(…痛)
暗い部屋、一つの灯りの元で、私は鮮やかな赤を見る。太ももに咲いたヒガンバナを。
やっぱり痛い。けれどかさぶたになってしまえば、また種を私は育てる。薬品たっぷりの肥料と、切開のための剃刀を持って。
昔は、転んだだけで痛かった。
血なんか出なくても、ただ、転んだ、それだけで痛くて、声をあげて泣いた。
いつからだろう。痛くても、泣かないようになったのは。声を出さなくなったのは。
肉体を引きずって地面を這いつくばるばかりの日々に、泣きたくなったのは。
皆つらい。しんどい。苦しい。痛い。
だから、皆我慢してるから、私一人ばっかり泣くなんて、そんな恥ずかしくて利己的なこと。
助けて、なんて、そんなこと。
(やっぱ痛いな)
暗い部屋、一つの灯りの元、声を出せない私の代わりに、太ももは静かに泣き叫ぶ。
本当はこんな肉体をぐちゃぐちゃに切り裂いて消えてしまいたいのに。
刃が肉を切る音すら聞こえない。
静寂が部屋の空気を突き刺す。
消えられない痛みを、私は体に刻みつける。
9/29/2024, 11:41:37 AM