明永 弓月

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9/12/2024, 12:52:01 PM

 会う。くちづける。肌を重ねる。それらを身勝手にやってきた自覚がある。相手のことなど何も考えずに己の欲に従った。
 相手を変えて何度か繰り返したが、並行していたわけではない。割り切った遊び相手でもなかった。特定の相手は所謂交際関係にある相手で、その人とだけ行っていた。

 今、交際相手はいない。
 今にして思えば自分本位だった。だからこそ恋だと言われるかもしれない。ただ、自分としては本当は誰でも良かった可能性を感じている。そう言えるのも今だからだというのは分かっている。
 自分が思っているほどまともではないことは、ここまで生きていれば気付ける。
 結局のところ、誰でも良いなら遊んでいるのと変わらない。今はそういった欲が生まれていないだけではないのか。
 理性を失うような情熱も、浮き立つ心も持たない。心焦がすような思いも抱かない。恋情などどこにあるのだろうか。

 恋をして、愛が生まれて、家族になる。周囲にそんな人が増えてきたからこそ、自分のまともでない部分がよく見えるようになった。過去を見つめられるようになった。

 恋の話は、いつまでもはぐらかすしかないらしい。

9/11/2024, 6:26:56 AM

 きっといつまでも埋まることはないのだろう。

 当たり前にそこにあった。心の中を、自分を占めているとは思っていなかった。消えてしまってから気付いた。気付けただけ幸いなのか。大事だったのだろう。失われたものは戻らない。
 ぽっかりと空いた穴。そこにあったものの代わりに何が入れられるだろうか。代わりなど存在しない。わかりきったことだ。だから、何もないことを感じている。

 空虚。それを抱えることはできるのだろうか。

9/8/2024, 12:45:21 PM

 わたしばかり恋しいのよ。
 女は言った。自分ばかり苦しい思いをしているのだと。男にとって、自分の優先順位は高くないのだと。自分ばかり嫉妬に駆られていると。醜いことはわかっていても思いは募るばかりで、愚かにも返してほしいと思ってしまうのだと。
 男は黙って聞いていた。女の言い分を理解したわけではない。反論もある。

 俺がきみを好いていないなどありえない。
 男は言った。表情には出ていないだろうが、誰より大事なのは女だと。嫉妬心を抱くのは自分も同じであると。同じ気持ちであってほしいと望んでいるとも。
 女の表情は晴れない。男への疑わしげな視線を隠さない。

 男は女を抱きしめる。
 この音が嘘だと思うのか。
 女は何も言わない。言えないままその腕を男の背に回す。

 同じはやさで、同じ大きさをしている。
 お互いにそれだけを感じていた。

9/5/2024, 10:57:11 PM

 きみがくれた海。
 それが、この貝殻だ。

 耳に当てると波の音がするよ。
 きみの言ったとおり、耳に当てると音がする。それが、海の波音なのか確かめるすべはない。
 海には行ったことがない。この街から海は遠く、そう簡単には行けないのだ。この街には自分のやるべきこともある。

 君と海に行きたい。
 この貝殻をくれたときのきみの言葉。ずっと忘れていない。
 机の上に、いつも見えるところに置いている。そして、行けない言い訳をひとつずつ消していく。

 きみと海に行きたい。
 同じ気持ちでいる。自分の本音を貝殻にだけ囁く。

9/3/2024, 10:49:10 PM

 積み重なる、積み重なる
 あなたの小さな気遣いが

 降り積もる、降り積もる
 あなたの小さなやさしさが


 大きな愛がそこにある

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