きらめく街並み
イルミネーションがきらめく街並みを、キミと2人で歩く。
「思ったより、寒くなくて良かった」
バーで飲み、酔いざましに歩くか。と店を出たが、お酒を飲んでいることもあり、吐く息は少し白くても、寒くはなかった。
「そうだね」
のんびりと駅に向かって歩いていると、一段とキラキラした光が見えてくる。
「あ、ツリーだ」
クリスマスツリーに気付いたキミは、小走りに駆けていく。
「走ると危ないぞ」
昨日まではなかったツリー。まばゆい光が闇夜を照らしている。
「そっか。クリスマスまでもうすぐか」
ゆっくりとキミの後を追いながら、同僚であるキミとの関係を、一歩進めるためのプレゼントを考えるのだった。
秘密の手紙
「ん?」
リビングで本を読んでいると、何かの音が聞こえる。
「何だろう?」
音がする部屋に行ってみると、キミが引き出しをガチャガチャ動かしていた。
「どうかしたの?」
声をかけると
「この引き出し、開かなくて。何かつっかえてるのかな」
キミは困った顔をする。
「あー…そうなんだ。俺が見てみるよ。引き出しの中に、何かあるの?」
「今年届いた年賀状。それを見て、年賀状を書こうと思ったの」
「そっか。そろそろ書かないとだよね」
じゃあ、お願いね。そう言って、キミが部屋を出るのを見届けると、俺は、別の引き出しに隠してある鍵を取り出した。
「鍵かけといて良かった」
鍵穴が、正面ではなく、側面にある珍しいデスク。開けようとした引き出しの中には、クリスマス用のプレゼントが入っていた。
「別の場所に移すか」
プレゼントを取り出すと、キミに書いた手紙がひらりと落ちる。
「おっと」
落ちた手紙を拾うと、プレゼントと一緒にしまう。
普段言わないキミへの想い。俺の想いが詰まった秘密の手紙。その手紙をキミが読むのを、今から楽しみにしているのだった。
落ち葉の道 時を紡ぐ糸 心の深呼吸 霜降る朝 失われた響き 君と紡ぐ物語 凍てつく星空 贈り物の中身 冬の足音 です。
落ち葉の道
天気の良い休日。運動不足解消も兼ねて、キミと歩いて近くの店に買い物に行くことにした。
「歩いてるから寒さは感じないけど、風が少し冷たいね」
「そうだね。冬が近づいてるんだね」
店までの道を、のんびり歩いていると
「見てみて。落ち葉の道ができてる」
キミが指差す方向に目を向けると、落ち葉が歩道に敷き詰められていた。
「せっかくだし、落ち葉の道歩こうよ。落ち葉の音、今の時期しか聞けないし」
「わかった。じゃあ、そっちから行こう」
今歩いている道から落ち葉の道に移動し、落ち葉の道を歩き始める。
「ガサガサの大合唱だね」
落ち葉の音を聞きながら、楽しい気持ちで店に向かうのだった。
時を繋ぐ糸
いつも乗る電車にいるキミ。
乗るのは僕の方が後だけど、同じ車両に乗り、降りるのは同じ駅。
「気になってはいるんだけど、声をかけたら、変な人だと思われるかな」
他の乗客とは違い、立っていても座っていても本を読んでいるキミ。キミ自身にも、何を読んでいるのかも気になっていた。
「よし、声をかけてみよう」
毎日、声をかけるかやめるかを自問自答してきた。ずっと悩んでいるくらいなら、声をかけよう。そう思い
「何の本を読んでいるんですか?」
思い切って声をかけると
「推理小説です。この作家さん、大好きで」
と、ブックカバーを外し表紙を見せてくれる。
「そうなんですね。どんなところが好きなんですか?」
声をかけたことで話が盛り上がり、電車を降りるまで楽しく会話できた。
「突然声をかけてすみませんでした。前から気になっていて」
電車を降り、改札まで歩きながらそう言うと
「いえ。大好きな作家さんを他の人にも知ってほしくて、聞かれたら答えることにしてるんです」
ニコニコ笑う。
「今度読んでみたいので、おすすめのタイトルを教えていただけますか?」
「もちろんです」
時を繋ぐ糸に導かれ、出会ったキミとの縁。大切に育めれば。と思うのだった。
心の深呼吸
「なんで、うまくいかないんだ」
何度も、書いては消し、書いては消しを繰り返す。
上司に任された仕事。書いた企画書をチェックしてもらうけど、良い返事がもらえない。
「どうしたら…」
考えても答えが出ず頭を抱えていると、ポンと肩を叩かれる、
「ん?」
振り向くと、企画をチェックしてくれている上司が立っていた。
「す、すみません。良い案が浮かばなくて」
姿勢を正し、上司に頭を下げると
「そんなに思い詰めないで、心の深呼吸をしてごらん」
企画書をチェックしているときとは違い、優しい声で言われる。
「心の深呼吸…ですか?」
「そう。肩肘張らずに心の深呼吸してリラックスしてから考えてごらん。大丈夫、君ならできる。できるとわかっているから、君に頼んだんだから」
にこっと笑われ
「ありがとうございます」
肩の力が抜けたのを感じる。
それからの僕は、仕事に行き詰まるとこのときの上司の言葉を思い出し、リラックスして仕事に臨むことができるようになったのでした。
霜降る朝
「はー、寒い」
目が覚め、リビングに行くと、凍えるような寒さが待っていた。
「すっごい冷え込んでる」
急いで暖房のスイッチを入れ、温風が出てくるのを待つ。
「こんなとき、1人じゃなかったら、もう少し温かい気持ちになるのかな」
心まで凍えそうな霜降る朝。早く彼女がほしいなぁ。とため息を吐いたのだった。
失われた響き
「ガシャーン」
部屋中に、大きな音が響き渡る。
「何だ、何の音だ?」
急いで音がした方に向かうと
「あ…」
戸棚に置いていたオルゴールが床に落ち、破片がちらばっていた。
「あぁー」
落としたと思われる猫は、素知らぬ顔で顔を洗っている。
「あーあ」
ため息を吐きながら、壊れたオルゴールを片付けると猫を抱き上げる。
「ケガしなかった?」
足を丹念に調べるも、破片は刺さっていない。
「ま、あんなとこに置いた自分も悪いしね」
オルゴールが壊れたことで失われた響き。愛する猫のかわいい響きまで失わなくて良かった。と思うのだった。
君と紡ぐ物語
「おめでとう」
親しい人たちに囲まれ、笑顔があふれる結婚式。
「幸せになろうね」
「うん」
もちろん、主役である僕たちも、幸せで満たされ、笑顔の花が咲いている。
ここから始まる、君と紡ぐ物語。幸せで楽しいことばかりじゃないだろう。けど、先のことを心配するより、今は、2人きりの生活を全力で楽しもうと思うのだった。
凍てつく星空
キミと一緒に、凍てつく星空を眺める。
「寒いねー」
「吐く息が真っ白だよ」
厚着をしていても寒さが身に沁みる。それでも星空を見上げるのは、流星群が見れると聞いたから。
「楽しみだね」
「だねー」
流星が流れ始めるまで、少しでも寒さを凌げるよう、キミの手を握ったのだった。
贈り物の中身
単身赴任している僕のところに、キミから届いた贈り物。
「何だろう?」
紙袋を開けると、入っていたのはマフラーと手袋。それと、手紙で。
「手紙?」
手紙を開くと
「こっちと違って、あなたがいるところは、これから寒くなるでしょ?風邪を引かないように使ってください」
そう書いてあった。
「…有り難いな」
キミから届いた贈り物の中身。
それは、僕を気遣う優しさで溢れていたのでした。
冬の足音
12月に近づくにつれ、聞こえてくる冬の足音。
吹いてくる風が冷たくなったり、木々の葉がキレイに色づいたり、いろいろと感じられる。
「寒いのはイヤだな」
冬の楽しみが、ないことはないけれど、でも、やっぱり寒いのは…。
「…春、早く来ないかな」
冬の足音を感じながら、春の訪れを首を長くして待つのだった。
手放した時間 君が隠した鍵 です。
手放した時間
「キミに、いろんな物をプレゼントしたい」
初めて彼女ができた。
キミに喜んでほしくて、残業して仕事を頑張って、キミに似合いそうなアクセサリー、お花、豪華なディナー。いろいろプレゼントした。
でも
「プレゼントありがとう。けど私は、ステキなプレゼントより、あなたと少しでも長く過ごす時間がほしいな」
キミにそう言われ、ハッとする。
それからの僕は、仕事量を減らし、キミと過ごす時間を大切にした。
僕が手放した時間。
その時間は、僕とキミの笑顔を増やしたのでした。
君が隠した鍵
「あははは」
毎日恒例。と言っても過言じゃないほど、君はクラスの友だちと、楽しそうに笑っている。
けど、1人でいる、ふとした瞬間、君が暗い顔をしていたのを僕は見た。
いつも笑顔でいる。という、君の印象が揺らいだから、その時の顔を、僕は強く覚えている。
「あんなに楽しそうに笑顔でいるのに、誰にも話せないような思いを心の奥に閉じ込めて、気づかれないように、鍵をかけて隠しているのかな」
誰にもわからない君が隠した鍵。
その鍵で君の心を解放できたら、君は心から笑ってくれるのだろうか。
心に残った君の暗い顔。
いつか僕が、心から笑顔にできたら。と思うのだった。
紅の記憶…も書いてみましたが、こんな感じでいいのかどうか…。
紅の記憶
「いい天気」
冬に向かって、だんだんと寒くなっていくなか、日頃の運動不足を少しでも解消しようと、近くの公園にやって来た。
「いきなり走るのは、運動不足の体にはキツイかな」
そう思い、まずは公園内を散歩してみよう。と歩き出した。すると
「すごーい。赤い絨毯が広がってるみたい」
現れたのは彼岸花。視界いっぱいに、彼岸花が咲き誇っている。
「迫力あるなあ。目を閉じても情景が浮かんでくるよ」
燃える炎のようなその赤色は、紅の記憶として、私の心に焼きついたのだった。