エドミヤ

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10/6/2024, 8:44:33 AM

『星座』

星座を作りたい。手に持った雑誌に掲載されている星座特集を読んでいて、ふと思い立った。

星座となる星は一言で言ってもさまざまだ。銀色に輝く星、金色に輝く星、しっかりとした形を保った星などの種類があり、選ぶのに悩ましい。加えて、星が輝く背景も種類が豊富だ。昼の青色、夜の藍色、夕日の橙色、更にはグラデーションがかった色もある。これらを背景にして輝く星たちはさぞかし綺麗だろう。

想像するとやる気が漲り、その衝動のままにあちらこちらを巡って材料を買い集めた。エプロンを着たり道具を揃えて準備は万端。

まず星を繋げて星座を作る。次に各種の空色シロップを溶かして背景を作る。今回の背景は藍色の夜空、グラデーションの夕日だ。器に背景となる液体を流し入れ、その間乾燥させておいた星座を入れる。最後に涼しい場所で冷やす。

しばらくして星座が完成した。試しに夜空を口に含む。背筋がひやりとし、口当たりの良い涼しい甘さが広がる。カリカリした星が淡く光り、食感や見た目も楽しい。夕日は時間が経つにつれて舌触りや味が変わり、口内が物寂しくなる。星は予想より目立たなかった。

星座を食べつつ考える。今回は反省点もあるが、概ね美味しくできた。さて、次は何を作ろうかと想像を膨らませた。

10/1/2024, 9:42:04 AM

『きっと明日も』

授業中のグループワーク。この時間が私は苦手だ。

私のグループは、私以外が仲良しな友達同士なのだ。話し合いでは、リーダーとなる子の友達の意見が優先的に採用されている。私の発言を取り入れること無いに等しい。無意識の選別だ。なかなかに傷つく。
それに、身内ネタで盛り上がられても困る。ネタを知らないから、私は黙って愛想笑いしかできない。

私は先生を恨んだ。このグループでは私だけがアウェーなのだ。肩身が狭くて気が重い。今日のグループワークもニコニコと相槌をうつことだけに徹した。

いつになったらこのグループワークは終わるのだろうか。授業はしばらく続く。きっと明日も明々後日も授業がある限りあのグループは必要になる。明日が憂鬱だ。
私は今日のグループの様子を思い出し、明日へのため息を吐いた。

9/30/2024, 10:21:12 AM

『静寂に包まれた部屋』

「お前いつから俺にそんな口を聞くようになったんだ」
「あんたのせいで私の人生めちゃくちゃだわ」
「いいかこれは躾だ、お前がグズだから躾けてやってんだよ」
「あんたなんか産むんじゃなかった」

その日のお父さんはいつもより機嫌が悪かった。いつもなら気にしないことも今日は気に入らなかったらしい。お腹や太ももにはできたばかりの赤々とした痣がある。痣はズキズキと痛む。

その日のお母さんはいつもより大変そうだった。怒って泣いたり、物を投げたりした。でも、それから逃げるともっと怒る。僕は黙って聞かないといけない。浴びせられる言葉は蛇のように纏わりつく。

気づくと目の前には倒れている人がいた。倒れている人たちは今日お父さんたちが来ていた服と同じ服を着ていた。顔は潰れているから誰か分からない。お父さんたちが倒れているようで少し心配になった。

お父さんたちはどこに行ったのだろう。つい先ほどこの部屋に来たばかりだったはずだ。いつの間に出て行ったのだろう。また来たら、今度は怒られるかもしれない。

けれど、いつまで経ってもお父さんたちは来なかった。僕が気づいた時、近くに金属バットが転がっていた。バットに着いていた赤い汚れはとっくに黒く変色した。
「僕はこれからどうしたらいいんだろう」
ポツリと呟いた言葉が部屋に響いた。

9/28/2024, 2:18:04 AM

『通り雨』

 出掛けようとドアを開けると雨が降っていた。今朝のニュースは今日の天気は晴れだと予報していたし、ついさっきまで晴れていた。空にはどんよりとした暗い雲はなく、爽やかな青色が広がっている。
_通り雨だろうか。出掛けようとした矢先に雨が降るとは運がない。だが、通り雨なら時期に止むだろう。

 そう思い、家の中へと戻る。ドアを閉めようとしたその時、どこからか和楽器の綺麗な音色が聞こえてきた。音色に隠れ、じゃりじゃりと以前聞いたことにある草履で歩く時の独特な足音も聞こえる。
 閉めかけていたドアの隙間から外の様子を流し見る。何かが通ったようだった。そのままドアを閉める。ドアにもたれかかり、しばらく様子を見る。

 音が遠くなった。何かが通っている様子もなくなった。試しにドアを開けてみる。雨は止んでいた。
_ああ、今日は嫁入りがあったのか。これは縁起の良い。またお目にかかりたいものだ。
見上げた空には嫁入りを祝うように綺麗な虹が架かっていた。

9/20/2024, 8:56:27 AM

『時間よ止まれ』

友人が机に突っ伏していた。しばらくすると時折漏れ出ていた声が止み、涙目になった顔がこちらを向いた。
「俺明日のテストなんも勉強できてねぇんだよ〜…お前勉強した?」
「一応は」「やっぱりな!」
友人は再び机に突っ伏した。小さく お前はそういうやつだって知ってたけど〜 との声が聞こえた。
「そうやってても時間は待ってくれないぞ」
チラと視線がこちらを向き、何やら考える様子を見せた。
「そうだよな〜…でも時計ぶっ壊せば時間止まりそうじゃね⁉︎」「お前やべぇヤツじゃん」
友人は笑いながら 冗談だって と言った。
「やるなら明日だろ」「お前こそヤベェやつじゃん」

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