ミミッキュ

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8/19/2023, 11:19:04 AM

"空模様"

「あ、ここ…」
散歩がてら街を散策していると、見覚えのある場所に来た。
「懐かしいなぁ…よくここに来て勉強してたっけな…」
俺が高校生の時よく勉強に使ってたガラス張りの室内テラスだった。あの時と同じ景色を見たくなってテラスに入って、あの時よく座ってた席に座りコーヒーを頼んだ。外の景色に目をやると、綺麗な青空が広がっていた。
「……あの時と同じだ。」
つい嬉しくて笑顔になって、テーブルの反対側にあの時の自分を投影する。もくもくと勉強しながらも手を止めてコーヒーを啜り、また手を動かして勉強を再開する。あの時の自分を思い出してまた笑う。コーヒーが来たので、今の自分もコーヒーを啜る。コーヒーの味もあの時と何も変わってなくて、また嬉しくなった。分からない問題にぶち当たった時とか、散々やった問題の答えをテストで間違えた時とかはイライラして、何で何で、って自分を責めながらもがいてたなぁ。その度にここに来て、こうやってコーヒーの良い香りと共に空を見て心を落ち着かせてた。そして自分への苛立ちをバネに変えて、このまま夢を終わらせたくない、って半ば意地になって勉強を再開してた。あの時の自分をまた思い出しながらコーヒーを啜り、また外を見る。あの時と同じ感覚になり、何だかじっとしてらんなくなって残りのコーヒーを飲み干し、お代を払って外に出て、足早に廃病院へと帰った。

8/18/2023, 10:53:50 AM

"鏡"

鏡は全てを映す。良いものも、悪いものも、全て映し、全てを示す。それは自分の容姿だけじゃない。見たくない自分までも、見て見ぬふりをして目を背けていた自分までも無惨に映してくる。けれど鏡の中の、目の前にいる影の自分は俺に、今の俺の姿を、俺が今まで考え思った事を全て言葉にして、俺ですら知らなかった"俺"を形にして。そしてこれからやるべき事を、いるべき場所を教えてくれた。この影も俺なんだ。今まで見て見ぬふりをして、目を背けて、ごめん。一人ぼっちにしてごめん。俺がいなきゃお前がいないし、お前がいなきゃ俺がいない。これからは…、ううん。これからも一緒にいてくれ、…俺。

8/17/2023, 10:17:55 AM

"いつまでも捨てられないもの"

居室の整理をしていると、ある物が視界の端に入りそれが入った箱を自分の前に出し蓋を開ける。
「おぉ、懐かしい。」
その中に入ってたのは医学生の時使っていたリングノート達だった。箱の中にはリングノートが隙間なく詰まっていて、その中から一冊取り出しパラパラと捲っていくと、1ページ1ページ当時の自分の字が綺麗に収まっていて、中には息抜きで描いた猫やら兎やら鳥やら、ゆるい絵柄の動物の落書きがあったり、所々にある周りのメモの様な文も「?」とか「!」とか使ってたりして何だかゆるい感じで思わず、クスッ、と笑う。筆跡は今の自分のとほぼ変わっていない。身なりはだいぶ変わったけど、"花家大我"という人間の根本は何一つ変わっていない事を思わせる。
そして箱の中に収まっているリングノート達を見る。視線を移すと、蓋の隙間からリングノートが詰まっている箱が幾つもあった。あの時の、純粋に夢を追っていた自分を思い出して、何だか微笑ましくなった。
一応医者にはなったが、医者では無くなって廃病院で闇医者をやっているが、何も後悔はない。俺の今までは全部繋がっている。今はまたドライバーとガシャットを手にして、また戦っている。俺以外にもライダーがいる事とそいつらと一緒に戦っている事はあの時と違うが。
──いつかまた、"ヒーロー"に、もう二度と"悲劇のヒーロー"なんて呼ばせない。
パタリ、と開いていたリングノートを閉じ、収まっていた箱の中にしまう。そういえば整理の途中だった。
──……こういうのは、捨てられないなぁ…。
そう思って蓋を閉じ、箱を元の場所に戻して再開した。

8/16/2023, 10:34:56 AM

"誇らしさ"

住宅街を歩いていると、ふと公園の花壇に咲く花々が目に止まり花壇の傍に歩み寄って、そよ風に揺れる花々を見る。
「今年も綺麗に咲いたな」
と、花達に優しく語りかける様に独り言ちる。
花は凄い。どんな場所にだって根付き茎を天に伸ばし蕾を膨らませ、様々な形、大きさ、色の花を咲かせる。自身の美しさや可憐さに揺るがず懸命に咲き誇る花達は本当に凄いし、ちょっぴり羨ましくもある。人間は皆、絶対的な自信なんて持っていない(例外は少なからずいるが)。"猿も木から落ちる"ということわざがある様に、どんな達人だって練習を怠れば素人同然になる。だから慢心し油断するのはどんな世界だっていけない事だ。けれど…
もし俺が、自身の強さに揺るぎない自信を持ったなら、この花達の様に気高さと誇らしさを見に纏えるのなら…。何も無い俺でも、未来を変えられるだろうか?
「…ハッ、なぁんてな。」
訳の分からない事を考えた自分に鼻で笑いながら立ち上がり、公園を出て再び住宅街を歩き出した。

8/15/2023, 10:58:35 AM

"夜の海"

今日はお互い休みなのでドライブデート──日中は暑いので夜中──で夜の海に来た。今夜は綺麗な月が見られるということで目的地を海に、せっかくなら途中の店でおにぎりやらサンドイッチやらを買って晩飯を済ませようと、今は夜風と潮風に吹かれながら海の近くのベンチに座りながら買ってきた食べ物を食べている。さっき寄った店でラムネも買ってきたので、ラムネも飲みながら晩飯を済ます。開ける蓋になっていたビー玉が中に、カラン、と音を立てて中の炭酸がシュワシュワと溢れ出そうになって少し慌てたが溢れはせず、ホッ、と胸を撫で下ろす。横から小さな笑い声がして隣を見ると飛彩が口に手を当てて笑っていた。ムッ、と睨むと「済まない」と謝罪する。プイ、と正面を向いてラムネを仰る。爽やかな炭酸と懐かしい味が口に広がり喉を通り、懐かしさと夏を感じて頬が緩む。
買って来た食べ物を平らげ、ラムネもお互い飲み干すとラムネの瓶を顔の前に持ってきて、瓶越しに海と月を見た。まるで目の前の景色を瓶に詰めたみたい。瓶を少し傾けると、カラン、と中のビー玉が動いた。とても綺麗だなぁ、と見ていると急に瓶を持っていない方の腕を掴まれた。驚いて振り向くと
「…貴方がどこかに、消えてしまいそうで…。」
と言われた。言い方がたどたどしく表情も戸惑った様子で、なんで掴んだのか自分でも分からないんだろうな、と思った。持っていたラムネの瓶を横に置き、反対の腕を掴む手に、そっと重ねて
「大丈夫だ、テメェを置いて黙って行ったりしねぇよ。」
柔らかく優しい声色で言うと安心したのか、掴んでいた手を離した。離したと思ったら視線をこちらに向けてきて、俺も飛彩を見てお互いの視線を合わせる。何秒か目を合わせていると自然と瞼を閉じて、数秒閉じたままでいると唇に温かな感触が伝わる。ラムネの爽やかな味がして、夏だなと改めて思った。

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