深夜0時50分、生活習慣を直したくて21時に寝たのに起きてしまった。仕方が無いので作業をしていると、みな寝ているはずなのに私のスマホには1件のメッセージが届いた。
「今東京にいるよ」
送り主は九州地方に住む友達からだった。まだ高校生で大抵私から適当に写真を送り付けるくらいで向こうから連絡が来たのはこれが初めてだった。
「うそ!何してるのこんな時間に早くねなさい」
「羽田空港に向かってるの」
もう深夜1時近い。空港まで向かう終電は確か0時だったはずで、どこかで迷子になってるのではないかと心配になった。
「向かってるの?いま外?」
「うん。途中まで来たけど電車なくて、ホテルにも帰れないから歩いてる」
「どこのホテル?」
聞き出すと現地から歩いて3時間かかるらしい。空港に結局行けなかったので始発で向かわなければならないと言われたが、相手はまだ高校生、東京は夜とても治安がわるい。
「いくよ、安全なところで待ってて」
車の鍵を手にして家を飛び出した。
自分でもこんなことをすることに驚いていた。
ネットで知り合った人に会うのに抵抗がないわけではない、自分から出向くのは3回目だった。迷いがなかった訳では無い、相手は高校生で法に触れるとか、私以上にリア凸に抵抗がある子だということはよく知っていたから本当に行っていいのかとか、こんな夜中だからメイクもせず部屋着で飛び出してきてしまったとか色々考えたけれどそれ以上に心配が勝ってしまっていつもより少しだけスピードをあげて向かった。
待ち合わせ場所を告げると確かに、人がいた。
車の色とナンバーを伝えてあったからこちらに手を振ってくれて、間違いがないなと思った。
3年ほぼ毎日話をしてるのに会ってみると何を話せばいいのか分からなくて困った。たった20分、泊まるホテルの最寄り駅まで送り届けるだけだったけれど楽しい時間だった。
送り届けてから、車内に1人残ってまず感じた感情が寂しいだった。これにも驚いた。
明日には帰ると言っていた。思わず車をおりる姿を見て「またね」と声をかけてしまったが、顔を合わせる機会なんてあるのだろうか。
普通の生活を送っていたら本当は会わなかった人、なんとなく昔のことを思い出して耐えられないなぁと失笑した。
私にとって、ただ行くだけでよかった。飛行機を降りたら駐車場で待ってくれていて隣に座る。運転してるところ眺めながらたまにちょっかいをかけて見たりして
いい意味でも悪い意味でも私の生活の中に浸潤していたから別れてから切り離さなければいけないのが辛かった。できなくて本当に苦しかったけれど、きっともっと日常生活に浸潤していたのだろう。
あの時伝えようと思えばいくらでも伝えられたことがいまはせき止めなければ行けなくて、伝えられなくて
たまに無性に叫びたくなってしまう。もう言いたくなってしまうけれどそれができなくて
きがついたら1年が経過していた。
「遠距離はつらいね」
近距離だったら助手席にいくらでも載せられる。
気軽に誘えるし、いつでも会える確証がある。
けれど遠距離はいつでも会えない、会える回数が決まっている。
それでもどことなく追いかけてしまうのは何故なのだろう
伸ばし始めた髪の毛を切る勇気が持てないから、ずっとずっとここで1人佇んでいる。
10/2/2023, 5:27:20 AM