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「好きな色」と「あなたがいたから」を書きました。



好きな色


「あなたの好きな色って、ブルーなの?」
キミとショッピング中、仕事で使うネクタイを選んでいると、そう聞かれる。
「うん、そうだよ」
ブルーとホワイトのストライプの物を手に取りながら、頷くと
「やっぱりそうなんだね。よく考えたら、あなたと会うときは、どこかしらにブルーが入ってたな。って思って」
納得したように笑う。
「ブルー、あなたに似合うし、私も好きな色だよ」
キミは別のネクタイを取り、これもいいよね。と選んでくれる。
「ありがとう。ブルーは俺の好きな色なんだけど、それだけじゃないんだ」
キミが選んでくれたネクタイを自分に合わせ、買い物かごに入れる。
「ん?それだけじゃないって?」
不思議そうにするキミに
「俺がブルーを選ぶのは、気が短いから。っていうのもあるんだ」
俺は苦笑する。
「気が短い?」
「そう。少しのことでイライラするんだ。でもね、そんなイライラしてるときに空を見ると、気分が晴れるんだよね。だから、イライラしたときに見て落ち着くように、普段からブルーを取り入れてる」
「なるほどね。そういう色の効果ってあるよね。オレンジを見ると元気が出るみたいな。私も、自分だけじゃなく、周りの人に良い効果があるような色、身に着けようかな」
俺がブルーを選ぶ理由を聞くと、キミは賛同してくれる。
「そういうのもいいね。タイピン、オレンジにしようかな」
「なら私は、ブルーのブレスレットを着けようかな」
二人で笑いながら、ショッピングを楽しむ。俺のことをよく見てくれて、同じような考えでいてくれるキミと、いつかサムシングブルーを身に着けたセレモニーができるといいな。と思うのだった。



あなたがいたから


「お疲れさまです。今日もお仕事ですか?」
仕事の休憩で寄ったカフェ。どうやら俺は、ここで寝ていたらしい。声をかけられ、目が覚めた。
「あれ?キミこそここで何してんの?」
まぶたが重く、半分ほどしか開いていない目でキミをぼんやり見つめると
「買い物に行くので歩いてたら、姿を見つけたので、思わず声をかけちゃいました」
と、声をかけてきた同期の子に微笑まれる。
「でも、寝てるとは思わなくて…。起こしちゃってすみません」
申し訳なさそうに謝られるけど
「いや、いつまでも寝てるわけにはいかないから、起こしてくれて良かった。ありがとね」
起こしてもらわなかったら、いつまでも寝ていたかもと思うとゾッとする。
「まだ戻るまで少し時間あるし、起こしてくれたお礼に何か奢るよ。時間ある?」
前に座るように促し、にこにこ笑いかけると
「ありがとうございます。では遠慮なく」
しゅんとした表情が晴れやかになり、キミは嬉しそうに笑った。

「課が違うと、忙しさも違うんですね」
注文したものが届き、話しながらキミと一緒に食べる。
「そうだねえ、営業は忙しいよ。ちなみに今日は、入ったクレームの謝罪に行って来た」
「え?そうなんですか?それはお疲れさまでした」
驚きつつも、労ってくれる。
「今日は謝罪で許してもらえたから良かったけど、罵倒されて泣いたこともあった。会社、辞めたくなることも多いよ」
「そうなんですね。事務の私でも、辞めたくなることありますよ」
キミは紅茶を一口飲み、話を続ける。
「私、パソコン作業が苦手で。時間がかかる上に、誤字も多くて。家でタイピングの練習はしてるんですけど、なかなか上手く出来なくて、上司に怒られてばっかりです」
と、ため息を吐いたけれど
「でもそれでも、私が仕事を頑張れているのは、あなたのおかげです」
俺に笑顔を向ける。
「え?俺?」
わけがわからず、ぽかんとする俺にキミは頷き
「入社して半年くらい。ずいぶん前のことだから覚えてないかもしれませんが、ミスして怒られて、屋上で落ち込んでたら、あなたが話を聞いてくれて。そのとき、俺も営業が上手くいかなくて怒られてるよ。でもきっと、同期はみんな同じような思いをして頑張ってる。みんなが頑張るなら俺も頑張らなきゃ。って思うんだ。だからキミも、一緒に頑張ろう。って言ってくれたんです。あのとき、そう言ってくれたあなたがいたから、私は今も頑張れてます。ありがとうございます」
頭を下げる。
「…俺の方こそ、ありがとう。実を言うと、クレーム続きで滅入ってたんだ。けど、話を聞いたら、やる気が出てきた」
俺は、残っていたコーヒーを飲み干すと、勢い良く立ち上がる。
「ごめん、俺、先出るわ」
「あ、はい。仕事、頑張ってくださいね」
「ありがとう」
急に動き出した俺を、キミは笑顔で見送ってくれる。俺は、初心を思い出させてくれたことを感謝しながら、社へ戻るのだった。

6/22/2023, 8:27:42 AM