子猫 …?少し夜の大人のような雰囲気になってしまいました。苦手な方は飛ばしてください
酔いに酔って随分心地の良い彼はまるで子猫のように私に擦り寄り甘えてくる。頬から胸の順に顔を擦り付け、そのまま私の揃えた足の上に頭を乗せて目を閉じる。
2人っきりの時にしか見せない彼の甘えたな態度に私も気分が良くなる。心地よさそうに眠る顔を撫でると、子猫のように私の手に頬擦りをする。その様子を見て堪えきれず静かに笑う「まるで子猫みたいね」そう言い終わる前に、彼が急に起き上がったかと思えば私をあっという間に押し倒し「子猫はこんなことするのか?」と目を三日月のように細めほくそ笑む。急なアルコールの強い匂いと、彼から漂う妖艶さにクラクラしていると彼が私に倒れ込む。
暫くすると彼から静かな寝息が聞こえてきた。重い彼をやっとの事で退かせ毛布をかけて彼を見る。丸まりながら寝ている彼は少し大きめな猫だな、なんて考えながら。
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秋風
秋風が吹く少し肌寒い夕方、私が新作のコンビニスイーツを食べたいとただをこねて、全く乗り気でない彼を引っ張り外へ出る。初めはブツブツと文句を垂れていたが、何だかんだ着いてきてくれるあたり彼はとても優しい人だと思う。
「さみぃ」少し気が早い彼はもうマフラーをみにつけ顔を埋める。歩いたらあつくなるよ、そう言っても彼は素知らぬ振りをする。
暫く静かに歩いていると、強く風が吹き私たちを縮こませた「さむい~」きゅっと肩を上げポケットに手を入れようとすると、彼のカサついた大きな手がそれを拒む。少し驚いて彼の顔を見る、そっぽを向いた彼の耳は赤く染ってた。
「寒いの?」そう尋ねると、彼はちらりとこちらを一瞥し鼻で笑った。「お前が寒そうにしてたからな」そう言いながら彼の大きな手に繋がれた私の手が彼のポケットに仕舞われる。暖かいねありがとうと彼をみて告げると彼は私の目を見て愛しそうにまた鼻で笑った。
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また会いましょう
新しくサークルに入ってきたusmくんはなんというかとても不気味だ。こんな事誰にも言えないなと思いながら彼をちらりと見る、見た目は可愛げがありとても明るい印象だが、たまに見せる薄暗く妙に威圧感がありじっと人を品定めする彼の顔はとても恐ろしい。初めて彼の恐ろしい顔を見た時はおもわず冷や汗が流れた、その日から彼のことはできる限り避けている。ある日いつものサークルの飲み会に参加していると、彼がいつの間にか隣にいた、ゾッとしてちょっと外の空気吸ってくると伝え急いで席を立つ、後ろは怖くて振り返ることは出来なかった。
「怖かった…」思わず声に出して息を吐く、すると後ろで足音が聞こえる。「先輩、僕のこと怖いって思ってたんですか~?」ヒッとか細い声が漏れる、そこにはにこにこした笑みを貼り付けこちらをじろりと見てるusmが居た。急いで先程の発言を否定するが全く話を聞いてくれない、「悲しいなぁ~僕先輩のこと気に入ってるのに」そんなに関わってないのに何を気に入るのか、本当に彼の考えは分からない。彼が近づく度に私が後ろに下がってるといつの間にか壁がすぐ後ろにあった。「壁に着いちゃいましたね」彼はヘラヘラと笑いながらスマホを取り出す、何をするんだ?全く彼の行動が読めない。震えていると彼が「連絡先交換しましょうよ」と提案してきた。とっさに拒否しようとしたが、拒否したら何されるのか分かったもんじゃない、こくこくと小さく頷いて連絡先を交換する。「わーいありがとうございます先輩~さっさと戻ってきてくださいね、先輩いないと来た意味ないですし」それじゃ~とご機嫌に鼻歌を歌いながら彼は戻って行った。彼に振り回され唖然としてると小さく携帯が震える、画面を見るとusmからだった。
「また今度2人きりで会いましょう」
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ススキ
夏の暑さが残る9月下旬。家の前にある河原のススキが揺れるのをぼうっと眺めていると、揺れるススキの中に懐かしい彼が居た。急いで外に出て彼の名を呼ぶ「msmさん!」彼が振りかえって私に手を振る、足が濡れるのを厭わずに真っ直ぐに伸びるススキを折るように掻き分け突き進む。
貴方から手紙が返ってこなくなったのはもう何十年も前の事ね、私あなたのために色んな縁談を断って、お父様に沢山叱られたわ。そんな考えを浮かべていると、足がもつれて池に転びそうになる。そっと彼が私を支え私の名前を呼んで微笑む。「相も変わらずそそっかしいね君は」あぁ優しい声で、私を愛しそうに目を細めて見る懐かしい貴方。
「何年も想い続けて居ました」涙をぼろぼろとこぼし逞しい腕のあなたに包まれあなたの胸の中で泣く。
「うん、もうこんなにおばあちゃんになっちゃったね」そうよ私あなたの事をうんと待ってたもの。「今度こそは一緒に行こうね」そのためにお迎えに来たんだよと彼は悪戯げに笑う。「さぁ行こう」そう言って差し伸べる彼の手を私は強く握って笑う。
「今度こそはきちんと式をあげよう僕と君との」
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補足
ススキが折れるように▶️ススキの花言葉は「生命力」「活力」そんなススキを折ってるから何となく死をイメージしたけど伝わらない気がする。そんなススキを折るように進んでる時点で進んでる彼女は死んでる
一緒に行こう▶️生前は式を挙げる前に戦場に駆り出されたので、あの世で式をあげるため彼女が天寿を全うするまでずっと待ってた(早めに命を終わらせることは出来たが愛しい彼女なのでそんなことは出来なかった)
脳裏
澄んだ空気が漂う朝「どうか、ご無事で」俺の手を震えながら握るあいつは今にも泣きそうだった、「おう、お前の飯が一等美味いからな、お前の飯食うためにちゃんと帰ってくるぜ」なんて軽口を言ってもあいつは笑わずただ伏せた目から大粒の涙を零すだけ。頬を少し掻き「……なぁ、最後くらいお前の笑った顔見てぇな…」言ってるうちに恥ずかしくなって声が小さくなる。ちらりと彼女の顔を見ると涙を貯めた目を見開き笑う「そうですよね、ごめんなさい」泣きながら笑う彼女が愛しくなって静かに抱きしめる、彼女もまた泣きながら俺に抱きしめ返す、あぁ行きたくない、逝きたくないな。
ヒグマに投げられ自分の体が壊れていくのを僅かに感じる。脳裏に浮かんだのは最後に見た泣きながら眉を下げ笑うあいつの顔。
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