"空模様"
「あ、ここ…」
散歩がてら街を散策していると、見覚えのある場所に来た。
「懐かしいなぁ…よくここに来て勉強してたっけな…」
俺が高校生の時よく勉強に使ってたガラス張りの室内テラスだった。あの時と同じ景色を見たくなってテラスに入って、あの時よく座ってた席に座りコーヒーを頼んだ。外の景色に目をやると、綺麗な青空が広がっていた。
「……あの時と同じだ。」
つい嬉しくて笑顔になって、テーブルの反対側にあの時の自分を投影する。もくもくと勉強しながらも手を止めてコーヒーを啜り、また手を動かして勉強を再開する。あの時の自分を思い出してまた笑う。コーヒーが来たので、今の自分もコーヒーを啜る。コーヒーの味もあの時と何も変わってなくて、また嬉しくなった。分からない問題にぶち当たった時とか、散々やった問題の答えをテストで間違えた時とかはイライラして、何で何で、って自分を責めながらもがいてたなぁ。その度にここに来て、こうやってコーヒーの良い香りと共に空を見て心を落ち着かせてた。そして自分への苛立ちをバネに変えて、このまま夢を終わらせたくない、って半ば意地になって勉強を再開してた。あの時の自分をまた思い出しながらコーヒーを啜り、また外を見る。あの時と同じ感覚になり、何だかじっとしてらんなくなって残りのコーヒーを飲み干し、お代を払って外に出て、足早に廃病院へと帰った。
8/19/2023, 11:19:04 AM