一夜の夢

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見える景色すべてに君の幻を見る。
聴こえる音すべてに君の声が混じる。
君色のガラスを通して見ていた日々の鮮やかさを、もう思い出せなくなった。

冬が好きだった君は、冬と共に僕から去った。
春の訪れを告げる陽光も、もはや凍りついた僕の心を溶かせない。

愛してると素直に言えたら。
あるいは、行かないでと泣きつけたら。
僕の隣には今日も君がいただろうか。

「さよなら。大好きだったよ」

さよならなんて言わないでほしかった。
振り向かない君になんて返せばよかったのか、僕はいまだに答えを知らない。

12/3/2023, 2:46:16 PM