「バイバイ、またね」
そんな言葉が飛び交い、みんなそれぞれの方向へ歩いて行く。同じ場所で楽しい時間を過ごしたから、もっと泣いたりするかと思ったけど、卒業式はあっさりしたものだった。
「おい」
背後から肩を叩かれ振り向くと
「何だよ」
そこにいたのは1番仲が良かった親友で。
「このまま、何も言わなくていいのか?」
「何が?」
「何がって、あいつにだよ。ずっと好きだったんだろ?」
「そうだけど…」
「ならさ…」
親友は俺の両肩をガシッと掴み
「後悔すんな」
真剣な顔で言う。
「でも…」
「あいつを想ったまま、次にいけるような奴じゃないだろ、オマエは」
「………」
「今を逃したら、次に会えるのはいつかわかんねえぞ」
「…わかった」
親友に檄を飛ばされ
「誰よりも、ずっと好きでした」
と告げるため、彼女の元に向かうのだった。
1つ前のお題「これからも、ずっと」です。
「喜んでくれるかな」
定時で退社し、花束とケーキを買い足取り軽く家へ向かう。今日は初めての結婚記念日。日頃の感謝を込めて、サプライズでプレゼント。
「ただいま」
玄関を開けると
「おかえりなさい」
エプロンを着けたキミが出迎えてくれる。
「はい、これ」
背中に隠していた花束を差し出すと
「すごくキレイ。ありがとう」
俺に抱きついてくる。
「ケーキも買ってきたんだ」
「嬉しい。今日は結婚記念日だもんね。私もいつもより頑張ってご飯を作ったよ」
結婚記念日だからお祝いしよう。と、約束をしたわけじゃないのに、キミも同じ気持ちでいてくれたことが嬉しい。
「ありがとう。何回目か数えられないくらい、結婚記念日をお祝いしよう。これからも、ずっと隣にいてください」
「はい」
微笑み合った俺たちは、誓い合うようにキスしたのだった。
海岸に座り、海をオレンジに染めながら沈む夕日をキミと眺める。
「キレイ」
「キレイだね」
打ち寄せる波の音を聞きながら、夕日が見えなくなるまで、ただ静かに見つめる。
「沈んじゃったね」
沈む夕日を見送ると、辺りを闇が包み始める。
「なんだか、寂しいなぁ」
膝に顔を埋め、キミはつぶやく。
「そうだね。でも」
俺はキミの肩を抱き寄せ
「沈んだ夕日は、また明日、元気な姿を見せてくれる。俺もそばにいるし、そんなに寂しがらないで」
頭を撫でると
「ありがと。夕日が沈むと今日の終わりが近づくでしょ。そうすると、あなたと一緒にいられるのも、もうちょっとになっちゃう」
顔を上げたキミにかわいいことを言われる。
「なら、少し砂浜を散歩しよう。俺もまだ一緒にいたいから」
腰を上げキミに手を差し出すと、その手を取りキミも立ち上がる。
「行こう」
手をつなぎ歩き出した俺たちを、夜空を照らし出した星たちが見守っていたのだった。
君の目を見つめると、君は恥ずかしそうに目を逸らす。それでも構わず視線を送り続けると、様子を見るように、少しずつ視線が戻ってくる。
「ねえ、何でそんなにじっと見るの?」
頬を少し膨らませ、君はイヤそうな顔をする。
「そんなにイヤだった」
クスッと笑って返せば
「だって、すぐ顔が赤くなるから、見られたくないし」
赤くなった頬を隠すように手を当て、君は横を向いてしまう。
「ごめんって。君の目を見つめると、癒やされるんだ」
「え?」
俺の言葉が意外だったのか、君は頬に手を当てたまま顔をこちらに向ける。
「目が合って恥ずかしがったり、微笑んでくれたり、いろんな可愛いが見られて、好きって気持ちで心が満たされて癒されるんだ」
こちらを見た君の目をもう一度見つめて想いを伝えれば、今度は恥ずかしがらずに目を合わせ微笑んでくれる。
「ありがとう。恥ずかしいけど、これからも私をずっと見ていてね」
君が俺の方に手を差し出したので
「もちろんだよ」
俺はその手をギュッと握ると、二人で微笑み合ったのだった。
星空の下で、キミと迎えた2人だけの結婚式。神父もいない、本当に2人だけ。さざ波の音をBGMに指輪を交換すれば、星たちが瞬き祝福をくれる。
「星って、こんなにキラキラ輝いてるのね」
うっとりとした表情で、キミは星空を眺める。
「ああ。こんなにキレイな星空を見たのは初めてだ」
俺たちが住んでいる場所では、こんなにキレイな星空は見れない。キミの
「自然豊かな場所で、2人だけでナイトウエディングがしたい」
という願いを叶えられたことで、夢のようなステキな景色を見ることができた。
「キミの願いのおかげだね」
キミを抱きしめ頬に手を添えると
「あなたが叶えてくれたからだよ」
星に負けないくらいの煌めく笑顔を見せる。
「この星のように、眩しいくらいに明るい道を、一緒に歩いて行こうね」
「うん」
夜空いっぱいに広がる星空の下、見守る星たちに誓うように、キミとキスを交わしたのだった。
「今度の休みに服を買いに行きたいの。付き合ってくれる?」
仕事の休憩中、キミから届いたメッセージ。そういえば、この前カフェでファッション雑誌を読んでて、この服いいなぁ。って言ってたっけ。そんなことを思い出し
「もちろんいいよ」
と、返事をした。
「あった、これか」
迎えた休日。キミと一緒にショップに行くと、目当ての服を見つけたようだ。けど
「それが欲しい服?雑誌で見てたのとは違うよね?」
選んだ服は、普段キミが着そうにないもの。着たことがない系統の服にチャレンジしてみよう。ってワクワクドキドキしている感じでもない。
「うん。だって、あの服よりもこっちの方がいいって同僚が…」
「そうなんだね。でもキミは、雑誌で見てた服の方が欲しいんでしょ。なら、そっちにしなよ」
「でも…」
「同僚の方が言うように、その服もキミに似合うと思う。けど、欲しいと思ってないでしょ」
「え?」
「だって、雑誌を見てたときはキラキラした目をしてたのに、今はしてないよ」
「………」
「勧められたものを着るのも良いと思うけど、自分の着たい服を着た方が、気持ちも明るくならない?勧められたから仕方ないって気持ちなら、着ない方がいい。服がかわいそうだ」
「………」
「その服は、新しい自分に出会いたい、チャレンジしてみよう。って気持ちになったら迎えればいい。今は、今欲しい物を選びなよ」
「…そうだね」
俺の言葉が後押しになったのか、手にした服を戻し、欲しがっていた服を持って来る。
「うん。いい笑顔だ」
さっきまでとは違い、嬉しそうに笑っている。
「やっぱり、これがいい。これを着たいと思ってたの。同僚に言われたからそれにしようと思ったけど、私はこっちが欲しいしすぐにでも着たい」
「それでいいよ。誰かの意見を参考にするのはいい事だと思う。けど、最終的に選ぶのは自分なんだから、自分の好きなようにしな」
「うん」
「そうやって笑ってるキミが、俺は好きだよ」
顔を赤くして固まるキミの手から服をサッと取り、俺はレジに向かうのだった。