"いつまでも捨てられないもの"
居室の整理をしていると、ある物が視界の端に入りそれが入った箱を自分の前に出し蓋を開ける。
「おぉ、懐かしい。」
その中に入ってたのは医学生の時使っていたリングノート達だった。箱の中にはリングノートが隙間なく詰まっていて、その中から一冊取り出しパラパラと捲っていくと、1ページ1ページ当時の自分の字が綺麗に収まっていて、中には息抜きで描いた猫やら兎やら鳥やら、ゆるい絵柄の動物の落書きがあったり、所々にある周りのメモの様な文も「?」とか「!」とか使ってたりして何だかゆるい感じで思わず、クスッ、と笑う。筆跡は今の自分のとほぼ変わっていない。身なりはだいぶ変わったけど、"花家大我"という人間の根本は何一つ変わっていない事を思わせる。
そして箱の中に収まっているリングノート達を見る。視線を移すと、蓋の隙間からリングノートが詰まっている箱が幾つもあった。あの時の、純粋に夢を追っていた自分を思い出して、何だか微笑ましくなった。
一応医者にはなったが、医者では無くなって廃病院で闇医者をやっているが、何も後悔はない。俺の今までは全部繋がっている。今はまたドライバーとガシャットを手にして、また戦っている。俺以外にもライダーがいる事とそいつらと一緒に戦っている事はあの時と違うが。
──いつかまた、"ヒーロー"に、もう二度と"悲劇のヒーロー"なんて呼ばせない。
パタリ、と開いていたリングノートを閉じ、収まっていた箱の中にしまう。そういえば整理の途中だった。
──……こういうのは、捨てられないなぁ…。
そう思って蓋を閉じ、箱を元の場所に戻して再開した。
8/17/2023, 10:17:55 AM