NotNoName

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5/15/2024, 11:07:47 AM

DG01

友人曰くどうやらそれがここの看板メニューらしい
とりあえずで注文された初めてのミラノ風に身をまかせる

外食をほとんどしない家庭で育った自分にとっては
非常にリーズナブルな未知との遭遇で胸が高鳴る

5分程でテーブル上にそれは現れた
確かにこれはまごうことなきミラノ風だ
本家ミラノをまったく知らないがそんな気がする

一旦持った箸をスプーンに握り変え食べ始める
円盤上の冷めきった溶岩のようなものを掬って口に運ぶ

すると口の中にミラノの香ばしい風が吹きすさんだ
そうかこれが これこそがミラノの風なのか
米という日本の大地の上にイタリアの旋風が舞う

高鳴っていた胸が風に押し出されさらに上空へ浮かんだ
もうこの風を知らなかった日常の生活には戻れない
さよなら今までの日々よ 3枚の銀貨と共に散らん

日伊同盟の奇跡に圧倒されていると友人に笑われた
どうやら食べる度にいちいち目を閉じていたらしい
その指摘で一気に意識がすっと地上に引き戻された

5/14/2024, 9:45:30 AM

よっしゃ 今日も時間いただき

寝起きにその感覚がある人にだけ
時間を失ったと嘆いていい資格があると思う

あとプルースト読破した人もサービスで

5/8/2024, 6:02:11 AM

幼い頃に祖父母に連れられたよくわからない観光地の庭園でおそらく彼女さんである人と一緒に来ていたお兄さんに私は目を奪われた。

今思えばその頃の私は単純で年上の人にただ憧れを抱いていたのだと思う。その落ち着いた雰囲気に一目惚れした。

目の前に広がる石や樹木や池といった自然にまったく興味を持てなかったがまるで興味のあるフリをしてあまり目をお兄さんの方へ向けないように努力した。

乗る気じゃない祖父母に提案されたエサやりも喜んでやる。何かして気を散らさないと緊張してしまうからだ。渡された100円で買ったエサを手に池の前に立った。

池にエサを放り投げる直前。つい目を別の方向へ向けてしまっていた。そこにはお兄さんが彼女さんの手を取って池からを去ろうとする姿があった。

幸せそうな背中が見えていく。私は心がここにない状態でエサを放り投げていた。気が付くと祖父母のほら前を見ないさいと言う声が聞こえた。

目を前へと向けると口を大きく開けて生々しく餌に群がる生き物が大量にいる光景が入ってきた。その内の一匹が飛び跳ねて至近距離でグロテスクな目が私の目と合う。

「ゔぇ。」

私の知らない私の声が大きく出た。その直後にふふふという声が後ろからして振り返るとお兄さん達がこっちを見て笑い合っている。

忘れられない恥じらいを覚えたのはそれが初めてだった。
強烈な魚顔のせいで憧れの人の顔は今も思い出せない。

春の終わりの頃、それが私の初鯉の日だった。

5/7/2024, 6:23:32 AM

まず世界と終わるは何を指してんねん

「明日世界が終わるなら」
この話題の趣旨であるそうならばどう過ごすか以前に言葉の意味を捉えてそこまでたどり着けない

そこを言及するのはナンセンスだとわかっているが隕石が衝突する等何らかの原因で地球が滅亡し人類全滅することが世界が終わることだとすればそう表現してほしい

であればそれはメイヤスーの言う今までの科学が論理体系を組んでいた法則群が因果概念とは無関係に突如すべて崩壊しなんの原因もなく宇宙が滅ぶ可能性は常にあり得るという主張より理由があるぶん優しいシナリオだ

話題に対してナンセンスな話を続けるが世界が終わることを決定事項としてつまり間違いのない決定論的視点という人の枠組みを超越した把握を可能としていることの方が世界が終わることよりよっぽど無理があって納得し辛い

原理的に考えれば明日世界が終わるとしても人はそれを情報としてしか受け取れずできることは信じるか否かでその事実をそのまま直観的に理解することはできないからだ

色々書いたが言いたいことはどうあがいてもわからなくて突然理由もなく終わる可能性を含んだ未来がある世界の中で自分たちは暮らしていてそれが普通であるということだ

今日も普通に暮らしている

5/3/2024, 8:05:26 AM

「優しくしないでって言ってんだろうが。」

目の前で全裸の大人が私へ怒鳴っている。私が優しさを履き違えたせいだ。表裏を履き違えているパンツを気にせず怒鳴り声の主は急いで着替え部屋を出ていった。

オプションで注文されていた「豚野郎」と呼ぶのを躊躇して「ぶたさん」呼びを3回してしまったこと。要求されたビンタをする度にすみませんとつい謝ってしまったこと。その他もろもろを含め私がこの事態を引き起こした原因だ。

初めての夜職だから怖い人が少なさそうなこの店を選べばまだ安心と思っていたのが甘かった。人には優しくしなさいと言われ続けて育った私にはこの仕事は過酷だった。

しかし、早々にもう辞めてしまいたいとまでは思わなかった。私に染み付いた優しさによって誰かを不快にさせたままで終わるのは自分を許せないと思ったからだ。

まだきっと間に合うはず。ドアを開け姿を探すと廊下で店長さんとお互い大人の顔をしながら大人の話をしようとしているところを見つけた。今この瞬間にやるしかない。

「帰ってこい豚野郎、続きをしてやる。」

信じてきた優しさを反転させて私は叫んだ、いや罵った。覚悟を決めた声は震えておらず廊下を真っ直ぐ通過した。

「すみません、実はこれもプレイの一環なんです。あの子のまま延長でお願いします。」

私の声を聞いた豚野郎は少し笑みを含めながら店長さんにそう伝え体をこちら側に向けた。

私は今日、もっと優しくなれた気がする。

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