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風を感じて やさしさなんて こぼれたアイスクリーム 真夏の記憶 言葉にならないもの です。

風を感じて

仕事が忙しく、たまの休みは寝てるか家のことをしていたんだけど、久しぶりに時間が取れたので、のんびりと散歩をすることにした。
「こんなにゆっくりできるのは、いつぶりかなぁ」
歩きながら伸びをすれば、室内にばかりいて光を浴びていない体も、気持ちまでもスッキリした気分になる。
「うーん、気持ち良い」
やわらかい風を感じて空を見上げれば、どこまでも広がる、青い空。
「…家に閉じこもってばかりって、心にも体にも良くないのかもな」
今度からは短い時間でも、外に出て自然を感じようと思うのだった。


やさしさなんて

「ダメだよ、やさしくしないで」
涙を手で拭いながら、キミは強い言葉で僕をけん制する。
「やさしさなんていらない。やさしくされたら、自分がダメになってしまうから」
顔を両手で覆い、キミは泣き続ける。
「そんなことには、ならないと思うよ」
僕はキミの頭をそっと抱き寄せ
「むしろ、キミの場合は、もっと甘えていいと思う」
そう言うと
「え?」
キミは僕を見上げる。
「今までキミは、誰にも甘えることなく、仕事に打ち込んできたでしょ。今回は、1人で頑張りすぎて起こってしまったミス。これからは僕たちを頼ってよ。それとも僕たちは頼りにならない?」
困った顔でキミに問いかけると
「ありがとう。これからは頼りにさせてもらうね」
涙の跡はそのままに、キミは微笑むのだった。


こぼれたアイスクリーム

「うわーん」
ショッピングモールに響き渡る泣き声。何事かと、声のする方へ行ってみると、泣いている男の子と、床にこぼれたアイスクリーム。
「どうしたの?」
男の子の視線に合わせ、話しかけてみると
「アイスクリーム、こぼしちゃって。でも、拭くもの、持ってない」
一度泣き止んだ瞳が、うるうるしてくる。
「大丈夫だよ、僕が持ってるから」
バッグからティッシュを取り出し、床を拭こうとすると
「僕がやる」
男の子はしゃがみ込み、僕からティッシュを取ると床を拭きはじめる。
「お兄さん、ありがとう」
拭き終わった男の子は、汚れたティッシュを手に持ちニコッと笑う。
「いいえ」
僕も男の子に笑顔を返すと、男の子は僕に手を振り、その場を離れる。
「結婚して子どもができたら、男の子みたいな子に育つといいな」
その前に相手を探さなきゃ。と苦笑いしながら、遠ざかる男の子の背中を見送ったのでした。


真夏の記憶

真夏になると思い出す、真夏の記憶。
それは…
小学生のときに行ったプール。あまりの人込みで、一緒にいた親とはぐれた時のこと。
大人にぶつかられ、持っていた浮き輪を離してしまい、溺れてしまったのだ。
そこで助けてくれたのが、監視員のお兄さん。
溺れた恐怖と、助かった安堵で泣いてしまった僕を、優しく落ち着かせてくれた。
そのときのお兄さんのようになりたい。そう思い、今僕はプールの監視員をしている。
僕の真夏の記憶は、良い思い出とは言えないけれど、僕の夢を作ってくれたのでした。


言葉にならないもの

「ねえ、私のこと、どれくらい好き?」
僕の目を見つめ、にこにこと笑いながら、よく聞くセリフを言うキミ。
「どれくらい。って、どう表現したらいいの?」
表現の仕方がわからず、キミに聞いてみると
「そうだなぁ。両腕をいっぱい広げたくらい…とか」
キミが聞いたのに、どうやら、的確な言葉はないらしい。
「僕がキミをどれくらい好きかというと…」
「うんうん」
「それは、言葉にならないもの。だね」
「ん?どういうこと?」
「どれくらい。って、言葉で表現するのは難しいよ。でも僕は、キミだけを愛してる。キミのことで頭も心もいっぱいになるくらいに。…こんな答えじゃダメかな」
そう言った僕の言葉に、キミは顔を真っ赤に染めるのだった。

8/14/2025, 9:14:51 AM