一夜の夢

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12/8/2023, 8:46:35 AM

部屋の片隅で膝を抱える。
初冬の冷気が床から這い上がってくる。
悪夢を見るから、夜は嫌いだ。
眠れない日々はそれでも続いていく。
灰色に見える世界で、なぜ生きているかもわからないまま。
ただ死んでいないだけの人生は苦しい。
このまま床に沈み込んで、地面に埋まって、誰にも見つかりたくない。
何もない部屋から目を背け、体を抱きしめる腕に顔をうずめた。
とろとろと眠気が襲ってくる。
枯れ果てた涙を押し出すように、きつく目を閉じた。

12/6/2023, 4:59:55 PM

自分の中の怪物が日増しに大きくなる。
あなたの顔をした悪魔が夜毎耳元で囁くので、今日も僕は寝不足だ。
中途半端に残った愛情や優しさという感情たちが、僕を責め立てる。

おまえは何も守れない。
おまえはあの人に勝てない。

僕は何者か。
あなたは何者か。
僕らの矛盾している関係は、僕らだけが知っていればそれでよかった。
ときどき僕とあなたが一つのように感じる。
不本意だが、僕はあなたの示す道を歩くしかないようだ。

今日僕はあなたからナイフを受け取った。
そして、僕の世界は逆さまになった。
反転。
暗転。
明滅する光の向こうを見透かそうと、僕は目をすがめている。

12/5/2023, 2:46:36 PM

好きな人が結婚する。

「……おめでとう」

どうにか不自然にならないくらいの間でそう言えた。
電話の向こうの君ははにかむ。
そこからどんな会話をしていつ電話を切ったか覚えていない。
その日の夜、一人の部屋で思い切り泣いた。

毎日ぐるぐる思考がこんがらかる。
今日までずいぶん悩んだ。
君との思い出で頭がいっぱいになって、眠れないほどだ。

明日は結婚式。
君と、君の好きな男の結婚式。

「絶対来てね。親友のあなたに見てほしいの。私のドレス姿」

そう言って幸せそうに笑った君さえもかわいいと思ってしまったのだから、そうとう重症みたいだ。

とうとう眠れないまま朝になってしまった。
冷たいシャワーを浴びる。
風邪でもひけたら欠席できるのになあと思ったり。
頭では行けない理由をありったけあげつらっているのに、手は機械的にシャツのボタンを留める。
最後に、君が誕生日にくれたピアスを未練がましく着けた。
鏡に映る自分に言い聞かせる。
大丈夫、ちゃんとやれる。



真っ白なウエディングドレスに身を包む君は、今まででいちばん美しい。
きっとこの先何度も夢に見るだろう。
君が幸せならそれでいいなんて言える善人じゃないけど、君の幸せが嬉しいのは本当だ。
何も知らない君は残酷に、友人代表のスピーチの役目をくれた。
少しだけ本音を混ぜた、完璧な「友人」の祝辞を述べる。

わたしの親友をこれから独占する新郎さんに少し嫉妬しています。

新郎は照れたように笑っている。
君もくすくすと控えめな笑い声を立てる。
ちらりと視線を二人に向け、わたしも微笑んだ。
これで終わり。
わたしの叶わない初恋。

最期まで君を想いながら、いつかわたしは死ぬのだろう。
そのとき君はきっと泣いてくれる。
それで、それだけで、十分だ。

12/4/2023, 2:30:56 PM

夢と現実の境は、今はきちんと認識している。
僕の頭はこれまでになく冴えている。
あなたから離れたおかげだ。
皮肉にもあなたが僕を陥れたことで、暫くあなたという有毒な煙を吸い込まずに済んだ。

何度あなたと決別しようと思ったかわからない。
その度に思いとどまってきた。
あなたをもっと、知りたかった。
あなたが僕に差し伸べる腕は地獄への扉だと知っていても。

次は失敗しない。
今度こそ僕の手で、終わりにする。
僕しか真実を知らないのだから。

僕が間違っているのか、この世界が間違っているのか。
どちらも同じことだとわかっていた。

12/3/2023, 2:46:16 PM

見える景色すべてに君の幻を見る。
聴こえる音すべてに君の声が混じる。
君色のガラスを通して見ていた日々の鮮やかさを、もう思い出せなくなった。

冬が好きだった君は、冬と共に僕から去った。
春の訪れを告げる陽光も、もはや凍りついた僕の心を溶かせない。

愛してると素直に言えたら。
あるいは、行かないでと泣きつけたら。
僕の隣には今日も君がいただろうか。

「さよなら。大好きだったよ」

さよならなんて言わないでほしかった。
振り向かない君になんて返せばよかったのか、僕はいまだに答えを知らない。

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