをくれたのでした。
あの日の温もり 芽吹きのとき 誰かしら? ひらり です。
遅れましたが、これからも頑張ります。
あの日の温もり
「ニャー」
僕が家にいると、僕の体にピタリとくっついてくる、我が家のかわいい猫。
家の中を移動するとあとをついてくる、ホントにかわいい子だけれど、僕に懐くまで大変だった。
近づけば逃げて行くし、撫でようとするとシャーと怒る。
それでも仲良くなりたくて、諦めず、根気良く接していたら、だんだん気を許してくれ、ついには、抱っこすることができた。
この先、何度抱っこしたとしても、初めて抱っこできたあの日の温もりは、忘れることはないだろう。
芽吹きのとき
「はぁ〜、ダルい」
日中も寒い、2月中旬。こたつに入り、ダラダラしていると
「ホントに寒いね。もう動きたくないよ」
洗濯物を終えたキミが、こたつに入ってくる。
「早く温かくなってほしいね」
こたつにうつ伏せになり、ため息を吐くと
「そうだね。でも今頃って、草木が芽を出す芽吹きのときでしょ?温かくなるまでもう少しなんじゃない?」
もうちょっとの我慢だね。と、キミは笑う。
「芽吹きのとき…か。じゃあ僕たちも温かくなるときに備えて、今は充電期間。ってことで、のんびりしようか」
「うん、そうしよう」
キミと一緒に、こたつでのんびりと過ごすのだった。
誰かしら?
「ピンポーン」
チャイムが鳴り
「誰かしら?」
と、玄関のドアを開けると
「こんにちは」
訪ねて来たのはお隣さんで。
「いただきものなんですが、お裾分けに」
「ありがとうございます。ごちそうさまです」
有り難く、差し出された箱を受け取り、ドアを閉める。
「何だろう?」
部屋に戻り、受け取った箱を開けてみると
「あ、桜餅」
顔を出したのは、鮮やかなピンク色の桜餅。
「うれしい。早速いただいちゃおう」
箱をテーブルに置き、ウキウキ気分でお茶を用意する。
「ん、美味しい」
お隣さんに春を分けてもらい、笑顔の花が咲いたのでした。
ひらり
ひらりひらりと空を舞う桜の花びら。
そよ風に吹かれ、風と遊んでいるかのように、あちこちに舞っては地上へ降りていく。
「…キレイ」
桜の木を見上げ、風に揺れる木々を見つめる。
「葉桜になってしまう前に、ゆっくり見に来たいな」
仕事に向かう途中、もらった少しの癒し。
今度はゆっくり見に来ると決め、名残惜しい気持ちを風に溶かし、仕事に向かうのだった。
記録 と cute! です
記録
「写真撮るの、好きなんだね」
キミとのデート中、スマホで写真を撮っていると、キミにそう言われる。
「ああ、ごめんね。1人にしちゃって」
スマホからキミに視線を移し謝ると
「私もスマホ見てたし大丈夫だよ」
キミが笑ってくれたので、僕はホッと胸を撫で下ろした。
「デートの時、いつもいっぱい写真撮ってるような気がするけど、珍しいものとかあった?」
どこに行っても、僕がスマホを構えているせいだろう。不思議そうな顔をされ
「珍しい。ってものは、特にないかな。じゃあ何で写真を撮っているのかというと…僕はね、記憶力が良くないんだ。だから、少しでもキミとの大切な時間を残しておきたくて、記録として写真を撮っているんだよ」
素直に理由を話すと
「そっか。私との思い出を大切にしてくれてありがとう」
キミに微笑まれる。
「今度、あなたが撮った写真、見せてね」
「うん」
これからも僕は、キミとの大切な時間を、たくさん残そうと思うのだった。
cute!
「ああもう、なんでこんなにcuteなの」
いつでも僕のそばにいて、僕の腕をキュッと掴んだり、首を傾げ、cuteな目で、僕をじっと見る。ああ、まさに、僕の愛するキミには、very cute!という言葉がふさわしい。
「キミという天使を迎えられて、僕は幸せだよ。これからもずっと、そばにいてね」
僕のひざの上で眠る、cuteな子猫を、僕はそっと撫でるのだった。
必要な物を取りに、実家に帰ったときのこと。
「えっと…あった、これだ」
探し物はすぐに見つかり、机の引き出しから取り出そうと持ち上げると、その下に、1枚の写真があった。
「…何でこんなところに?」
その写真を手に取り見てみると
「懐かしいな」
写真は、子供の頃の僕で、友達と写ったものだった。
「この写真って、みんなで遊んだときのだよな。自分たちよりも背の高い草の中を、さぁ冒険だ。って進んで行って。でも、見えるのは草だけで、どこをどう進めばいいかわからなくて、右に行ったり左に行ったり、止まって話し合ったり。無事に草の中から出られたときは、ホッとしたんだよな」
写真を見ながら当時を思い出し、思わず苦笑する。
「あ、でもこれって…」
今の僕みたいだ。仕事が上手くいかなくて、どうしたらいいか、先が見えなくて動けずにいる。
「あの時、迷いながらも草の中から出られたように、きっと今も…」
焦って動かなくても大丈夫。友達に相談したり、結論は急がなくてもいいんだ。そんな気がしてくる。
「ここに来たのは偶然じゃないのかも」
心が軽くなったのを感じ、家へと戻るのだった。