お昼休憩中。昼食を済ませたあと、デスクで本を読んでいると
「何の本、読んでるの?」
隣に座る同期の方に声をかけられる。
「え…っと、これです」
普段、仕事以外の会話をしたことがないせいか、緊張しながらも、何とか本の表紙を見せると
「あー、書店で平積みしてある、人気の本だよね」
自分のデスクにコンビニの袋をドサッと置きながら、にっかり笑う。
「そういうのが好きなの?」
イスに腰掛け、袋から商品を出し、律儀にも私に断りを入れてから食べ始める。
「はい。本を読むのが好きでいろいろ読みますけど、この本の作家さんが一番好きなんです」
「そうなんだ。いつもここで本読んでるの?」
「はい。読み始めると、続きが気になってしまうので、みなさんがお昼を食べに行っている間に読んでます」
「そっかぁ。そういう方法もあるんだね」
おにぎりを頬張りながら、なるほどねぇ。と呟き
「俺も真似しようかな」
と笑みを見せる。
「真似、ですか?」
訳が分からず、ぽかんとすると
「そう。俺ね、買っただけで読んでない本が結構あるの。けど、読む時間がなかなか取れなくて。いつもは昼飯をどっかで食べて来るだけで昼休憩終わっちゃうけど、昼飯を持参すれば、読む時間が取れるんだよね。絶対に邪魔はしないから、明日から昼休憩に本読んでいい?」
楽しそうに理由を教えてくれる。
「もちろんです」
笑顔で答えれば
「やった。何から読もうかな」
と、ワクワクとした様子を見せる。
「本、好きなんですか?」
「うん、いろんなジャンルの本読むよ…そうだ。許可してくれたお礼に、俺が一番好きな本、貸すね」
「え?」
「俺の周りに本好きがいないから、何か嬉しい」
にこっと笑われ、言葉を失う。
「あ、ごめん。こんなに喋ってたら読む時間無くなっちゃうね。静かにしてるから、続き読んで」
そう言うと、スマホを取り出し見始める。
本がきっかけで始まりそうなストーリー。今読んでいる本のように、ストーリーが続くといいなぁ。と思いながら本に目を落としたのだった。
6/16/2023, 9:22:14 AM