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6/22/2023, 8:27:42 AM

「好きな色」と「あなたがいたから」を書きました。



好きな色


「あなたの好きな色って、ブルーなの?」
キミとショッピング中、仕事で使うネクタイを選んでいると、そう聞かれる。
「うん、そうだよ」
ブルーとホワイトのストライプの物を手に取りながら、頷くと
「やっぱりそうなんだね。よく考えたら、あなたと会うときは、どこかしらにブルーが入ってたな。って思って」
納得したように笑う。
「ブルー、あなたに似合うし、私も好きな色だよ」
キミは別のネクタイを取り、これもいいよね。と選んでくれる。
「ありがとう。ブルーは俺の好きな色なんだけど、それだけじゃないんだ」
キミが選んでくれたネクタイを自分に合わせ、買い物かごに入れる。
「ん?それだけじゃないって?」
不思議そうにするキミに
「俺がブルーを選ぶのは、気が短いから。っていうのもあるんだ」
俺は苦笑する。
「気が短い?」
「そう。少しのことでイライラするんだ。でもね、そんなイライラしてるときに空を見ると、気分が晴れるんだよね。だから、イライラしたときに見て落ち着くように、普段からブルーを取り入れてる」
「なるほどね。そういう色の効果ってあるよね。オレンジを見ると元気が出るみたいな。私も、自分だけじゃなく、周りの人に良い効果があるような色、身に着けようかな」
俺がブルーを選ぶ理由を聞くと、キミは賛同してくれる。
「そういうのもいいね。タイピン、オレンジにしようかな」
「なら私は、ブルーのブレスレットを着けようかな」
二人で笑いながら、ショッピングを楽しむ。俺のことをよく見てくれて、同じような考えでいてくれるキミと、いつかサムシングブルーを身に着けたセレモニーができるといいな。と思うのだった。



あなたがいたから


「お疲れさまです。今日もお仕事ですか?」
仕事の休憩で寄ったカフェ。どうやら俺は、ここで寝ていたらしい。声をかけられ、目が覚めた。
「あれ?キミこそここで何してんの?」
まぶたが重く、半分ほどしか開いていない目でキミをぼんやり見つめると
「買い物に行くので歩いてたら、姿を見つけたので、思わず声をかけちゃいました」
と、声をかけてきた同期の子に微笑まれる。
「でも、寝てるとは思わなくて…。起こしちゃってすみません」
申し訳なさそうに謝られるけど
「いや、いつまでも寝てるわけにはいかないから、起こしてくれて良かった。ありがとね」
起こしてもらわなかったら、いつまでも寝ていたかもと思うとゾッとする。
「まだ戻るまで少し時間あるし、起こしてくれたお礼に何か奢るよ。時間ある?」
前に座るように促し、にこにこ笑いかけると
「ありがとうございます。では遠慮なく」
しゅんとした表情が晴れやかになり、キミは嬉しそうに笑った。

「課が違うと、忙しさも違うんですね」
注文したものが届き、話しながらキミと一緒に食べる。
「そうだねえ、営業は忙しいよ。ちなみに今日は、入ったクレームの謝罪に行って来た」
「え?そうなんですか?それはお疲れさまでした」
驚きつつも、労ってくれる。
「今日は謝罪で許してもらえたから良かったけど、罵倒されて泣いたこともあった。会社、辞めたくなることも多いよ」
「そうなんですね。事務の私でも、辞めたくなることありますよ」
キミは紅茶を一口飲み、話を続ける。
「私、パソコン作業が苦手で。時間がかかる上に、誤字も多くて。家でタイピングの練習はしてるんですけど、なかなか上手く出来なくて、上司に怒られてばっかりです」
と、ため息を吐いたけれど
「でもそれでも、私が仕事を頑張れているのは、あなたのおかげです」
俺に笑顔を向ける。
「え?俺?」
わけがわからず、ぽかんとする俺にキミは頷き
「入社して半年くらい。ずいぶん前のことだから覚えてないかもしれませんが、ミスして怒られて、屋上で落ち込んでたら、あなたが話を聞いてくれて。そのとき、俺も営業が上手くいかなくて怒られてるよ。でもきっと、同期はみんな同じような思いをして頑張ってる。みんなが頑張るなら俺も頑張らなきゃ。って思うんだ。だからキミも、一緒に頑張ろう。って言ってくれたんです。あのとき、そう言ってくれたあなたがいたから、私は今も頑張れてます。ありがとうございます」
頭を下げる。
「…俺の方こそ、ありがとう。実を言うと、クレーム続きで滅入ってたんだ。けど、話を聞いたら、やる気が出てきた」
俺は、残っていたコーヒーを飲み干すと、勢い良く立ち上がる。
「ごめん、俺、先出るわ」
「あ、はい。仕事、頑張ってくださいね」
「ありがとう」
急に動き出した俺を、キミは笑顔で見送ってくれる。俺は、初心を思い出させてくれたことを感謝しながら、社へ戻るのだった。

6/21/2023, 9:55:24 AM

昨日のテーマ、相合傘です。
あなたがいたから。は、次のテーマと一緒に書けたらいいなと思います。

「相合傘」

「やっと終わった~」
パタンとノートパソコンを閉じ、デスク周りを片付ける。明日までに提出する企画書が書き終わらず、課に残って仕上げていたのだ。
「うわっ、もうこんな時間か。どうりで腹減るはずだよなぁ。…ま、終わったからいっか」
イスに腰掛けたまま、うーんと伸びをして立ち上がる。
「お疲れさまでした」
課内で残っているのは俺一人。フロアの電気を消すと、課を後にした。
「あれ?雨降ってる」
エントランスに降り、外に出ると、仕事をしているときには気づかなかったが、雨がポツポツと降っている。
「課を出るときに気づけばなぁ」
俺はため息を一つ吐くと、課まで置き傘を取りに戻った。

「面倒臭かったけど、置き傘取りに戻って良かった」
先程まではポツポツだった雨が、サーっと降り方を変える。向かっている駅まではもう少し距離があり、傘なしだったら、結構濡れていただろう。
「あれ?」
駅まではあと10分程。というところで、コンビニに佇んでいる見知った顔を見つける。
「お疲れさま。どうしたの?」
佇んでいたのは、同じ課にいる気になっている女性で。
「お疲れさまです。残業ですか?」
「うん、そう。企画書が終わらなくて」
ハハハ。と笑えば
「遅くまでお疲れさまでした」
労いの言葉をくれる。
「それで、どうしたの?」
もう一度聞いてみると
「帰りに買い物に寄ったんですが、店を出て少ししたら雨が降ってきまして。ここで買おうと思ったら売り切れで」
困っているようだ。
「俺、駅に行くんだけど、そこまでで良ければ入る?」
傘を彼女の方に向けると
「え、でも…」
戸惑っている様子。
「雨、止みそうにないし、ずっとここにいるわけにもいかないでしょ?歩いてずぶ濡れになるよりはマシだと思うから、嫌じゃなければ」
ね。と、笑顔を向けると
「すみません。お言葉に甘えて、お邪魔します」
おずおずと、彼女が傘の中に入って来る。
「濡れないように、俺の方に寄ってね。じゃ、行こうか」
「お願いします」
彼女の方に傘を少し傾け、ゆっくりと歩き出す。思わぬ形で彼女と二人きり。ドキドキしながらも、彼女にもっと近づくチャンスだと、彼女の方をチラリと見ると、彼女はそっぽを向いている。
「もしかして、俺とじゃイヤだったのかな」
と顔をしかめそうになったとき、揺れる髪の間から見えた耳が、赤くなっていることに気付く。
「…相合傘が、恥ずかしいのかも」
そう思い、嬉しくなった俺は、駅に着くまでの間、彼女に気に入ってもらえるように、いろいろと話そうと話しかけたのだった。

6/19/2023, 9:56:18 AM

タワー型のアトラクションの頂上から一気に落下するような、そんな人生の転落を味わった。
「どうして自分が。何でこんなことに…」
を繰り返し、光の届かない暗い部屋の中で膝を抱え、ただ時間が過ぎていくだけの毎日を過ごしていた。
そんなとき、
「いつまでそうしてるつもり?」
冷ややかな声が聞こえ、膝に埋めた顔を上げると、一筋の光を背に、キミが立っている。
「何?」
「何じゃないでしょ」
怒っているのか、イライラした様子で俺の前に立つと
「歯を食いしばれ」
低い声でそう言い放ち、俺と目線を合わせるように両膝をつくと手を振り上げる。それでも俺は、ぼんやりとキミを見ていたけれど
「…ごめん」
気力をなくした俺の目を覚ましてくれたのは、気の強いキミの涙だった。
「ごめん、ごめんね」
手を振り上げたまま、涙を流すキミにハッとさせられた俺は、力強くキミを抱きしめる。
「私の方こそ、ごめんね」
泣きながらもキミは俺を抱きしめ返し
「あなたが悩んでたのは気づいてた。でも、私にできることなんて。って聞かなかったから。話すだけで心が軽くなることもあるのに、追い詰めてごめんね。けどもうこんなことはしたくない。だから、これが最後だよ」
懇願するように、腕に力を込める。
「うん。もう二度と泣かせないって約束する」
俺を想ってくれるキミがいる。それだけで、こんなにも強くなれることを知った。どん底まで落ちたら、上がっていくだけ。きっとキミがいてくれるなら、できる気がする。やる気を取り戻した俺は、嬉し涙をキミにプレゼントすることを、キミの涙に誓うのだった。

6/18/2023, 9:51:20 AM

未来のこと。
なんて、明日のことでさえわからないのに、わかるはずがない。
立てた予定も、その通りになるなんて確証はない。
確かなことが何もない、不安だらけの毎日だけど、それでも前に進むのは…
1日でも多く、愛するキミの幸せそうな笑顔を見たいから。俺の名を呼ぶキミの声を、何度も何度も聞きたいから。そのためなら俺は、先の見えない暗闇でも手を伸ばせる。だからキミは、笑ってて。キミがずっと幸せでいられるように、俺は頑張るから。

6/16/2023, 9:22:14 AM

お昼休憩中。昼食を済ませたあと、デスクで本を読んでいると
「何の本、読んでるの?」
隣に座る同期の方に声をかけられる。
「え…っと、これです」
普段、仕事以外の会話をしたことがないせいか、緊張しながらも、何とか本の表紙を見せると
「あー、書店で平積みしてある、人気の本だよね」
自分のデスクにコンビニの袋をドサッと置きながら、にっかり笑う。
「そういうのが好きなの?」
イスに腰掛け、袋から商品を出し、律儀にも私に断りを入れてから食べ始める。
「はい。本を読むのが好きでいろいろ読みますけど、この本の作家さんが一番好きなんです」
「そうなんだ。いつもここで本読んでるの?」
「はい。読み始めると、続きが気になってしまうので、みなさんがお昼を食べに行っている間に読んでます」
「そっかぁ。そういう方法もあるんだね」
おにぎりを頬張りながら、なるほどねぇ。と呟き
「俺も真似しようかな」
と笑みを見せる。
「真似、ですか?」
訳が分からず、ぽかんとすると
「そう。俺ね、買っただけで読んでない本が結構あるの。けど、読む時間がなかなか取れなくて。いつもは昼飯をどっかで食べて来るだけで昼休憩終わっちゃうけど、昼飯を持参すれば、読む時間が取れるんだよね。絶対に邪魔はしないから、明日から昼休憩に本読んでいい?」
楽しそうに理由を教えてくれる。
「もちろんです」
笑顔で答えれば
「やった。何から読もうかな」
と、ワクワクとした様子を見せる。
「本、好きなんですか?」
「うん、いろんなジャンルの本読むよ…そうだ。許可してくれたお礼に、俺が一番好きな本、貸すね」
「え?」
「俺の周りに本好きがいないから、何か嬉しい」
にこっと笑われ、言葉を失う。
「あ、ごめん。こんなに喋ってたら読む時間無くなっちゃうね。静かにしてるから、続き読んで」
そう言うと、スマホを取り出し見始める。
本がきっかけで始まりそうなストーリー。今読んでいる本のように、ストーリーが続くといいなぁ。と思いながら本に目を落としたのだった。

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