ミミッキュ

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"夜の海"

今日はお互い休みなのでドライブデート──日中は暑いので夜中──で夜の海に来た。今夜は綺麗な月が見られるということで目的地を海に、せっかくなら途中の店でおにぎりやらサンドイッチやらを買って晩飯を済ませようと、今は夜風と潮風に吹かれながら海の近くのベンチに座りながら買ってきた食べ物を食べている。さっき寄った店でラムネも買ってきたので、ラムネも飲みながら晩飯を済ます。開ける蓋になっていたビー玉が中に、カラン、と音を立てて中の炭酸がシュワシュワと溢れ出そうになって少し慌てたが溢れはせず、ホッ、と胸を撫で下ろす。横から小さな笑い声がして隣を見ると飛彩が口に手を当てて笑っていた。ムッ、と睨むと「済まない」と謝罪する。プイ、と正面を向いてラムネを仰る。爽やかな炭酸と懐かしい味が口に広がり喉を通り、懐かしさと夏を感じて頬が緩む。
買って来た食べ物を平らげ、ラムネもお互い飲み干すとラムネの瓶を顔の前に持ってきて、瓶越しに海と月を見た。まるで目の前の景色を瓶に詰めたみたい。瓶を少し傾けると、カラン、と中のビー玉が動いた。とても綺麗だなぁ、と見ていると急に瓶を持っていない方の腕を掴まれた。驚いて振り向くと
「…貴方がどこかに、消えてしまいそうで…。」
と言われた。言い方がたどたどしく表情も戸惑った様子で、なんで掴んだのか自分でも分からないんだろうな、と思った。持っていたラムネの瓶を横に置き、反対の腕を掴む手に、そっと重ねて
「大丈夫だ、テメェを置いて黙って行ったりしねぇよ。」
柔らかく優しい声色で言うと安心したのか、掴んでいた手を離した。離したと思ったら視線をこちらに向けてきて、俺も飛彩を見てお互いの視線を合わせる。何秒か目を合わせていると自然と瞼を閉じて、数秒閉じたままでいると唇に温かな感触が伝わる。ラムネの爽やかな味がして、夏だなと改めて思った。

8/15/2023, 10:58:35 AM