YOU

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タワー型のアトラクションの頂上から一気に落下するような、そんな人生の転落を味わった。
「どうして自分が。何でこんなことに…」
を繰り返し、光の届かない暗い部屋の中で膝を抱え、ただ時間が過ぎていくだけの毎日を過ごしていた。
そんなとき、
「いつまでそうしてるつもり?」
冷ややかな声が聞こえ、膝に埋めた顔を上げると、一筋の光を背に、キミが立っている。
「何?」
「何じゃないでしょ」
怒っているのか、イライラした様子で俺の前に立つと
「歯を食いしばれ」
低い声でそう言い放ち、俺と目線を合わせるように両膝をつくと手を振り上げる。それでも俺は、ぼんやりとキミを見ていたけれど
「…ごめん」
気力をなくした俺の目を覚ましてくれたのは、気の強いキミの涙だった。
「ごめん、ごめんね」
手を振り上げたまま、涙を流すキミにハッとさせられた俺は、力強くキミを抱きしめる。
「私の方こそ、ごめんね」
泣きながらもキミは俺を抱きしめ返し
「あなたが悩んでたのは気づいてた。でも、私にできることなんて。って聞かなかったから。話すだけで心が軽くなることもあるのに、追い詰めてごめんね。けどもうこんなことはしたくない。だから、これが最後だよ」
懇願するように、腕に力を込める。
「うん。もう二度と泣かせないって約束する」
俺を想ってくれるキミがいる。それだけで、こんなにも強くなれることを知った。どん底まで落ちたら、上がっていくだけ。きっとキミがいてくれるなら、できる気がする。やる気を取り戻した俺は、嬉し涙をキミにプレゼントすることを、キミの涙に誓うのだった。

6/19/2023, 9:56:18 AM