なかじ~

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8/30/2024, 1:56:50 PM

数年ぶりに訪れた、インドネシアのバリ島。
夕食帰り、日本より幾分か過ごしやすい夜風に吹かれながら入った店で、とっておきの香水に出会った。
棚いっぱいにところ狭しと並ぶ香水、香水、テスター。あてもなく、パッケージと英単語の羅列を見ているとき、ふと目に留まった。
’lost in tokyo’_東京の迷い子。
’under malibu ocean’_マリブ海の水面下。
そして、’memory of Paris’_「パリの記憶」
私の手に少し香りを纏わせたとき、身体中を爽やかな優しい甘さが吹き抜けて、心が穏やかに凪いだのを、憶えている。
一目惚れといっていいのだろうか。この香りを纏えたら、柔らかな揺蕩いに落ちていける気がした。
森林、山村、海洋、花畑、雑踏、どの言葉にも属せない、なんとなく、私の思い描いていたパリとはイメージが違っていたけど。冷えきった冬の早朝に、バニラの香るベルモットを溶かしたような、優美で爽快な香りだった。

日本に帰ってきた今、あの香りを纏いたいとか思っていたくせに、まだ一度しかこの香水を使えていない。
私はパリの記憶を着付けたところで、誰にも届かない。だから、初めて好きな人に送った手紙に、私の代わりに絡ませた。

きっと香りなど、届いたときには消えていたのでしょう。それでもいいや、と思えた。
いつか彼に直接出会えたときに、残り香として憶えていてくれたら、なんて。

8/20/2024, 1:55:59 PM

「皆、さよなら」
と言ったとき、上手く笑えていたか分からない。
私なりの笑顔を乗せたつもり。だけどあまりにも寂しくて、別れなんて信じられなくて、ただ、帰りたくなくて。
さよならは笑顔で、なんて漫画の人物にしかできない。だって、もう会えるかも分からないのに笑えるなんて。
好きな人に。

失恋を引き摺りながら人生を歩いて、その先で夏のキャンプに参加した。
そこで出会った彼が、出会ってから、ずっと脳裏に焼き付いていた。
キャンプのリーダー役に、少し不安げな顔をしていた。
小さい子から押し付けられた食事を、「使命感で食べてる感じ」と言って笑って食べていた。
私がこそっと脇に触れたとき信じられないほどびっくりして、そこから擽りが弱いと小さい子たちにばれて、あまりにもひっくりかえって笑うものだから、ダンゴムシとかエビとか呼ばれていた。
寒そうにしているちびっこに自分の上着を着せてあげていた。
食事で押し付けられた揚げ物用のレモンに、なぜだかかぶりついて酸っぱい酸っぱいと言っていた。
目を閉じれば、そんな柔らかくはにかむ彼の姿を思い出す。
最初は興味とかあんまりなかったのに、ただ、同学年だなぁ、としか思わなかったのに、気づけばいつも姿を探していた。好きになったなんて、信じがたかった。

さよならを言う前。
さよならを言いたくなくて、いつもみたいにまた後でって言いたくて、でももう時間はなくて。
さよなら、って、言いたくなかった。
さよならを言ったら、何もかもが終わってしまう気がした。
忘れられてしまう気がした。
覚えていてほしかった。
私のことを。
私の感触ごとを。

「」
彼の名前を呼んだ。
立ち上がってくれた彼に、
ありがとう、と、忘れないで、を伝えたくて、さよなら以外を伝えたくて、覚えていてほしくて、
ただ抱きついた。
「ありがとうね」
言いたかった言葉が喉の奥でつかえる。
「最高のリーダーだったよ」
君は私のヒーローだ、なんてこっぱずかしくて言えないけど。
「かっこよかったぜ!」
またね、って言えたか、もう私が覚えていない。
ただ、私の言葉、私の感触、私のこと、覚えてほしかった。

さよならを言う前に、なるべく全てを伝えてきた。つもりだ。


さよならって言った後で、私は恋心に気づいた。

7/11/2024, 11:25:30 AM

LINEを送るのは、いつも私から。
時々、こっそり期待する。
誰かから、一件でも、LINEが来てないかなと。
できれば、好きな人から。
期待したとて誰からも来てはいないけど。
会話のように、雑談のように、メッセージが来てほしい。なんて、我が儘だろうかと失笑しながら、それでも想い人からの言葉を待っている。

6/17/2024, 1:06:16 PM

未来、を意識することが怖い。
今日明日ちゃんと生きているのか、生きれているのかすらも分からない私には、「将来を見据えて生活する」ということがどうしても出来なかった。
日々日々生きることだけで精一杯だった。
だから私は己を、出来損ないと感じている。

それでも、否が応にも未来は一日一日ずつやってくる。だから、見てみぬ振りなど出来なかった。
将来を、未来を見据えるため、友人と話すことも度々だった。
その中で、
「あの娘が見据える未来に、私も描かれていたい」
という思いが、気づけば芽生えていた。
恋情に雁字搦めな自分は、未来予想図通りに生きられるのだろうか。
不安にまみれながら、不安を飼い慣らそうとしながら、不安に襲われながら、私は未来を描く。
未来の空の下で、きちんと笑えるように。

6/7/2024, 1:23:27 PM

もし世界が終わるなら、隣で生涯を終える人にはあなたを選びたい。
今でも鮮明に憶えている。
中二と中三の頃。もう少しで生命を踏み外してしまいそうだった私を、あなたはどこまでも優しく受け止めて包んでくれた。一言だって否定することはなかった。いつだって、笑って保健室にいた。
私は泣こうが喚こうが笑おうが、いつだって味方でいて隣で支えてくれた。
あなたは遠く離れた東京へ行ってしまったね。
悲しいけど、もしかしたらもう会えないかもね。
でもね、大好きです。
せんせー。

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