「今度の休みに服を買いに行きたいの。付き合ってくれる?」
仕事の休憩中、キミから届いたメッセージ。そういえば、この前カフェでファッション雑誌を読んでて、この服いいなぁ。って言ってたっけ。そんなことを思い出し
「もちろんいいよ」
と、返事をした。
「あった、これか」
迎えた休日。キミと一緒にショップに行くと、目当ての服を見つけたようだ。けど
「それが欲しい服?雑誌で見てたのとは違うよね?」
選んだ服は、普段キミが着そうにないもの。着たことがない系統の服にチャレンジしてみよう。ってワクワクドキドキしている感じでもない。
「うん。だって、あの服よりもこっちの方がいいって同僚が…」
「そうなんだね。でもキミは、雑誌で見てた服の方が欲しいんでしょ。なら、そっちにしなよ」
「でも…」
「同僚の方が言うように、その服もキミに似合うと思う。けど、欲しいと思ってないでしょ」
「え?」
「だって、雑誌を見てたときはキラキラした目をしてたのに、今はしてないよ」
「………」
「勧められたものを着るのも良いと思うけど、自分の着たい服を着た方が、気持ちも明るくならない?勧められたから仕方ないって気持ちなら、着ない方がいい。服がかわいそうだ」
「………」
「その服は、新しい自分に出会いたい、チャレンジしてみよう。って気持ちになったら迎えればいい。今は、今欲しい物を選びなよ」
「…そうだね」
俺の言葉が後押しになったのか、手にした服を戻し、欲しがっていた服を持って来る。
「うん。いい笑顔だ」
さっきまでとは違い、嬉しそうに笑っている。
「やっぱり、これがいい。これを着たいと思ってたの。同僚に言われたからそれにしようと思ったけど、私はこっちが欲しいしすぐにでも着たい」
「それでいいよ。誰かの意見を参考にするのはいい事だと思う。けど、最終的に選ぶのは自分なんだから、自分の好きなようにしな」
「うん」
「そうやって笑ってるキミが、俺は好きだよ」
顔を赤くして固まるキミの手から服をサッと取り、俺はレジに向かうのだった。
4/5/2023, 5:22:12 AM