一夜の夢

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5/1/2024, 9:34:53 AM

蛇は黄色い眼をしていた。
りんごは真っ赤だった。
ちっともおかしいと思わずに、僕は知恵の実を齧った。

僕の罪と無知の証は、ここに刻まれている。
何かを飲み込むたびに、りんごが上下して主張する。

僕が楽園にいた頃、全ては調和していた。
誰がりんごを断れる?
誰が蛇の眼を潰せる?

僕の眼は何色をしているだろう。
君にりんごを差し出す僕の眼は。

4/22/2024, 2:46:41 PM

全てを捨てて、あなたを選んだ。
それがたとえ間違いだったとしても、僕は僕の心に背くことができなかった。

何度も何度も、あなたの夢をみる。
僕に呼びかけるあなたの、その絹のような声が、僕の心を絡め取って離さない。

きっと僕にも、悪魔の角が生えている。
あなたと揃いの黒い角。

後悔しているかい。

あなたは笑っていた。

ええ、もちろん。

僕も笑っていた。
間違えて、その次も間違えて、あなたの望む結末に辿り着いた。
せめて僕を連れて行って。
何も感じない世界まで。

4/20/2024, 3:16:25 PM

美味しい食事を摂り、ふかふかのベッドで眠る。
家は広くて、外車を乗り回し、高級なスーツを着る。
けれど、なにもかも虚しかった。

君さえいれば、他には何もいらなかったのに。
他の全ては手に入ったのに、君だけがここにいない。

大きなソファも、二つずつあるカトラリーも、並んだ枕も、全部が苦しいのは。
きっと君の分が、ぽっかり空いたままだから。

君さえいれば。
六畳一間のボロアパートでも、コンビニ弁当でも、薄い布団でも、幸せだっただろう。
君さえいれば、何もいらなかったのに。

4/14/2024, 1:07:19 PM

神様へ近づこうと手を伸ばした天使は、その翼を焼かれて地に落とされてしまうらしい。

神様が手を伸ばしたくなるほど魅力的な悪魔になれば、落ちてきた神様を地獄の業火で堕落させられるだろうか。

神様へ近づいた罰を。
悪魔に手を伸ばした罰を。

僕らは共に背負って、燃え尽きた翼で地を這おう。

4/12/2024, 3:49:55 PM

遠くの空へ行くのだろう。
鳥の群れを見上げてあなたはそう言った。

翼があれば、今にも飛び去ってしまいそうに軽やかなのに。
背負ったものの重さで飛べないわたしと手なんか繋いでいるから。

あなたもいつか、遠くの空へ行くの。
たずねたわたしの手を、あなたは握り直した。

きみがいるから、ぼくは地上の生き物でいられるんだ。
微笑むあなたの目が鳥を見失ったのを見て、わたしはひどく安心した。

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