ここにある 夏草 心の中の風景は ふたり です
残りも時間がかかっても書きます。
よろしくお願いします。
ここにある
「あ~、楽しかった」
出口から園内を振り返ると
「うん、楽しかったね」
隣に立つキミも、僕と同じように振り返る。
2人で初めて来た、話題になっている遊園地。閉園時間までたっぷり遊んで、帰るところなのだ。
「楽しかったけど、話題なだけあって混んでたね」
はぁ。とため息を吐くキミに
「そうだね。でも、それは仕方ない」
僕は苦笑いする。
「そのせいで、写真いっぱい撮りたかったのに、全然撮れなった」
ぷぅと頬を膨らませ、不満を露わにするキミに
「大丈夫。写真は撮ってないけど、今日の楽しかった思い出は、ここにあるでしょ」
自分の胸を指差し僕がそう言うと
「うん、そうだね」
キミは自分の胸に手を当て微笑む。
「じゃ、そろそろ帰ろうか」
僕がキミに手を差し出すと
「うん」
キミは僕の手をギュッと掴む。
手をつないだまま遊園地を、後にしたのだった。
夏草
ソファに腰掛け、窓の外に目をやると、夏草が風に揺れているのが見える。
「あら、いい風が吹いているのね」
そんなことを呟きながら紅茶を飲んでみるけれど、それは現実逃避をしているだけだと、きちんと理解している。
「こんなに大きくなるまで、放置していたなんて」
ギラギラと照りつける太陽の下、草取りをしなくてはならない。その逃げられない現実に、頭を抱えるのだった。
心の中の風景は
目を閉じると浮かんでくる、俺の心の中の風景は、ひまわり畑を背にキミが微笑んでいるところ。
病気療養のため、遠くに行ってしまったキミ。元気になって戻って来る。と約束してから2年の月日が流れたけれど、音沙汰はない。
「何年経ってもいい。またキミに会えるなら…」
キミに会えたら連れて行きたい場所。ひまわりのように明るく笑うキミを、ひまわり畑に…。
いつ叶うかわからない想い。その想いが叶うまできっと、目を閉じると同じ風景が浮かぶんだろうな。
ふたり
気付けばいつも、キミとふたりだった。
幼なじみ。なだけなのに、出かけるときは一緒だったし、隣にいる。それが普通だと思っていた。
その普通が揺らいだのは中学生になってから。
キミが告白されているのを見てからだった。
そのときキミは、断っていたけれど、僕と一緒にいるのは、普通でもないし、当たり前でもないと気づかされた。
当たり前じゃないなら、キミと一緒にいるにはどうしたらいいのか。
答えは簡単だけれど、僕のキミへの想いが、言葉にするなら何なのか。がわからない。
妹のような存在。なのか、好きな子。なのか。
でもきっと、告白されているのを見たとき胸が痛んだから、妹とは思っていないだろう。
これからもキミとふたりでいるために、僕は素直な気持ちをキミに告げる決意をしたのだった。
9/3/2025, 9:32:20 AM