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5/30/2024, 2:44:35 PM

みてるのかな、見てませんように

12/1/2023, 6:22:59 AM

弟が不登校になった。
学区内で1番頭のいい公立高校の合格を蹴って、有名大付属の私立に入ったくせに不登校になった。
私の家はシングルマザーで、金銭的余裕がなかった。
年子だったこともあって私の受験の時、母はこれでもかとプレッシャーをかけた。
普通どこかの高校には行けるようにと公立高校だけでなく私立高校に併願をかける。それすら許されなかった。
頭が良ければレベルを下げればいい、けれど私は馬鹿だったから学区内で1番頭の悪い高校もC判定だった。
面接練習を死に物狂いで頑張って、なんとかその高校に推薦で入ったけれど空気感が合わず2年になって不登校になった。
ずっと弟が羨ましかった、弟は私と違って私立の併願を何校も受けさせてもらえて、ずっと行きたいと願っていた私立高校に入れさせて貰えた。そもそも公立と私立では設備が違うのだ、私の第一志望は県内でも有数の吹奏楽強豪校だった。そこで演奏がしたかった。
それなのに、不登校になるなんて絶対に許せない

弟が不登校になってから家庭環境は劣悪だった。
誰もご飯を食べない、誰も会話をしない。
母も鬱のようになった。私も弟も腕はリスカの跡でいっぱいになった。
1度だけ、弟と殴り合いの喧嘩をした。
お互い学校にいけと言って最初に手を出したのは向こうだった。泣きながら殴ってきた。
弟が泣く姿を見たのはこれが最後だった。

学校のカウンセラーに心療内科を勧められた。
睡眠が取れず1週間の平均睡眠時間は15分だった。
家だと落ち着かずずっとベランダから夜空を眺めて本を読んでいた。眠れなかった。
一緒に無理やり弟を引きづって連れていった。
心療内科なんて行かなくていいといった母と祖母に泣きながら「弟はこのままだと死ぬ、人殺しになりたいのか」と訴えた。

弟は電車に乗れなくなっていた。
だから途中で何回もおりて休んだ。
2人とも無言だった。
診察を終えてから2人で祖父に供える花を選んだ。
毎回の恒例行事にした。少しでも外に出したかった。
2人とも体調のいい日は、駅ナカのカフェでお茶をした。
弟は紅茶を、私はシフォンケーキを頼んだ。

それから暫くして、コロナで学校が休校になり、引きこもりが合法化された。
母も落ち着いて、3人でよくご飯を食べるようになった。
それまでは3人でご飯と言ったら外食だったけれど、母がご飯を作るようになった。
皆でアニメを見ながら食卓を囲んだ。

休講期間が開けて、弟も私も学校に行くようになった。
私は大学生になった。夢の看護学生になった。
弟も大学生になった。一時期そのまま付属大への進学は難しいと言われていたけれどなんとかなった。
私は学校を留年した。医者に言われたようにメンタルがもたなかった、合わないらしい看護業界は。
弟は家に返ってこなくなった。たまに帰ってきても朝帰りで死んだように眠りにつく。夜になると女の子と電話をしている。

今、病院には1人で通っている。
通うのがしんどくなって通ったり通わなかったりを続けている。
あの時余裕がなくて見ることの出来なかった駅ビルを見に行くと、無印やLOFTなどが入った大きい施設だということに気がついた。
病院からは綺麗な景色が見える。

10/2/2023, 5:27:20 AM

深夜0時50分、生活習慣を直したくて21時に寝たのに起きてしまった。仕方が無いので作業をしていると、みな寝ているはずなのに私のスマホには1件のメッセージが届いた。
「今東京にいるよ」
送り主は九州地方に住む友達からだった。まだ高校生で大抵私から適当に写真を送り付けるくらいで向こうから連絡が来たのはこれが初めてだった。
「うそ!何してるのこんな時間に早くねなさい」
「羽田空港に向かってるの」
もう深夜1時近い。空港まで向かう終電は確か0時だったはずで、どこかで迷子になってるのではないかと心配になった。
「向かってるの?いま外?」
「うん。途中まで来たけど電車なくて、ホテルにも帰れないから歩いてる」
「どこのホテル?」
聞き出すと現地から歩いて3時間かかるらしい。空港に結局行けなかったので始発で向かわなければならないと言われたが、相手はまだ高校生、東京は夜とても治安がわるい。
「いくよ、安全なところで待ってて」
車の鍵を手にして家を飛び出した。

自分でもこんなことをすることに驚いていた。
ネットで知り合った人に会うのに抵抗がないわけではない、自分から出向くのは3回目だった。迷いがなかった訳では無い、相手は高校生で法に触れるとか、私以上にリア凸に抵抗がある子だということはよく知っていたから本当に行っていいのかとか、こんな夜中だからメイクもせず部屋着で飛び出してきてしまったとか色々考えたけれどそれ以上に心配が勝ってしまっていつもより少しだけスピードをあげて向かった。

待ち合わせ場所を告げると確かに、人がいた。
車の色とナンバーを伝えてあったからこちらに手を振ってくれて、間違いがないなと思った。
3年ほぼ毎日話をしてるのに会ってみると何を話せばいいのか分からなくて困った。たった20分、泊まるホテルの最寄り駅まで送り届けるだけだったけれど楽しい時間だった。

送り届けてから、車内に1人残ってまず感じた感情が寂しいだった。これにも驚いた。
明日には帰ると言っていた。思わず車をおりる姿を見て「またね」と声をかけてしまったが、顔を合わせる機会なんてあるのだろうか。
普通の生活を送っていたら本当は会わなかった人、なんとなく昔のことを思い出して耐えられないなぁと失笑した。
私にとって、ただ行くだけでよかった。飛行機を降りたら駐車場で待ってくれていて隣に座る。運転してるところ眺めながらたまにちょっかいをかけて見たりして
いい意味でも悪い意味でも私の生活の中に浸潤していたから別れてから切り離さなければいけないのが辛かった。できなくて本当に苦しかったけれど、きっともっと日常生活に浸潤していたのだろう。
あの時伝えようと思えばいくらでも伝えられたことがいまはせき止めなければ行けなくて、伝えられなくて
たまに無性に叫びたくなってしまう。もう言いたくなってしまうけれどそれができなくて
きがついたら1年が経過していた。

「遠距離はつらいね」
近距離だったら助手席にいくらでも載せられる。
気軽に誘えるし、いつでも会える確証がある。
けれど遠距離はいつでも会えない、会える回数が決まっている。
それでもどことなく追いかけてしまうのは何故なのだろう
伸ばし始めた髪の毛を切る勇気が持てないから、ずっとずっとここで1人佇んでいる。

7/7/2023, 1:46:42 PM

七夕

「彦星に会いたい。…彦星に、逢いたい」
天の川の東と西に別れて暮らすように言い渡されてから何日がたったのだろうか。
何もする気になれない。ご飯も要らない。ただ頭の中に浮かぶのは彦星の笑顔だけで、ついこの前までずっと一緒にいてくれたのに、隣にあったはずの温もりが無くなってしまったことを痛感して心が締め付けられる日々だった。
起きている間はとにかく彦星のことを考えてしまう。
東側にはかわいい女の子たちがいるだろう。彦星はきっと私の事なんてすぐに忘れてしまう。その子達の中から生涯の伴侶をみつけるのだろう。
“織姫のことは忘れてしまおう”
“織姫とのことは無かったことにしてしまおう”
何れそうなるに違いない。私と過ごした時間は、あの幸せだった時間は一体なんだったんだろう。
優しい眼差しを私以外に向けているのだろうか。
きっと彦星は素敵な方だから、好意を寄せる人は数多いる。目の前に広がる天の川を何時だか2人で眺めた時はきらきらと輝いていたのに、今は恨めしかった。

「7月7日の日にだけなら会っても良い」
そう言ってくださったから頑張って綺麗なはたを織った
彦星のいる東側にも届くように、とびきり綺麗なはたを織り続けた。それなのに、
「川が増水して渡れない!?何故!?」
年に1回しか会えないのに、何故か7月7日は毎回雨だった。目の前の天の川は今にも溢れそうな水位で、これでは渡れない。

きっとこれが運命なんだよ、彦星よりいい人は沢山いる
そう受け入れるよう周りは私のことを説得したけれど、
日々が楽しくなることは無かった。
今日もはたを織り続ける
いつか、何時かきっとまた彦星に逢えることを願って







吹奏楽の曲に「Tanabata」というものがあります
コンクールの課題曲でした
曲中の中の織姫と彦星はきっと年に1回逢えることをとっても幸せにしていて「その日があるから頑張れる」と遠距離恋愛を前向きに捉えられているんだなと演奏してて思いました
遠距離でも、たとえ年に1回しか会えなくても互いに巡り会えたことが幸せなんだと、きっとそんな作品だから明るい音が並ぶんだなと思いました。
現実の遠距離恋愛はそんなに上手く行かないことの方が多くて、どうしても近距離に勝るものは無くて
世の中の遠距離恋愛をされている方々が幸せな未来を歩めますように。
あわよくばもう辛い想いをしませんように( ¨̮ )

6/22/2023, 3:13:13 PM

蝶々結び

「幼なじみの男の子と距離近すぎない?いつか彼にも彼女ができるんだろうし邪魔しちゃダメよ」
その“彼女”というのはあなたの息子ですよと言ったら母はどんな顔をするだろうか。
まだまだ同性愛に対しての偏見が強いこの国で僕たちが手を繋いで歩くことは難しかった。
幼稚園の時からずっと一緒の彼に対する恋心を自覚したのは小学生の時だった。彼はかっこよくて性格もいいからもてる。彼女が出来たという報告をきく度にベットに潜ってひとり泣いた。
感情を抑えきれなくなり、泣きながら伝えて縁を切ろうとしたら向こうも同じ気持ちでいてくれていることを知った。友達がパートナーになったけれど四六時中一緒なのは変わらなかった。それなのに、母親の感というのはなんと鋭いものなのだろう。
問い詰められて言わざるを得なかった。異端視されるのは覚悟していたけれど実際にされるのは辛かった。
「好きなら相手の子の幸せを願いなさい。」
そう言われてはっとした。何となく避けるようになった。学校も部活も一緒だから話しかけてくれるけれど、そうするしかなくて辛かった。けれど相手はその方が幸せになれると思ったから別れる決心をした。

家を5時に出る。少し早めにグラウンドについて体を温める。今日の放課後言おうと思って緊張して寝付けなかったからか、体がなかなか温まらない。
寒い。震えが止まらない。寒さからだろうか、きっとそうだと信じたい。彼が隣にいてくれなくて自分はこれからどうしたらいいんだろう。そんなことを考えてしまって気が落ち込んだ。イヤフォンからは一緒によく聞いていた曲が流れて楽しくて幸せな日々を思い出してしまって、いつの間にか地面に小さな池が出来上がっていた。
「おはよう」
はっと顔を上げると、大好きな人がいた。
「泣いてるの?」
そう言って涙を拭ってくれるから余計に止まらない
もう触れないでって思わなければいけないのに、優しい手つきが嬉しいとしか思えなかった。
「あのね、別れよう」
「どうして」
「幸せになれないよ、同性婚は認められてないし子供も作れない。子供大好きなの知ってるよ。それに周りから気持ち悪がられる。この後もこういうの続くって考えると耐えられないんだ」
「靴紐、解けてる。」
僕が放った言葉に触れることなく彼はしゃがみ込んだ。
いつも解けてしまう靴紐を結んで?と頼むと結んでくれた、それもこれで最後なんだ
自分から別れを切り出したくせに哀しくて仕方がなかった。別れて、女の子と前みたいに付き合っていつか結婚して子を成すのだろうか。
どうして男に産まれてきてしまったんだろう、
どうして出逢ってしまったんだろう
どうして、好きになってしまったんだろう。

「解けても何度でも何回でも結び直すよ。不器用だけど綺麗な蝶々結びになるように。」
いつも一緒に聴いている曲だった。
「一緒にいたい。周りから認められなくてもいい。隣にいてくれることが何よりの幸せだから。ずっと結ばせて欲しい。」
起きたお日様の光を浴びて輝く蝶々は、今までの蝶々の中でも1番綺麗でゆっくりと羽を休めた。
「また結んでくれる?」
そう尋ねると優しく微笑みながら頷いてくれた。

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