明永 弓月

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 わたしばかり恋しいのよ。
 女は言った。自分ばかり苦しい思いをしているのだと。男にとって、自分の優先順位は高くないのだと。自分ばかり嫉妬に駆られていると。醜いことはわかっていても思いは募るばかりで、愚かにも返してほしいと思ってしまうのだと。
 男は黙って聞いていた。女の言い分を理解したわけではない。反論もある。

 俺がきみを好いていないなどありえない。
 男は言った。表情には出ていないだろうが、誰より大事なのは女だと。嫉妬心を抱くのは自分も同じであると。同じ気持ちであってほしいと望んでいるとも。
 女の表情は晴れない。男への疑わしげな視線を隠さない。

 男は女を抱きしめる。
 この音が嘘だと思うのか。
 女は何も言わない。言えないままその腕を男の背に回す。

 同じはやさで、同じ大きさをしている。
 お互いにそれだけを感じていた。

9/8/2024, 12:45:21 PM